一緒にいるほど自分が嫌いになる…嫌味や暴言が日常茶飯事な「モラハラ彼氏」と別れるまで『モラハラ彼氏と別れたい 悪いのは私なの?』
更新日:2021/10/22
一緒にいる時間が長くなるにつれ、どんどん自分が削られていくような気がする……。そんな苦しい恋愛を、誰しも一度は経験したことがあるはずだ。
一番近くにいるのに、相手にとって自分は一体どんな存在なのかと考えなければならない恋愛ほど苦しいものはない。現に筆者も、口を開くたびに蔑まれ、1ミリも愛を感じない「愛してるよ」で体を繋ぎとめようとするモラハラ彼氏との恋に溺れたことがある。
だから、『モラハラ彼氏と別れたい 悪いのは私なの?』(チリツモル/KADOKAWA)に出会った時、他人事だとは思えなかった。本作は、自分を全く大事にしてくれないモラハラ彼氏との恋愛を見直すきっかけを与えてくれるコミックエッセイ。
涙ばかりの思い出を築いてきた人が「別れ」という選択に踏み切れるよう、背中を押してくれる作品だ。
■優しかった恋人の正体は「モラハラ彼氏」
主人公のチリには、友人の紹介で出会い、長く付き合っている彼氏がいる。彼の名前は、マサキ。出会った当初、マサキはマメに連絡をくれ、優しく接してくれた。
自分を気づかい、惜しみなく尽くしてくれる彼の人柄に惹かれ、チリはマサキと付き合うことに。ところが、その後、彼の態度は一変。連絡は減り、会ってもそっけない態度をとられるようになった。
実はマサキ、典型的なモラハラ彼氏。他の女性に興味がある素振りを見せたり、前日と同じ食材が使ってあるという理由で料理を捨てたりし、チリの自尊心をへし折ってきた。
マサキはチリの誕生日すら覚えておらず、嬉しかったことを報告されると鼻で笑い、嫌味攻撃。
しかし、そうかと思えば、都合がいい時には優しい口調に。
気持ちを伝えると必ず反論され、一方的に会話を終わらせるマサキの態度にチリはモヤモヤしていたが、いつか優しかった頃の彼が戻ってきてくれるのでは……と心のどこかで期待し、現実逃避。
自己肯定感の低さから、彼を失ったらひとりになってしまうかもしれないと思い、別れる勇気が持てずにいた。
ところが、そんな時チリはひょんなことから同僚・星くんの優しさに触れ、自分たちの関係をちゃんと見つめ直し、変わりたいと思うように。
常に威圧的で自信を奪っていくモラハラ彼氏と別れるべく、奮闘する――。
本作は別れまでの過程が描かれているだけでなく、「ありのままの自分」を取り戻していくチリの姿にも触れられるので、似たような境遇に置かれている人は勇気を貰える。
どんなに最低な人であっても、一度愛すと決めた恋人は自分にとってかけがえのない存在。だから、すがってしまうし、別れという決断を下すのが怖くなる。
けれど、恋愛は本来、お互いがより笑顔で楽しく生きていくためにするもの。たったひとりのパートナーすら大切にできず、涙まみれの思い出を押しつけてくる人にあなたの人生を捧げるのはもったいない。
人はみな、未熟で不完全だ。器用に生きることができない自分に嫌気がさすことだってある。だが、欠点を鼻で笑ったり罵倒したりする相手から離れ、一緒に成長し合っていける人と生きていく道を選ぶことができたら、完璧になれない自分や上手くいかない人生も愛しく思えるかもしれない。
文=古川諭香