同じ「親」なのになんで私だけがしんどいの? 子育てママが辿り着く夫婦の在り方とは『親になったの私だけ!?』
更新日:2021/10/18
我が子が生まれた瞬間から、夫婦は互いに親となる。だが、育児をしていく中で一方だけに負担がかかりすぎると、不平等感が芽生え「まるで私だけが親になったみたい……」と複雑な気持ちになってしまうことも……。
『親になったの私だけ!?』(KADOKAWA)は、まさにそんな心境をリアルに描いたコミックエッセイだ。著者はTwitterで話題を呼び、書籍化となった『夫の扶養からぬけだしたい』(KADOKAWA)を描いたゆむい氏だ。
夫婦が本当の意味で家族に、そして親になるには一体どうすればいいのか――。そんな難しい問いを解決するヒントが、ここには秘められている。
■どこかズレた気遣いをする夫と母親の呪縛に囚われた妻が「親」になるまで
ソーシャルワーカーとして日々、奮闘する主人公の田守美海は就職3年目の冬に妊娠。夫・晴彦は父親になることを喜び、美海の体調を気遣う言動も見せてくれるが、どこかズレており、美海はモヤモヤ。
お腹はどんどん大きくなっていき、やがて美海はつわりで吐く時に尿漏れしてしまう状態に。しかし、そんな姿を見ても夫はいつも通り出勤し、飲み会にも行き続ける。
妊娠後期には育休の取得や産後ヘルパーの利用に対する意見がすれ違うこともあった。
そんな中、美海は無事に我が子を出産。これから頑張ろうと意気込んだものの、初めての育児は想像を超えるほど過酷。夫は気遣ってくれるが、「怖いから」という理由でオムツ替えを拒否。沐浴のお願いも断られ、我が子の体調について相談しても、親身になってくれなかった。
夫は頼れない……。そう感じ、美海の心は限界寸前に。母親になった瞬間から個人としての人生を諦め、子どもを最優先にしなければならなくなったと思う自分と、子どもが生まれる前と変わらず自由に遊びに行き、着々とキャリアを積む夫は同じ親なのに、なんでこんなにも違うのかとイライラ。
ついには、生活を変えようとせずに「お手伝い感覚」で育児に取り組む夫と一緒にいる意味はあるのかと考えるようになってしまった。
母親という生き物になった途端、夫が「協力し合える同志」ではなく、「頼れない敵」に見えるようになってしまった美海。果たして、彼女は迷い、悩んだ挙句、どんな夫婦の在り方に辿りつくのだろうか。
■単なる「夫サゲ」な展開ではないからこそ響く夫婦関係改善マンガ
本作は単なる夫サゲな物語ではなく、美海の夫が全く育児や家事に無関心なわけでもないからこそ、考えさせられることが多い。
出産し、母親となると「自分らしい人生を諦める」という選択を迫られることが女性には多くある。すると、怒りの矛先はどうしても身近にいるパートナーに向いてしまいやすいが、社会に目を向け、子育てママを取り巻く現状の仕組みに問題があることを知ると、これまでに気づかなかった改善法が見えてくるかもしれない。
また、生まれ持った性別によって得ているものや奪われているもの、気づかぬうちに自分を縛っているものがあることを理解し、パートナーの立場で現状を見てみると、歩み寄ることができる可能性もある。
「世間の目」や「一般的には」に振り回されず、夫婦が家族として支え合い、親となってくためのヒントが本作にはたくさん描かれている。ぜひ産前、産後の大事な時期に夫婦で一緒に読みこみ、相手のことを改めて人生の伴侶だと思える夫婦の在り方を模索してみてほしい。
文=古川諭香