エネルギー密度が高い「超加工食品」について学ぼう/科学的に正しいダイエット 最高の教科書
公開日:2021/11/16
コロナ禍によるリモートワークが加速したこともあり、令和の新時代は“肥満”の原因があふれています。食べるのをやめられない、ガマンできない…。そんななか、ネットで見つけた「一瞬でやせる!」「~だけでやせる!」なんて記事や広告が目に留まりがちに…。
理学療法士にしてトレーナーである庵野拓将氏が執筆したこの『科学的に正しいダイエット 最高の教科書』には、科学的な知識を元にしたダイエット情報が満載です。スタンフォード大、ハーバード大、ケンブリッジ大、イェール大など、名だたる知の集積所にあるデータをまとめた、最新のダイエット知見を紹介しています。
「やせるおやつなら食べても大丈夫!」「テレビをつけたまま寝ると太る!」「ダイエットの成功の鍵は『筋肉』」などなど、無理なく健康的にやせたい人におすすめの1冊です。
※本作品は庵野拓将著の『科学的に正しいダイエット 最高の教科書』から一部抜粋・編集しました
超加工食品で太る科学的な根拠
太るメカニズムを理解すると、ダイエットの食事管理でまず行うべきことが明確になります。それは、習慣的な脂質や糖質の過剰摂取をやめて、嗜好性の食欲を抑えるとともに中毒性を弱めることです。そのために、あなたが最初にやるべきことは2つです。
「超加工食品を食べないこと」
「砂糖入り飲料を飲まないこと」
ダイエットには糖質制限や低炭水化物ダイエットなどさまざまな食事制限の方法や有酸素運動などの運動の方法がありますが、まずは、もっとも太る要因とされる超加工食品と砂糖入り飲料の摂取を減らすことからはじめましょう。
加工食品は4つに分類できる
ヴァーヘニンゲン大学が行った興味深い研究をご紹介します。
学生に生のニンジン(130g)を食べさせると、食べ終わるのに「10分」かかりました。つぎに、ニンジンを茹でてから食べさせたところ、「1分」に短縮しました。
生のリンゴ1個半(500g)を食べるのに「17分」かかりましたが、リンゴをジュース(液体)にすると「1分半」で飲み干しました。
食物に対して加熱や液体化といった「加工」をほどこすと、同じ量でも短時間で食べられてしまうということです。つまり、食品の加工技術が発展すると、エネルギー摂取量が高まるのです。栄養状態も改善され、ひいては寿命の延伸や人口の増加に貢献します。
ところが現代の加工食品はというと、美味しさや食べやすさを追求したあまり、健康を損なう可能性が指摘されています。その代表が「超加工食品」といわれる食品群です。心臓病や糖尿病といった病気の発症因子となるだけでなく、肥満の要因であることが示唆されています。
食品や飲料の加工の性質、範囲、目的にもとづく分類法である「NOVA分類」は、加工食品を4つの種類に分別します。
グループ①:未加工または最小限に加工された食品
グループ②:加工食材
グループ③:加工食品
グループ④:超加工食品
ニンジンやリンゴなどの野菜や果物、卵や魚などの未加工食品、または乾燥、煮沸、冷凍などの最小限に加工された冷凍野菜や冷凍の果物、乾燥肉はグループ①に分類されます。
植物油、蜂蜜、メープルシロップ、砂糖、バターなどの加工食材はグループ②になります。
グループ③の加工食品は、グループ①の未加工や最小限に加工された食品に、グループ②の加工食材を追加することによって加工された食品になります。たとえば、蒸したチキン、マグロの缶詰、野菜の缶詰、シロップ漬けの果物、ナッツ、塩漬け肉などがグループ③になります。
そして、台所には置いていない人工の調味料や甘味料、香料、着色料、乳化剤、安定剤、保存料などを用いて加工したものを「超加工食品」として、グループ④に分類します。
超加工食品には高果糖コーンシロップ(果糖ブドウ糖液糖)などの糖や塩、トランス脂肪または飽和脂肪が多く添加され、食物繊維やタンパク質、微量栄養素が少ないという特徴があります。グループ③の加工食品と比較して、エネルギー密度が高く、コストが低くなります。
では、トウモロコシと魚の加工を例に挙げてみましょう。
トウモロコシは未加工なのでグループ①になります。トウモロコシをコーンの缶詰に加工するとグループ③。コーン風味の人工調味料や添加物、保存料を使ってつくられたコーンスナックはグループ④です。
焼いた魚は、最小限に加工された食品なのでグループ①です。魚を缶詰にするとグループ③。白身魚を使って小麦粉やコーンスターチと混ぜ、パーム油で揚げたフィッシュナゲットになるとグループ④になります。
ちなみにNOVA分類には、多くの批判も見られます。小麦粉、水、塩、酵母でつくられたパンは一般的にはグループ③の加工食品ですが、NOVA分類では、添加物に砂糖や塩も含まれるためグループ④の超加工食品となります。
NOVA分類における「超加工食品」の定義は、糖分や塩分、脂肪を多く含み、硬化油、添加糖、香味料、乳化剤、保存料など添加物を加え、工業的な過程を経てつくられるもの。また、常温での保存が可能で、日持ちする食品。つまりジャンクフードを「超加工食品」とし、一般的な加工食品とは分けて捉えると理解しやすいでしょう。
具体的には、スナック菓子、カップラーメン、菓子パン、ピザ、ホットドッグ、ケーキ、ドーナツ、ハンバーガー、フライドチキン、チキンナゲット、砂糖入りの清涼飲料などです。
超加工食品は世界中の人々を太らせている
超加工食品の摂取量は、いまやアメリカ人のエネルギー摂取量の大半を占め、日本人においてもエネルギー摂取量の4割に迫る勢いで増加しています。
超加工食品は飽和脂肪やトランス脂肪、塩分、砂糖が多く含まれ、エネルギー密度が高くなります。加えて、食物繊維やタンパク質が少ないことから肥満の増加につながると推察されてきました。それを裏付けるため、世界各国でNOVA分類をもとに超加工食品と肥満との関連についての大規模調査が盛んに行われています。ブラジル、アメリカ、カナダ、ヨーロッパ19カ国での調査結果は、すべて「超加工食品の摂取量が多いほど肥満度が高くなる」というものでした。
そして2020年、テヘラン医科大学はこれらの研究結果からメタアナリシスを報告しています。
各国で行われた14の研究報告、約19万名の被験者(10〜64歳)を対象に、超加工食品の摂取と肥満の発症についての関連を解析しました。その結果、超加工食品の摂取量が多いと、肥満のリスクが「26%高くなる」ことが示されたのです。
この結果から、過剰な超加工食品の摂取が肥満の高いリスクと関連していることが示唆され、各国で生じている肥満の流行のひとつの要因であると推察されているのです。
しかしこのメタアナリシスは、大規模な観察研究をまとめて解析したものであり、関連を示すことはできますが因果関係を示すことはできません。
つぎに、ファストフードの摂取が体重に与える影響についてランダム化比較試験を行った、アメリカの国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所の報告内容を紹介します。