推しが私の家庭教師に!? …これ、数学の参考書の設定です! イケメン家庭教師とマンガで中学数学を総復習

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公開日:2021/11/5

マンガ 一晩でわかる中学数学 実社会で役立つ数学力を身につける
『マンガ 一晩でわかる中学数学 実社会で役立つ数学力を身につける』(端野洋子/講談社)

「因数分解は社会で役に立たない」とはよく言うが、文系社会人として働いていても案外計算力や数学的な考え方を求められる。たとえば、企画書をプレゼンするとき。上司や取引先にOKをもらうためには、熱意だけでは不十分だ。その企画を実現したときにどれほどの売上や効果が見込めるのか。自分の感覚だけでなく、想定数値を算出することでぐっと説得力が増す。

 こうした場面で使う数学は、なにも専門的な知識が必要なものではない。その多くは中学校で習う小数や分数の計算、割合などの考え方だ。受験で「数学を捨てた」タイプの人は、仕事で苦労することもあるのではないか。数字に強くなりたい。でも今からひとりで学び直すのは不安だ――。そう感じているのなら、本書『マンガ 一晩でわかる中学数学 実社会で役立つ数学力を身につける』(端野洋子/講談社)をすすめたい。

 内容はタイトル通り「中学数学」を学べるマンガなのだが、ただわかりやすく解説しているだけではない。著者の端野洋子さんは、塾講師や家庭教師として長年数学を教えてきた先生であると同時に、雑誌『アフタヌーン』で作品を発表してきたマンガ家だ。そのふたつのキャリアが見事に融合し、本書はマンガとして楽しく読める作品にもなっている。誰もが学生のころに疑問を持つ「何のために勉強するか」といったテーマにも向き合い、そのクオリティは完全に教育マンガの域を超えている。

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マンガ 一晩でわかる中学数学 実社会で役立つ数学力を身につける p.11

マンガ 一晩でわかる中学数学 実社会で役立つ数学力を身につける p.12

 主人公の山田まおは、「数学が大嫌い」な女子中学生。趣味は地下アイドル・ツバサを推すことだ。ダンスの振り付けを完コピするほどの熱中ぶり。そんな彼女の元にイケメン家庭教師がやってくるのだが、なんとその彼が「ツバサ」こと佐藤司だった……という少女マンガ的な設定。司は、アイドルだけでは収入が安定しないため、正体を隠して家庭教師をしているという。「数学が大嫌い」だと打ち明けたまおに、司は数学を学ぶ意味から教えていく。

 たとえば、第8章「割合・歩合・百分率」では、“実社会で一番使う数学”として同単元が解説されている。将来の仕事についてイメージを持てずにいたまおは、司と交流する中でアイドルを支えるマネージャーの仕事に興味を持つ。そんな彼女に司は、自分たちのCDを例にとって「消費税」の問題を出す。

俺たちのCDが1枚税込み1000円です。
消費税が10%です。
本体価格と税額を求めてください。

マンガ 一晩でわかる中学数学 実社会で役立つ数学力を身につける p.180

 本体価格から税込み価格を求めるのは簡単だが、逆は少々ややこしい。本体価格と税額、一見ふたつのわからない数値があるため、まずはなるべく使う文字の種類を減らせないか検討すると良いという。今回であれば、本体価格をXとすれば、消費税もXを使って表すことができる。

本体価格+消費税額=税込み価格
X(円)+10/100×X(円)=1000(円)

マンガ 一晩でわかる中学数学 実社会で役立つ数学力を身につける p.181

 計算を進めていくとXは仮分数になるが、価格を求める問題なので割り算が必要だ。X=909.09……となるが、消費税の計算は小数点以下を切り捨てても切り上げてもよい。本書では切り捨てで本体価格は909(円)。最後にそれを税込み価格から引き、消費税額は91円となる。こうした内容をマンガならではのコマ割りを活用し、つまずきやすい箇所をフォローしながら解説してくれるからわかりやすい。

 本書で扱う内容は「中学数学」なので、他にも1次方程式、連立方程式、因数分解、2次関数などが対象だ。この1冊で、中学生や高校生が数学の基礎を学ぶにはもちろん、大人が実社会で数字を扱うための基礎体力もつく。しかもマンガとしてもおもしろいのだから……非の打ちどころがない。これほど没頭できる教育マンガは他にないだろう。

文=中川凌
@ryo_nakagawa_7