「なぜ若者は理由もなく会社を辞められるのか?」就職してもすぐに辞めがちな今の若者への話し方
公開日:2021/10/21
「今のワカモノは何を考えているかわからん」というのは、昔からの中高年の口ぐせ。そうはいっても、人材が貴重な中で、若者の心を理解できなければ、新入社員は入ってこず、せっかく入社してもすぐに辞めてしまう恐れがある。
『なぜ若者は理由もなく会社を辞められるのか?(扶桑社新書)』(中野雅至/扶桑社)では、教育業界は少子化への対応に必死に取り組んできたにもかかわらず、企業が時代に追いついていない、と述べられている。
本書によると、少子化によって貴重な今の子どもや学生たちは、良くも悪くもサービスの要素が持ち込まれた教育の世界で過保護に育てられており、当の子どもや学生たちには顧客気分がどこかにある。
かたや、企業側は昔ながらの「人材は掃いて捨てるほどいる」という感覚が抜け切っていない。ここに、教育業界と企業のギャップがあり、今の若者はせっかく就職しても「すぐに会社を辞めてしまう」傾向が目立つのだという。
今の若者が辞めやすい傾向にある背景に、「転職市場の整備」や「絶対に達成しなければいけない目標があるという環境で生きてこなかったこと」の影響を著者は挙げる。後者は、相対的な大学数の増加や、入試の種類の多様性・受験機会の増加などを例として示している。
著者いわく、今の若者は「無駄なことはやらない」意識が強い。いわゆる「コスパ」を重視する。加えて、「非合理な物事」を拒否する傾向が強い。キャンパスでも会社でも、成果と直結しなそうな作業、遠回りのような労力を嫌う。
逆にいえば、自分にとって効率的だったり、意味があると感じたりした物事には興味や積極性を示す。大講義室で講義をしているときの私語を黙らせる方法のひとつとして、「授業の中身をなるべく学生の実生活と絡めて解説する」があるという。学生は「自分と無関係ではない」とわかった瞬間に、聞き耳を立てようとするそうだ。また、その話の中で「武器」「護る」「盾」といった防衛本能をくすぐるような言葉を使うと、さらに効果的らしい。
例えば、英語の重要性を説くときに「これからはインバウンドやグローバル化で、英語ができれば自分を護る大きな武器になるよ」という言い方だ。将来に不安を抱えている学生たちにとって意義を感じる説明の仕方をすれば、素直に耳を傾けやすい。
これは、会社でも通じる方法といえそうだ。若い社員は、将来に不安をもっている。専門能力を身につけるという「成長」は、会社からクビを切られても、転職をしても、自分を護る力になる。あなたが若い部下に、その仕事が「自分の将来に役立つ」もので「コスパも良い方法だ」と感じられる話し方をするように腐心すれば、会社の未来は明るくなるかもしれない。
文=ルートつつみ
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