10代から寄せられたリアルな性の質問40に回答。産婦人科専門医が伝える「はじめての性教育」

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公開日:2021/12/6

産婦人科専門医が教える はじめての性教育
『産婦人科専門医が教える はじめての性教育』(仲栄美子/自由国民社)

※本記事にはセンシティブな内容が含まれます。

 我が子には、自分の体や好きになった人の体を大切にできる人であってほしい――。そう願うのは、親心だ。しかし、性に関する話題は家庭内で口にしづらく、学校で行われている性教育も十分とは言いがたいのが現状。

 そんな状況にモヤモヤしている方は『産婦人科専門医が教える はじめての性教育』(仲栄美子/自由国民社)を備えておくとよさそうだ。著者は産婦人科専門医で、女性のヘルスケアアドバイザー。診療の傍ら小中高校をまわり、10年間で約200校2万人へ性教育講演活動を行ってきた。

 本書では講演をする中で実際に生徒たちから寄せられた、性に関するリアルな40の質問に回答。月経や射精、セックスに関する知識を得られるだけでなく、性の多様性や自分らしい生き方について考えることもできる学べる一冊になっている。

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大人はどんなアドバイスを送ればいい?

 子どもから聞かれる性にまつわる疑問の中には、どう答えたらいいのか悩んでしまうものも少なくない。また、私たち親世代にとって性の話はどこか恥ずかしく、親子間で話しづらい話題。素朴でストレートな子どもの疑問に対し、「そんな言葉は言っちゃダメ」と叱ったり、曖昧な答えでその場を切り抜けようとしたりしてしまうこともあるように思う。

 だが、今の子どもたちは親の考えとは対照的で、性とは「大切なこと」「生き方につながること」と捉えているよう。著者は数多くの学校で講演し、性に関するアンケート調査を行う中で、そうした子どもの本音を知ったからこそ、親世代もある程度の知識を持ち、子どもから「なぜ」と問われた時には一緒に答え探しをしていけるようになってほしいと訴える。

 性教育はある日突然、話題にしようとすると話しづらいテーマになってしまうからこそ、子どもが小さなうちから自分の体を大切にする知識として親子間で話していくことが大切。

 本書には思春期の女子から寄せられることが多い質問も収録されているので、性の違う我が子の悩みを知るきっかけにもしてみてほしい。

性に関する我が子の価値観を尊重していくことも大切な性教育

 最近では、LGBTという言葉を耳にする機会が増えてきており、芸能人が性に関する悩みを公にすることも多くなってきた。だが、ジェンダーに関することはセンシティブなところがあるため、家庭内でどう話題にしていいのか悩んでしまうこともあるもの。

 例えば、もし我が子から「異性に興味がないのは変?」と尋ねられたら、あなたはどう返答するだろうか。きっと、「変じゃないよ」の一言だけでは子どもが感じているモヤモヤを晴らすことができないような気がして返答に困ってしまう方は多いはずだ。

 そんな難しい問いに対し、著者は人を好きになるという感情は本来自由なもので、恋愛に興味がないことももちろん悪いことではないという、心をしっかりと包み込めるアンサーを寄せている。

“男性が男性を好きになっても、女性が女性を好きになっても、男性も女性も関係なく恋愛の対象になってもそれは自由です。(中略)色々な人がいて色々な考えを持っているから、人間は面白いのです。”

 単に性にまつわる知識を授けるだけでなく、ひとりの人間が自分らしく歩んでいける道を見つけられるようなヒントもくれる著者の性教育は親の心にも染みる。

“性教育は今、「性共育(性と共に育ち生きていくこと)」を目指しています。”

 そう話す著者の言葉を噛みしめながら、子どもの人生をより豊かにする性共育を家庭で行ってみてほしい。

文=古川諭香