プロの料理人による人気YouTubeチャンネルから「だれでもおいしくつくれるレシピ本」が誕生! 『プロのコツでいつものごはんが100倍おいしくなるレシピ』

食・料理

公開日:2021/11/9

プロのコツでいつものごはんが100倍おいしくなるレシピ
『プロのコツでいつものごはんが100倍おいしくなるレシピ』(こうせい校長/KADOKAWA)

 数ある料理系YouTubeチャンネルの中でも、ビフォー・アフターがわかりやすいと独自の内容で人気を誇る、こうせい校長。再生回数2500万回を超える人気動画のエッセンスをさらにパワーアップさせた初の著書『プロのコツでいつものごはんが100倍おいしくなるレシピ』は発売1カ月にして早くも話題。プロの料理人ならではの技や科学的な根拠に基づいた解説、約80ものレシピ……、内容満載にしてかゆいところに手が届く、ありそうでなかったレシピ本はどうやって生まれたのか。制作のヒミツやおすすめの使い方まで、著者本人に語っていただきました。

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YouTubeチャンネル人気のきっかけは、プロ料理人が解説する “ビフォー・アフター”

――YouTubeチャンネル「飲食店独立学校/こうせい校長」はチャンネル登録者36.7万人(2021年10月現在)、今回、初のレシピ本への反響も大きかったと聞いています。人気の理由について、自己分析すると?

こうせい校長:おかげさまで今はたくさんの方に見ていただいているのですが、実は長い道のりでした。YouTubeチャンネル開設は3年以上前で、2年以上ずっと伸び悩んでいたんです。その間かなり試行錯誤しながら、料理初心者の方でもわかりやすい内容、料理に興味がない人でも楽しく見てもらえる企画になるように、料理も映像も何度もつくり直しながらここまで来ました。

 再生回数が少なかった初期のころでも、コメントをくださる方がいて「おもしろかった」「ためになった」という感想が励みになりました。やっぱりレスポンスがあるのってすごくうれしいです。それに自分が「人の役に立てた!」と思うと頑張れましたね。あと僕は目立つのがけっこう好きっていうのもあって(笑)、苦労はありますが楽しく続けています。

 中でも特に反応が良かったのが、ビフォー・アフター(失敗・成功)を比べた企画です。今回のレシピ本でも紹介していますが、「スーパーのマグロをお店で出せるレベルに変身させます」「知ってるようで意外と知らないブロッコリーの洗い方/茹で方」という動画で一気に再生回数が上がりました。

知ってるようで意外と知らないブロッコリーの洗い方/茹で方

 僕は板前の修業もしましたし、料理人にとっては当たり前の知識だったりするのですが、みなさん比較映像を見て驚いたみたいで、実際にやってみた感想もたくさんいただきました。

 やっぱり、違いを示すってわかりやすく伝わるんだな、と実感しました。ですので、今回のレシピ本にもコツを取り入れて調理した成功例、そうでない写真を入れて比較できるようにしています。

コツも科学も惜しまず見せる。ありそうでなかったレシピ本ができるまで

――YouTubeのほか、経営する飲食店でスタッフに指導などもされているこうせい校長さんですが、書籍づくりは初めてだったとのこと。レシピ本ならではの、工夫した点、苦労したところなどをお聞かせください。

こうせい校長:僕ならではの、ありそうでなかった本をつくりたいと思いました。既に、プロの料理人のための本、料理のコツが書かれた本、おいしくつくれるレシピも、いい本がたくさんあります。でも意外と、一般家庭料理をプロの技でブラッシュアップできるレシピ本、ちょっとした科学の知識でいろんな料理に応用がきくことを紹介した本はあまりないように思い、挑戦しました。

 意識したことは動画と同じです。見てくれた人がだれでも、確実にちゃんとおいしくできることを大切にしています。表紙写真に採用された一皿「箸が止まらない! ジューシー照り焼きチキン」は、左半分は一般的によくある手順で調理したものを、右側にはプロのコツを使った“100倍おいしい”完成品の写真を半分ずつ見せています。本の中のレシピも、下ごしらえや調理中の失敗例・成功例、コツを取り入れる前・後、という風に違いが分かるようになっています。

