中学受験、成功の秘訣は「子どもを自走モードにすること」! 親としての“正しい”関わり方
公開日:2021/11/8
いま中学受験が過熱している。コロナ禍により露呈したICT(情報通信技術)教育などの教育格差への不安も影響し、2021年の東京都の受験率は10年ぶりに30%を突破、今年もその傾向は続くと予想されている。この記事をお読みの方の中にも、そんな傾向に危機感を募らせ、「あまり考えてなかったけど、やはり中学受験させたほうがいいのかも」と思い始めた親御さんがいるかもしれない。中学受験は「親が9割」「親も共に戦え!」といわれたりする別名「親の受験」。もし受験を考えるのなら、まずは親としての関わり方をあらためて意識しておいたほうがいいだろう。
親子の「共闘感」は大事でも、親子が「一心同体」になる必要はまったくない。試験を受けるのはあくまで子どもであり、子は「戦士」、親は「軍師」であれ――そう中学受験における親子関係を説くのは、「予約殺到の東大卒スーパー家庭教師」こと長谷川智也さん。塾講師や家庭教師として20年におよび中学受験指導をしてきた経験をまとめた著書『中学受験 自走モードにするために親ができること』(講談社)によれば、中学受験は「戦略」がもっとも大事だという。そのためにも親は、軍師として少し離れたところから全体と戦士たる子のコンディションを冷静にみつめ、これからどう戦うかを考え、戦士に伝える役割に徹するべきだという。
ちなみに中学受験に「塾」や「家庭教師」は大きな役割を果たすが、そうした存在は勝つための充実したノウハウや指導力を持つという点で「サッカーや野球チームにおける外国人コーチ」くらいのイメージで捉えておくといいとか。あくまで我が子の感受性をよくわかっているのは親であり、そうした外国人コーチをどの場面でどのように使うかも戦略のうちなのだ。
その上で著者が伝えるのは、子どもに受験や勉強に対する主体性をつけることの重要性だ。著者のこれまでの経験の中で、主体性のありなしが中学受験の合否を分けるのを何度も見てきたという。この主体性をスイスイと自転車を漕ぐイメージになぞらえ「自走モード」と呼ぶ本書は、性格も現時点の学力も成熟度も違う小さな戦士たちを、いかにこの「自走モード」に持っていくか、そのためのコツを伝授するというものだ。実はどんな子でも親がコツを持って導けば、必ず自走モードになるというのだから心強い。
まずは自走モードには以下の4つの条件があることを知っておこう。この4つが揃えば、子は自然に自走モードに入るという。
1.「計算力」
2.「国語力(読解力)」
3.「体」
4.「習慣」
項目だけ見るとシンプルだが、もちろん大事なのはその中身。本書ではそれぞれの項目について、具体的に何をすればいいのかを示すのはもちろん、「小4まで」と「小5から」の2つのパターンに分け、どう手をつけたらいいのか、おすすめの教材もあわせて紹介してくれている。あくまでも「目安」ではあるが、これを我が子の現在地点にあわせてどう考えるかは軍師たる親の腕のみせどころ。子どもの性格タイプ別アドバイスや、塾・家庭教師の使い方のヒント、志望校の選び方なども紹介されており、こうした情報も参考に、広い視野で戦略を練りたいところだ。
なお昨今は小学1年生から通塾する子もいるが、「小6になって急に中学受験を決めた家庭も年々増えているし、結果も悪くない」と著者。「もう間に合わないかも」という危機感で自走モードに覚醒している子が多いため、難関校受験は難しくても短期集中で走り続けられる子が多いというのだ。つまりやっぱり大事なのは「本人の主体性(自走モード)」。とかく親として熱くなりがちな中学受験だけに、本書でクールダウンしておきたいものだ。
文=荒井理恵