劇場版の制作も発表。『機動戦士ガンダムSEED』のコミカライズ&熱いファン心を描いたコミックが、あの頃の気持ちを再燃させる!
更新日:2022/5/24
2021年5月、「機動戦士ガンダムSEED(以下、SEED)」シリーズのファンに衝撃的なニュースが発表された。「福田己津央監督のもとで、テレビシリーズの続編となる劇場版を制作中」というものだ。
「いよいよか!」と待ちに待ったファンも多いはずだ。なぜなら劇場版は、「SEED」の続編である「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」(2004~2005年)のTV放送終了後、2006年にアナウンスがされたきりだったからだ。
「SEED」は「宇宙世紀」以外を描いたガンダムの中でも、屈指の人気を誇るタイトルである。作品に登場する人型機動兵器・モビルスーツのプラモデルは現在も続々と新作が発売され、その人気ぶりがうかがえるだろう。
本稿では、そんな劇場版を待つ間に読んでおきたい2作のコミックを紹介する。
『機動戦士ガンダムSEED Re:』
西暦年代末、各地で民族紛争や宗教紛争が激化したのち、C.E.(コズミック・イラ)と呼ばれる新たな年代の幕が上がる。
そんな時代に現れたのが遺伝子を調整された人間とその子孫である「コーディネイター」だ。彼らが人口の多数を占めるスペースコロニー連合「プラント」と、純粋な人間「ナチュラル」が多い「地球連合」が戦争となった。開戦から11カ月が過ぎたC.E.71年、「地球連合」は膠着する戦局を打開するため、中立国であるオーブ連合首長国と共同で新型機動兵器を開発する。それがオーブのコロニー・ヘリオポリスで完成間近となっていた「ガンダム」であった。
その情報を得たプラントの軍隊・ザフトがガンダム奪取作戦を敢行する。アニメはこの作戦からスタートするが、この『機動戦士ガンダムSEED Re:』では、アニメのシリーズ構成・脚本を担当した両澤千晶氏の協力のもとでアニメでは描かれていない内容が追加されている。
具体的には戦争を激化させる原因となった、プラントの農業用コロニー・ユニウスセブンへの核ミサイル攻撃という物語上の史実と、「ファーストコーディネイター」ジョージ・グレンのエピソードを再構成して描いている。さらにC.E.70年のムウ・ラ・フラガとラウ・ル・クルーゼの対決シーンにも頁数を割いている。本作はアニメ「SEED」の世界の背景がすっきりとし、わかりやすくなっていると感じた。
なお本作はアニメ版「PHASE-13宇宙に降る星」までのコミカライズだ。セリフや設定上でしかなかったエピソードを知ることができ、「SEED」の物語背景を復習できる作品としてうってつけだ。
『HGに恋するふたり』
ダ・ヴィンチニュースでも以前に紹介した本作は、会社員の女性と女子高校生の“ガンプラ”がある日常を描いたコメディ。ここで紹介した理由は、主人公の神崎さやかが「SEED」の大ファンだからだ。
14歳の時にTVをつけたさやかは、たまたま「SEED」を観て、その一場面である「ストライクガンダム」が炎と煙の中で立ち上がるシーンに目と心を奪われた。モビルスーツからガンダム好きになり「いつかガンプラを作りたい」と思っていた少女は、行動に移せぬまま気付けば社会人の30歳になり、いわゆる“隠れオタク”として日々を過ごしていた。
ある日さやかは「ストライクガンダム」のプラモデルを手にした模型店の娘、高宮宇宙(たかみやそら)と出会う。16歳の彼女にさやかは導かれてプラモデルを作ることになり、“自分の好き”を再確認していく――。
初めて「ストライクガンダム」のプラモデルを素組み(塗装などをせずにそのまま組み上げること)で完成させたとき、さやかはこれまでにない充足感を得る。武装もなく、しかも塗装もしていない状態ながら、あのときTVで観た場面に重ねていた……。
筆者はこの気持ちに「わかる!」と強く共感しテンションが爆上がりした(さやかよりも大分年のいったオッサンなのだが)。他にも「SEED」ネタや名ゼリフがインサートされてくるので、本編を知っていれば数倍楽しめるはずだ。
なお物語は、16歳のさやかが自己投影した存在『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』の主役キャラであるシン・アスカが搭乗する「インパルスガンダム」と「デスティニーガンダム」を“語ってそのガンプラを作る”エピソードに続いていく。繰り返すが、ぜひ本編を観てから読んでほしい作品だ。
劇場版SEEDを待ちながら
冒頭の劇場版のニュースは、2022年にTV放送開始20周年を迎える「機動戦士ガンダム SEED」シリーズ新プロジェクト「GUNDAM SEED PROJECT ignited」において発表され、劇場版がこのコアにあたると明言されている。
このニュースが、自分が「SEED」ファンであったことを思い出させてくれた。「今さら」なんて微塵も思わず、とにかくワクワクしたのである。きっと筆者と同じ気持ちの方も多いのではないだろうか。
ついに「SEED」が動き出した。コミックを読み、アニメを観かえし、ガンプラを作りながら、我々の目の前に現れる瞬間を待とうではないか。
文=古林恭
(C)創通・サンライズ