意識したことは動画と同じ

 また、使用する材料・調味料・道具については、どこのご家庭にもあるもの、近所のスーパーで簡単に手に入るものに徹底してこだわりました。僕たちプロの厨房には、特別な食材・調味料や道具がたくさんあります。でも、今回のレシピでは「だれでも同じようにおいしくつくれる」ことを目指しました。

 例えば、ホットケーキでは、プロがつかう道具(セルクル)がなくても成功する方法を編み出すために、何度も試作しては練り直して完成したレシピです(「家でもこの厚さ! ふわっふわホットケーキ」p.148)。毎日毎晩の試作は大変でしたが楽しかったですね。

家でもこの厚さ! ふわっふわホットケーキ

――比較写真や丁寧な手順もさることながら、準備や下処理の解説や、「料理の科学」と題したコラムもわかりやすいと好評です。

こうせい校長:ありがとうございます。僕自身の修業時代を振り返って、また現場でスタッフに教えるときにも実感しているのが「根拠を知って納得をする」ことの大切さです。

 料理を完成させるためには、別に科学の知識がなくてもいいかもしれません。でも知識を得たり、理由を知ったりすれば、実はずっと楽にできることって沢山あると思います。例えば塩の量でいうと、鍋に対しての小さじ1杯では鍋の大きさによって迷うかもしれませんし、500mlに対してのグラム数も忘れてしまうかも。それを「人間の体液の塩分(ナトリウム)濃度が約0.9%だから、その前後がなじみやすいんだよ」と教えてもらったらずっと忘れないのではないかと。そういう知識を得ることで、キッチンに立つのが楽しく、そして楽になればいいなと思います。

 また、コロナ禍で衛生意識の高まりも感じていたので、衛生管理に関するプロの常識、例えばまな板の洗い方なども写真付きで説明しています。

 最近は、お手軽料理や時短レシピなどが人気ですよね。僕のレシピは一見、時間がかかりそうで、お手軽には見えないかもしれません。でも実はコツや知識を一度身に着けてしまえば、次からはおいしさへの近道が見えてくるので結局は時短にもなります。ちょっとした下ごしらえのコツなどから、ぜひ試してみてほしいですね。

料理の成功体験が味わえる「ぜったい成功するレシピ」を試すならこのメニュー!

――レシピ本の中身は、「差がつく準備・下処理」に始まり、人気定番料理、ごはんもの&麺、おかず&おつまみ、ごちそう料理、デザートまで実に盛りだくさんですが、おすすめの使い方を教えてください。

こうせい校長:つくってみて「やった! うまく出来た! おいしい!」という感動、成功体験を味わってほしいと思います。例えば家族のためにごはんをつくっている人は、食べた人に「おいしい」と言われたらうれしいと思います。でもその手前、自分自身で、完成した、うまく出来た、といううれしさ・楽しさも味わってほしいと思うんです。この本はそんな小さな成功がたくさん詰まっている本だと思います。

 まずはやっぱり、冒頭の「差がつく準備・下処理」を試してほしいです。さきほどのマグロの下処理やブロッコリーのゆで方など、目に見えて違いが出るので。

 あとは、数ある中でも、成功が実感しやすいレシピというのがありまして(笑)、僕のおすすめをいくつか挙げると、

・鶏のから揚げ(「肉汁10倍!天才的トリカラ」p.50)
これは、鶏肉をブライン液につけるのがコツなのですが、ほんとにジューシーに仕上がります。見た目からして違いがでるのに意外と簡単なんです。

肉汁10倍!天才的トリカラ

・麻婆豆腐(「違いがわかるとろふわ麻婆豆腐」p.36)
豆腐の形をキープして水分を逃がさないのがポイントです。家でつくってもこんなにおいしいんだ! と実感できると思います。ほかにもフライドポテトやホットケーキなど、まずは身近な料理から試していただいて、早く成功してほしいです!(笑)

 とはいえ、忙しい方も、すでに料理上手な方もいらっしゃると思います。ハードルを下げるなら、茹で方・切り方など一部分でも変えてみる、下処理だけ取り入れてみる、など自由にこの本を使ってほしいです。目に見えて色や形、量に違いが出たりするので、そんなところから料理の楽しみをどんどん広げていってもらえたらうれしいですね。