飯塚麻結「声優の仕事を始めてから自分をちょっと好きになれました」【声優図鑑】

アニメ

公開日:2021/12/6

飯塚麻結

 キャラクターの裏に隠された自分自身をありのままに語る、ダ・ヴィンチニュースの恒例企画『声優図鑑』。第274回目に登場するのは、声優ユニット『DIALOGUE+』のメンバーとして活動しながら、TVアニメ『CUE!』の恵庭あいり役や、アプリ『Tokyo 7th シスターズ』の荒木レナ役などを演じる飯塚麻結さん。

高校1年生から声優の仕事を始め、約9年間にわたる活動の中で感じたことや得たもの、最近プライベートで夢中になっていることなどを聞きました。

高校入学してすぐにオーディションを体験しました

——高校1年で声優デビューしていますが、声優になろうと思ったのはいつ頃ですか?

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飯塚:年の離れた兄と姉がいたので物心ついた頃からアニメを観ることが多くて、小学校5年生くらいで声優という職業を知りました。男の子向けのスポーツ系アニメをよく観ていたんですけど、エンドロールに女性の名前がたくさん出てくるのを見て、性別関係なく役を演じられるお仕事だと知ってから、なんとなく憧れていたんです。中学は吹奏楽部でがんばっていたので、吹奏楽の強い高校に行こうと決めていたんですけど、大きく「声優」と書かれた高校のパンフレットがあって、どういうこと…って。

——クラーク記念国際高等学校ですね。

飯塚:そうです。声優って、大学や専門学校に行って勉強をするものだと思っていたので、高校生のうちに声優の仕事ができるなんて驚きました。地元の埼玉からなんとか通えそうな距離だし、これは親に相談しなきゃ、と。引っ込み思案なので、「声優になるために勉強したいから、一緒に学校説明会に行っていただけますか」ってお母さんに手紙を書きました。あの時の気持ちを思い出すだけで、泣きそうになるんですけど…。

——熱意が伝わったんですね。

飯塚:はい。もう一度オープンキャンパスを体験できる機会があったので、それにも行きたいって親に話したら「本当に行きたいんだね」って言われました。

——毎日どのくらいの時間をかけて通っていたんですか?

飯塚:片道1時間半、始発に乗って通いました。お仕事がある日は休まないといけないので、休んだ日の勉強がたまらないように、別の日にまとめて勉強したりして。

——それほどがんばって通ったからこそ、得るものは大きかったのでは。

飯塚:入学してすぐの5月くらいに自己紹介の授業があって、その後に「オーディションを受けてみないか」と言われて。スーツを着た大人のみなさんの前で必死に歌や演技を披露して、運良く受かってデビューしました。実際のオーディションでも「1分くらい自由にしゃべってください」と言われたので、自己紹介の授業が役に立ったと思います。

その後の高校生活でもお仕事を続けさせていただいて、そこで感じたのは、1回の現場経験で学べることがすごく多いということ。それを早いうちから経験したことで、自分で考える習慣が身についていったのかな、と思います。

——高校でも部活動をしていたんですか?

飯塚:部活ではなく同好会に。どうしてもやりたくてアイドル同好会を作りました! 学校の大きなプロジェクターでアイドルの映像を見たいがために作ったんですけど、人前に出るための度胸をつけられるかもしれないと思って、ダンスのコピーを披露したりとか。ももクロちゃんとか、渡辺麻友さん(元AKB48)の真似をするのが大好きでした。

——初めてのオーディションでもダンスを披露していましたね。ちなみにダンスを習ったことは?

飯塚:本格的に習ったことはないんです。高校3年の時に、学校でダンスのレッスンがありましたけど、お仕事もあったので、行けたのは数回くらい。でも小さい頃からアイドルを見てきたので、一緒に踊ったりはしていました。

DIALOGUE+のメンバーは、家族みたいな心地いい関係

——それから大学に進んで、9年近く声優の活動を続けるなかで、転機になった作品や時期はありますか?

飯塚:作品もたくさんありますけど、変化としては、自分の意見を言えるようになったことが大きいなと感じます。10代の頃は自分で物事を決められなくて、自分の考えを行動に移せるようになったのは20代になってから。当時、年に一度くらい舞台に出ていたんですけど、楽しかったし、お芝居として学べることがたくさんあるなと感じていて。どうしてもあきらめたくなくて、思い切って「また舞台に出たい」と周りに伝えたことを今でも覚えてます。

——それが功を奏したのか、代表作となる作品がその後に増えていきましたね。2019年からは『Tokyo 7th シスターズ』荒木レナ役として、キャラクターソングにも挑戦を。

飯塚:オーディションの帰りに決定の連絡があって、しかもライブの予定がすでに決まっていて、びっくりしました。レナちゃんは運動神経がよくて元気ハツラツな女の子。「私、この子になるんだ」と思いながらファーストフードでハンバーガーを食べていたんですけど、「こんなことしてる場合じゃない!」と思い立って、事務所の方に「ボイトレに通いたいです!」って連絡しました。あの時は、嬉しいのを通り越して、なんとかしなきゃって気持ちでいっぱいでした。

