人事の裏話や複数の内定を前に悩む学生の悩み相談も! 今話題の就活・採用マンガ家 まうさんインタビュー
公開日:2021/11/7
就活生や転職希望者を中心に、今話題を呼んでいるinstagramアカウント「まう@就活・採用まんが」(@mau.essay)をご存じだろうか。フリーランス人事として活動するまうさんのマンガは、採用する側としての裏話が満載。就活・採用マンガ執筆のきっかけやそこに込めた想い、人事だからこそわかる採用選考通過のコツなどについてお話を伺った。
――まうさんが「就活」をテーマにマンガを描き始めたきっかけはどのようなものだったのでしょうか?
まうさん(以下、まう):私は新卒で入社した会社で10年採用担当を務めた後、フリーランスの人事として働き始めました。多くの悩める就活生と関わる中で気づいたのは、人事側にとっては当たり前でも、就活生にとっては「思いもよらなかった」という就活の知識がたくさんあるということです。「もしかしたら自分の経験が役に立てるかもしれない」。そんな思いで、就活のヒントとしてマンガを描き始めました。
――「就活ナメてました」では、ご自身の就活体験を赤裸々に紹介されています。自分が就活生の時のことを思い出して共感してしまうエピソードばかりでした。
まう:この作品では、現役就活生のみならず、社会人の方から「自分の時もこうだった!」というお声をいただいたのが印象的でした。「合説(合同説明会)に行って人の多さにビビった」とか「面接の時、自分も泣いたことがある」とか…。中には人事部の方からコメントをいただくこともあり、てっきり就活生しか読まないものと思っていたので驚かされました。
私は、現在はご縁があって人事の仕事をしていますが、学生時代は決して優秀な就活生ではありませんでした。私の学生時代のボロボロの就活体験をあえてオープンにすることで、「人事」という存在を少しでも身近に感じていただきたいですし、「こんなにうまくいかなかった人でも、今はそれなりに頑張れているよ」ということが伝わればいいなと思っています。
――まうさんの作品を読んでいると、「人事」という仕事を身近に感じられます。複数の内定が出て断り方に悩む男子学生や、自分の強みがわからない女子学生など、たくさんの悩める就活生をサポートしてきたまうさんですが、現代の就活生の特徴など、世代によって学生の違いを感じることはあるのでしょうか。
まう:各世代の就活生の特徴は、学生時代に起きた出来事によって変わってくるのかなと思います。たとえば、東日本大震災前は「自分は独立して社長になる!」というガッツのある学生さんが目立っていましたが、震災後は「誰かの役に立ちたい、サポートがしたい」という学生さんが増えました。
現代はやはりコロナ禍という時勢の影響が大きいですね。「本当は交通や観光業界に行きたかったのに行けない」という学生さんが、「今は無理でも、いつか業界が回復することを見越して、観光系に繋がる仕事に就きたい」と視野を広げて就活に取り組んでいたり、「今目の前の就職」ではなく、ずっと先を見据えて動く就活生が増えたように感じます。
あと、今の時代は情報過多で混乱している方も多いかなと。あまりに選択肢が多いと、逆に人は動けなくなります。そういう時は業界や企業に目を向けすぎず、自分自身の経験や想いなどの原点に目を向けて、そこに合う企業さんを探していただけたらなと思います。
――自分自身の経験や想いと向き合うことが大切である一方で、それをどう伝えればいいのかと悩む就活生も多いのではないかと思います。たとえば、就活の最初の難関・エントリーシート(ES)。「人事部裏話」シリーズでは、「採用側」の視点で、膨大な量のESを確認する大変さが描かれていましたが、「こんな風に不採用が決まるのか」と、思わずドキッとさせられました。「どのようなESならば選考を通りやすいのだろうか」と悩まれている就活生へ何かアドバイスはありますか。
まう:採用担当は、無意識的に「自分と似たようなことを経験している学生」の得点を高くしてしまう傾向にあるものです。勉学に励んできた人は学校の成績やゼミでの活動を重視しますし、部活にのめり込んだ人は、多少学校の成績が悪くても、部活動で努力・成長している人を高評価してしまいます。「どのような経験を書けば有利」というものはなく、人事の中でもESは複数の人がチェックした上で、評価が分かれた時にはすり合わせを行うこともあります。
どの企業も最後に確認するポイントは「この会社で活躍できる人かどうか」。会社の方針や求める人材、希望職種の働き方などをよく調べて、そこと合致するような自分の強みが書けているESは通りやすいかなと思います。
――そうなると、やはり大切になるのは、自己分析ですね。作品の中でも「テンション上げ下げ年表」などの自己分析法をご紹介されていますが、ダ・ヴィンチニュースの読者は、社会人の方も多いので、ぜひ、新卒・中途のそれぞれの自己分析のコツをお教えいただきたいです。
まう:新卒の場合も中途の場合も、基本的に自己分析は「自分の棚卸」をしていくという点で共通しているのですが、新卒採用はポテンシャル、中途採用は経験・実績を中心に分析していくという違いがあります。
新卒の学生さんはどうしてもお仕事の経験が少ないため、部活やアルバイト、ボランティアやサークルなど、これまでしてきたことの中から自分の強みややりたい方向性を見出す必要があります。「なぜその組織を選んだのか」「メンバーの中でどういう立ち位置だったか」「共通する取り組み方があるか」など、覚えている限りの自分の歴史を細かく振り返ることで、自己分析が進みやすくなるでしょう。
また、中途採用では「即戦力」を求められることが多いので、日頃から仕事の実績や、普段から意識して取り組んでいることを携帯のメモにでも残しておくと、職務経歴書が書きやすくなります。さらに、何度も転職されている方はそこに「一貫性」があるかどうかも重要です。現在に行きつくまでのストーリーをきちんと整理してみてください。
産休・育休などの仕事のブランク期間がある方もいらっしゃるかもしれませんが、その間に何を学んだかを整理できていれば、特に問題はありません。「育児に専念していたので、何もしていない」とおっしゃる方もいますが、育児は効率化の宝庫です。子どもが寝ている時間に家事をして、食材からメニューを組み立て、不足しているものを購入するなど、仕事に繋がるヒントがたくさんあります。「何もしていないブランク」ではなく、「意味のあるブランク」として整理しておくと、面接でも盛り上がる部分になるかと思います。
――コロナ禍の今、就職活動・転職活動に悩んでいる人はたくさんいると思います。最後に、就職活動・転職活動が思うようにいかないという人に向けて、メッセージをいただいてもよろしいでしょうか。
まう:就活や転職活動でうまくいかないと、まるで自分の価値がないかのように感じられる時があります。けれど、あなたには自分自身では気がついていない強みや経験が必ずあるはずです。まずは自分を肯定してあげてください。
その上で、自分が何らかの思い込みに囚われていないかを考えてみてください。この業界じゃないとやりたい仕事ができないのか、自分の状況で本当にこの働き方はできないのか。自分が絶対条件としているもの、まずはそこから見直してみると、意外なヒントが見つかるかもしれません。自分自身を労わりながら、ぜひ頑張ってください!
文=アサトーミナミ
プロフィール まう
フリーランス人事として、企業の採用サポートや就活生の相談を受ける。Instagramでは「人事部裏話」や「そのGD(グループディスカッション)見られてますよ!」、「就活生と面談しまして」など、人事としての体験をもとにしたマンガを投稿、好評を博している。
まう@就活・採用まんが https://www.instagram.com/mau.essay/