「ネコザイル」も激写! おどってうたうネコたちの一瞬を捉えた写真集
公開日:2021/10/17
猫同士でじゃれあっている動きがまるで踊っているように見えたり、大きなあくびは絶唱しているように見えたり。写真集『おどるネコうたうネコ』(沖昌之/KADOKAWA)は、ページをめくるたびに読み手の想像力がかきたてられる。
飼い主がいない地域猫の「かわいい」を撮る
著者の沖さんは7~8年前から東京の下町や河川敷で暮らす地域猫を撮り始め、今では全国に足をのばし、猫の写真集を何冊も出す人気の猫写真家だ。家族の一員として大切にされている家猫ではなく、一貫して地域猫をメインに撮り続けてきた。
地域猫とは、特定の飼い主はいないが不妊・去勢手術をされ、地域の方によってお世話されている猫のこと。
家猫の場合、一番かわいい姿を知っているのは飼い主だが、地域猫には飼い主がいない。毎日お世話してくれている人は見ているかもしれないけれど、たくさんの猫の面倒を見ているから、見逃している「かわいい」もあるかもしれない。沖さんはそこを自分の写真がすくい上げられたらいいなと思っている。
地域猫の活動フィールドは家猫よりずっと広いから、猫の興味も日や時間によって変わる。だから毎日通っていると、誰も見たことがない瞬間に出会えることがある。その積み重ねが、この写真集という形になった。どのページを開いても猫が生き生きとしていて、日々の暮らしを謳歌しているのが伝わってくる。
EXILEならぬ「ネコザイル」、斬新すぎるダンス、情緒たっぷりに歌い上げる様子。写真に添えられた猫のセリフにも、くすりとさせられる。
猫の社会性にも感服!?
沖さんは今も時間があればできる限り、下町や河川敷に足を運んでいる。夏は1日に2度、訪れることもある。
地域猫のお世話をしている人によると、沖さんがやってくると、不思議なことに一度は茂みに立ち去ろうとしていた猫が戻ってきたり、足元でころんころんとして「さあ撮れ」と言わんばかりになるという。猫の自然な姿を撮りたい沖さんにとってはなんともありがたいことで、「猫はぼくよりはるかに社会性がある」と感じているとか。
どの写真からも共通して感じられるのは、猫を見つめる沖さんのあたたかな視線と深い愛情だ。家の中でも外でも、人と猫がなかよく共存できる世界であってほしいという願いも込められた1冊になっている。
文=渡邉陽子
【著者プロフィール】
沖昌之
1978年神戸生まれ。家電の営業マンからアパレルのカメラマン兼販売員に転身し、2015年に「猫写真家」として独立。個性的な視点で猫写真を発表。全国各地で個展を開いているほか、デパートの展示場や博物館などで猫関連の展覧会に携わっている。著書に『ぶさにゃん』『明日はきっとうまくいく』『必死すぎるネコ』など多数。