鈴木亮平×JUJUの紀行番組「せかほし」本、第3弾! "本当にほしい”モノへの向き合い方を、改めて考えさせてくれる1冊!

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公開日:2021/11/7

世界はもっと!ほしいモノにあふれてる3
『世界はもっと!ほしいモノにあふれてる3』(NHK「世界はほしいモノにあふれてる」制作班/KADOKAWA)

 多分、昨年の今頃は「1年後にはこれまでどおりの日常が戻っているはず」と思っていた人が多かったのではないだろうか? 予想以上に長引くコロナ禍と、すっかり変わってしまったアフターコロナの世界。このまま「ニューノーマル」の様式が生活にしみ付くのも、仕方ないとは言え少し悲しさを覚える……そんな思いを皆共有しているはずで。

 変わってしまった世界の中で、今一番四苦八苦しているのが「海外と仕事をしていた人々」なのではないかと思う。現地に思うように行くことができない、ビジネスの形が変わってしまった……はからずもその様子がドキュメント的に収録されてしまったと言えるのが、この『世界はもっと!ほしいモノにあふれてる3』だ。

 NHK総合で放送されている『世界はほしいモノにあふれてる』、通称“せかほし”は、世界各地のステキなモノを探し求めるトップバイヤーに密着した紀行ドキュメンタリー。この本は、本来はその放送で紹介されたバイヤーの旅を収録したものの第三弾となる……はずだったのだろう。

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 しかしこのコロナ禍で、日本を拠点に海外を飛び回るバイヤーたちに密着するという番組スタイルは困難に。そこで番組は「ステキなモノを探し求める」というコンセプトはそのままに、「海外在住、もしくは海外を拠点に活動する人」を紹介していくこととなった。しかし苦肉の策だったはずのこの方針転換が、また魅力的な「人」と「モノ」と出会わせてくれることになったののでは。この本を読んでいると、しみじみと思う。

 今作もまた、紹介されている「モノ」はステキなものばかり! ベトナムのソンベ焼き、色鮮やかなアフリカンプリント、フランスの極上チーズ、アメリカのヴィンテージ家具、レトロ可愛い台湾の雑貨……。KIMONO(着物)の魅力を海外発信しているシーラ・クリフさんのページでは、石畳が中心のロンドンの街にヴィンテージ着物が映える様子にハッとさせられる。ページを捲るたびに、思うように動けない日常のもやもやがフッと忘れられるような、そんな「モノ」が次々と現れる。バイヤーたちの発掘する「モノ」のチカラの、なんとすごいことよ! 

 このシリーズのもう1つの魅力は、バイヤーたちのパーソナルな部分をじっくり掘り下げたインタビューが読めることなのだけれど……登場する多くの人たちは、このパンデミックがビジネスに大きく影響してしまっている。それは、海外在住であっても避けられないことで。それでも、この仕事を続けていくというある意味「覚悟」のようなものが、インタビューからはにじみ出ているのが印象的。このパンデミックはいろいろなものを変えてしまったけれど、もしかしたらそれぞれにとって「大切なもの」を再度考えさせてくれる時間になったのかも……そんなことすら思ってしまう。

 それは送り出すバイヤーにとっても、受け手の私たちにとってもそう。使い捨て消費ではなく、「モノ」に込められた思いと物語を受け止めて、本当に「ほしい」ものを選びたい。これまでの猛スピードで通り過ぎていく日常の中では、つい忘れがちだったその視点。読み終わったあとには、それを改めて考える人がきっと多いのでは……そんなことを感じさせる、“今だからこそ”生まれた1冊だ。

文=川口有紀(フリート)