片寄涼太「20歳前後まではLDHにいても異物感があった」自分らしさの貫き方とこれからの“なりたい自分”

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更新日:2021/12/5

片寄涼太さん

 GENERATIONS from EXILE TRIBEのボーカル・片寄涼太さん。2014年にドラマ『GTO』に出演したのを皮切りに、大反響を呼んだドラマ『3年A組 今から皆さんは、人質です』や、先日放送された月9ドラマ『ラジエーションハウスII〜放射線科の診断レポート〜』の第6話に出演、映画『午前0時、キスしに来てよ』では主演、劇場アニメ『きみと、波にのれたら』では主演声優をつとめるなど、役者としての幅も広げ続けている。2021年10月には、10年来の付き合いのある作詞家・小竹正人さんとの往復書簡をまとめた書籍『ラウンドトリップ 往復書簡』(新潮社)を上梓。現在、27歳の片寄さんが思う“なりたい自分”とは?

(取材・文=立花もも 撮影=内海裕之)

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――インタビューやご著書を読んでいると、すごくアツいものを持っているわりに、人とは一定の距離感を保つなど、ドライな部分もある方なんだなと感じます。

片寄涼太さん(以下、片寄さん) 僕が所属するLDHというグループは、血が繋がっていなくても仲間を家族のように兄弟のように大切にする人たちの集まりなので、そこに所属している自分に対する異物感、みたいなものは10代のころから感じていました。もちろん、LDHの信念も美学も理解しているし、僕も同じように大事にしたい。だけどその形が他の人たちとちょっと違うというか……人との距離感を詰めることだけが“大事にする”ということではないような気がしているんですよ。10代のころからお世話になっている作詞家の小竹(正人)さんは、僕に対して「この子ちょっと冷めてるよな」って感じて、見守り続けてくれていた。大丈夫だよ、涼太はそのままで、って言ってくれる小竹さんみたいな人がいなかったら、もうちょっとクサっていたかもしれません。

――自分だけなんかちょっと違う、っていうのは、とくに10代のころはすごくつらいですよね。

片寄さん そうですね。でも自分の違うところを自覚したからといって、まわりにあわせて変えようとするんじゃなくて、違うままでどうしたら一緒にいられるだろうってことを考えたかったんですよ。どこか冷めているし、人との距離感も詰めるのは苦手。だからといって、アツく積極的に誰かと関わろうとする人たちを馬鹿にしているわけじゃないし、むしろそこにある核みたいなものは共有したい。本質的なところでわかりあうことができれば、表現の仕方が真逆であっても、仲間でいられるんじゃないかと思うんです。

片寄涼太さん

――違うまま、の自分を貫くのってすごくしんどいときも多いと思うんですが、どんなふうに乗り越えてきたんでしょう。

片寄さん いちばん悩んでいたのは20歳前後だったと思うんですけど、仕事の現場で僕の個性を引き出してもらえた経験が、少しずつ自信に変わっていったんですよね。それは、僕が想像していた自分らしさとは全然違っていたりもしたんだけど、知らない自分に出会えるのはすごく楽しかったし、どんな自分でもひとつずつ仕事を積み重ねることで、まわりからも認めてもらえるようになってきたという成功体験が、今も背中を押してくれているような気がします。

――転機となった作品はありますか?

片寄さん 『兄に愛されすぎて困ってます』というドラマに出させてもらったことですね。実をいうと起用のきっかけは「LDHらしくない子がいる」ってことだったらしいんですよ。僕の冷めた感じが、プロデューサーにも伝わっていたのかな(笑)。でもそういう僕を、アツく染めていくんじゃなくて、そのまま生かしたほうが武器になるんじゃないか、ってことで決まったからなのか、演じていてもすごく親しみの湧く役でした。僕にとっては、大きなターニングポイントだったなと思います。ただ最近、以前よりはアツくなれるようになってきて。歳を重ねるごとに、人に対しても仕事に対しても“本気で向き合う”とはどういうことかわかるようになってきたし、本気で生きていこうという肚もくくれるようになってきたので、そういうところが最初におっしゃっていただいたような“ドライだけど、アツいものを持っている”という印象に繋がるのかもしれません。

――片寄さんが自分らしさを貫くために、どんなことを今、意識していますか。

片寄さん 難しいですよねえ。自分らしく生きるって、他人に気を使わないというのとも違うから。コミュニケーションは感情の発散じゃない、と思っているので、言葉を雑に扱わないようには気を付けています。ときどき、気を許していることの証明のように、思うまま言葉を相手にぶつけてしまう人もいるけれど、大事な相手だからこそ言葉は繊細に選ばないといけないなって。あとは、価値観を変えることをおそれない。変化なしに進化なし、っていうのがモットーなので。

――いい言葉ですね。

片寄さん 時間をかけて積みあげてきたものを、ためらいなくゼロに戻すことができるタイプなんですよ。昨日まで大事だと思っていたことが、違うと思ったら今日、真逆の方向に転換できる。もちろん、ひとつのことをずっと大事に想い続けることも大事だと思うけど、意固地になって、踏みとどまったまま、どこにも行けなくなるのはいやなんですよね。正しさも、常に疑い続ける。そのほうが楽しく生きられるんじゃないかと思います。

片寄涼太さん

――でもそれ、大人になればなるほど、難しくなっていきますよね。なかなか自分の正しさを曲げられなくなっていく。

片寄さん そうですねえ。難しいです。そうは言っても僕だって、意固地になっている部分はたくさんあるでしょうし……。でも5年後、10年後、ふりかえってみて「俺、なにも変わってないなー」って思うよりは「こんなこと考えてたのか!」って驚けるほうが楽しくないですか? 驚くと言っても、当時の自分を理解できないというのではなく、悩んでたなあ、青かったなあ、でも今はまた別の場所に辿りつけているぞ、って思えることが、これから先の未来、また思いもよらない場所へ行けるかもしれないというわくわくに繋がっていく。これからもそんなふうに、生きていけたらいいなって思いますね。

――片寄さんは27歳。どんな30代を迎えたいですか?

片寄さん そうですね……褒められたいですね。30代に限らず、永遠に褒められ続けていたい(笑)。でもそれは、やみくもにちやほやされたいっていうんじゃなくて、さっき言った小竹さんとか、LDHのみんなとか、自分が尊敬する人たちに「やるじゃん」って言われたいんですよ。「あの人に認めてもらえた」という実感が、また僕を、先に導いてくれると思うから。だからとりあえずは、自分が、誰かを褒められるような人になりたいと思います。人のいいところをちゃんと見つけて、「あの人に褒めてもらえた」と喜んでもらえるような人に。自分なりに、一歩ずつ、がんばっていきたいです。