自分の得意なところをブラッシュアップ! 苦手なことは、きっぱり断ることが重要/世界の「頭のいい人」がやっていること

ビジネス

公開日:2021/10/27

あえて勝ちを譲る。
──相手に花を持たせることで、能力の高さを見せつける

わざと普通の人のふりをする

 MENSA(メンサ)という会があることをご存じの方は、もしかしたらあまりいないかもしれません。MENSAは、1946年にイギリスで創設された国際的なグループ。テストを受けて全人口の上位2%のIQの持ち主という基準に達すれば、誰でも入ることができます。現在、世界100ヶ国以上に会員を擁し、その数は合計で10万人ほどだそうです。

 グループの名称である「MENSA」は、ラテン語で「テーブル」という意味。丸いテーブルを囲んで、メンバーが皆、平等に集まる様子を表しています。「人種、皮膚の色、宗教的信条、国籍、年齢、政治、学歴や社会的なバックグラウンドとはまったく関係なく、すべての会員は平等な権利と義務を持っている」という意味が込められています。

 私は数年前にこの存在を知り、「どんな人が集まっているのだろう?」と興味本位で試験を受けに行きました。このとき、試験監督をしていたNさんが、日本のMENSAの中心的な人物でした。

 Nさんは一見すると、ごく普通の男性です。背が高くほっそりとして人当たりの良さそうな紳士。試験のときにはNさんとあまりお話しする機会もないまま(当たり前ですが)、会場を後にしました。

「試験をパスしました」という通知の後、何度か定例会などで顔を合わせる中で、「この人は、『普通の人』のふりをしているんだ」ということにようやく気づきました。

本当の「能ある鷹」は必要なときは爪を見せる!?

 MENSAの人は「やらなくても異常にできてしまう」人なので、小さい頃から周囲の人に奇異な目で見られたり、同年代の友だちと話が通じなかったりと、けっこう悲しい思いをしてきている人が多いのです。MENSAの中でも能力の高い部類に属するNさんは、そういう現実があることを知って、自分を「普通」に見せるすべを身につけてきたのです。

「能ある鷹は爪を隠す」ではありませんが、Nさんは、「爪をどう隠すか、いつ爪を見せるのが効果的か」ということをいつも考えているのです。

 いつまで経っても忘れられないエピソードが、MENSAの数人で集まった食事会のときのこと。これは、あるテレビ番組への出演のお疲れ様会として開かれたものでした。

 そこでNさんはなんと、「じゃんけんで負けた人がその日の食事代をおごる」というルールを提案。皆は驚きつつも、エキサイトし始めました。その場でじゃんけんに勝つためのセオリーを披露し合ったりと、ちょっとしたアトラクションの様相も呈していました。

負けることで能力をアピールできることも

 白熱したじゃんけん大会になりました。結果はというと、Nさんは見事(⁉)、最後まで全敗。当初の約束通り、その日の支払いは、Nさんが受け取った出演料で賄うことになりました。

 わざとじゃんけんに負けるというのはかなり高度な技ですが、MENSAの皆の反応を知り尽くしているNさんですから、不可能なことではありません。

 じゃんけんの話は一例にすぎませんが、Nさんはいつもこんな風に皆を盛り上げます。そしてNさんは、いかにもNさんらしく、スマートに能力をアピールするのです。自慢話やヒネリのない(時には、うざい)自己アピールに終始する人も多い中で、負けることで能力をアピールできるというのはすごく格好いいことだなと私は思っています。

 あえてリスクを負うことで高い能力を証明するというのは、進化生物学などでよくいわれていること。鮮やかな外見である孔雀の羽や、フラミンゴの体色の話と通じるものがあるのかもしれません。

 Nさんのやり方は、そこに繊細な知性を感じさせるものでした。

<第3回に続く>