——ボイトレに励んでからライブに。

飯塚:本格的なライブは初めてだったので必死に練習しました。とにかく数をこなせば時間は裏切らない、っていうことだけを信じて。Le☆S☆Caのメンバーが3人いたことも心強かったです。最初の登場はポップアップで、背中を合わせるとお互いの顔が見えなくなるから、ステージに上がっていく時も泣きそうでしたけど、みんなで肩にふれあっていたから、なんとか大丈夫、という気持ちで。不安ばかりでしたけど、ステージに出たらひまわり畑みたいなペンライトが広がっていて…。すごく勇気づけられたし、レナちゃんの元気さにも助けられて、なんとか乗り切ることができました。

——温かい声援の中でパフォーマンスできたのですね。同年に『CUE!』(恵庭あいり役)の活動も始まりましたが、当時の思い出は?

飯塚:キャストが集められて「これからこのメンバーで活動します」と言われた時はドキドキしました。私は出会った時から相手に対して「好き100%」で始まるほうなんですけど、お仕事の相手だとそうじゃないこともあるかもしれない、と不安を抱えつつ、いつも通りの「好き100%」から始まって、今でも「好き」が増す一方です。

あいりちゃんは、私がデビューしたのと同じ高校1年生で、泣き虫でいつもおどおどしていて、でも本当は心の中に熱い想いを秘めていたりするのが、以前の私にそっくり。「大丈夫?」って心配しながらも、「声優としての人生を大切に歩んでほしい」という親目線みたいな気持ちがありました。

——声優ユニット「DIALOGUE+」の活動も同じく2019年にスタートしています。どんなところが特徴のユニットだと思いますか?

飯塚:ライブ中にMCなしで歌を連続で披露したり、山場の作り方にこだわったり、みなさんに喜んでいただくためにいろんな挑戦を重ねている、とにかくいつも全力なユニットです。スタッフのみなさんも信じられないくらい熱量が高いし、ファンの方の熱量もすごいので、私たちメンバーも頑張って、みんなで楽しいユニットにしていこう、という気持ちになれます。

——2021年の秋には、初の全国ツアーにも挑戦しましたね。

飯塚:応援してくださるみなさんに私たちのほうから会いに行けるのが本当に嬉しくて。「DIALOGUE+ってこんなユニットです!」とあらためてアピールするつもりで挑みました。

——飯塚さんご自身はDIALOGUE+に参加していて、どんなところが楽しいですか?

飯塚:はじめは、メンバーにどれくらい踏み込んでいいのかわからなかったんです。でも今では、ユニットをもっとよくするために意見を言えるし、相手のために何かをしたいと思ったり、その気持ちが何倍にもなって返ってきたりして、家族とか部活みたいな心地いい関係なんです。こんなにいい人たちが集まるなんて…って思えるくらい素敵で、本当に幸せです。

プロレスの動画を毎日観ています

——プライベートで最近はまっていることはありますか?

飯塚:プロレスです! DIALOGUE+の守屋亨香ちゃんきっかけで好きになりました。以前、年始にやっている東京ドームの試合を観てから感動してしまって、今では新日本プロレスワールドに入会して、毎日のように配信動画を観ています。小学生の時、強くなりたくて空手を習いたいと思ったことがあったんですけど、新体操とピアノを習っていたから、怪我を避けるためにも習うことができなくて。それ以来、格闘技には触れてこなかったんですけど、初めて観た時にビビッときてしまいました。

——お休みの日の過ごし方は?

飯塚:基本的にひとつのことをするのが苦手で。プロレスを観ながらネイルをするとか、ゲーム実況を観ながらスマホでお洋服を買うとか、ゲームをしながらエアロバイクで運動するとか、そんな感じです。戦闘系のゲームをしながら運動すると、一緒に戦ってるような気持ちになって、ずっと運動していられるんですよ(笑)。

——プロフィールにある家庭菜園は最近も続けているんですか?

飯塚:はい。家族と一緒に初めてから、もう7〜8年。最近はレコーディングのための曲を聴いて覚えながら、野菜を育ててます(笑)。それぞれ好きなことが違って、兄は種から芽が出るまでの小さくてかわいい苗を育てるのが好きで、私は水やりや人工授粉をして収穫まで育てるのが好き。一番おすすめしたいのは枝豆です。お湯を沸かしてから収穫するっていう言葉が昔からあるくらいで、収穫してから30分以内に茹でて食べると、信じられないくらい美味しいです!

——枝豆といえばおつまみになりそうですけど、お酒と合わせることも?

飯塚:そうですね。一番好きなお酒はハイボールですけど、どんなお酒も好きなので、その時のお料理に合わせて選びます。

おしゃべりがもっと上手になりたい

——これまで声優の仕事を続けて良かったと思うことは?

飯塚:