RPG好きは必読! 勇者たちが都合よくアイテムをゲットできる、その秘密が明かされる!?
公開日:2021/10/24
RPGをプレイしていると、気になる独特のシステムが多々存在する。人を助けるはずの勇者(プレイヤー)が人の家を漁ってアイテムやお金を手に入れたり、倒したモンスターがなぜか役立つアイテムを落としてくれたり……いったいこの世界はどうなっているのかと考えずにはいられない。最初の村近辺には弱いモンスターしかいないというのも都合がよすぎる。
先日、そんな勇者たちの活躍の裏側、そして魔族やモンスターたちの世界の秘密に迫っていくマンガ『勇者サポートセンター魔王城支部』(じゃこ/KADOKAWA)が発売された。この作品は、とある王国を脅かす魔王軍が秘密裏に行っている“ある行動”、そして魔王と新人勇者のちょっとおかしな関係を描いた物語。
本作品の主人公は、とある王国を脅かす魔族の頂点に君臨している魔王・ミレス。ミレスが長を務める魔王軍には、ごく一部の限られた者しか知らない極秘任務があった。その任務とは、魔族と人間の間で内密に結ばれた「ドロップアイテム協定」に則り、ドロップアイテムという形で勇者側に有益なアイテムを提供するというもの。魔王軍たちはダンジョンを監視し、必要に応じて宝箱や薬草などを配置して、秘密裏に勇者をサポートしていたのだ。
過去、多くの勇者が魔王城へ向かう途中で力尽き、魔族の過剰な支配によって人間の経済活動が停止。結果、人間から搾取できなくなった魔族も自滅するという事態が起き、そうした状況を避けるために「アイテム」という形で還元することにしたらしい。倒しにかかってくる人間を捕えて働かせるのではなく自然な形で生き残ってもらおうという計らいに、魔族側の余裕を感じる。たしかに、ゲームによってはラスボス級のキャラクターが中盤で登場し、死んだわけでも瀕死でもないのに負けて去っていくパターンもある。これは、もしかしたら魔族側の「加減」によるものなのかもしれない。やさしい!!
こうした「ドロップアイテム」の秘密のほか、駆け出し冒険者でも倒せる弱いモンスターの秘密、町やダンジョンのあちこちに設置されている壺が無限に復活する秘密なども面白おかしく書かれている。が、この作品の魅力はこれだけではない。
ある時、勇者のサポート活動を行うなか、ミレスがモニター越しにダンジョンを監視していると、そこにある新人勇者が映り込む。まだ幼い新人女勇者・ツムギは、大きな不安を抱えながらも魔王軍に立ち向かおうとしていたのだが、転んで怪我をしたりコウモリに怯えたりとまだまだ半人前。それでも必死でダンジョンに挑むツムギの姿を見たミレスは――あろうことか、彼女に一目惚れしてしまうのだ。
ここからはもう、ダンジョンの決まりや公平性などないも同然。魔王自ら指揮を執り、ツムギが安心安全にダンジョンを踏破できるよう全力でサポートしていく。そしてそんな自分のサポートによりどうにか歩みを進めていくツムギを見て、キュンキュンしたり恍惚とした表情を浮かべたり……。もはや何をしているのか分からない。が、そんな2人の関係がたまらなく愛らしい。だが、このミレスとツムギの関係には、実はミレスすら知らなかった秘密があって――。
ひたすら可愛い平和なサポート生活が続くのかと思った矢先に明かされたこの“ある秘密”に、筆者はすっかり心を撃ち抜かれてしまった。2巻以降、ミレスのツムギ愛は、そして2人の関係はどうなっていくのか。魔王と勇者として、戦う日が来るのだろうか? まだまだ始まったばかりの『勇者サポートセンター魔王城支部』。早くも2巻の発売が待ち遠しい。
文=月乃雫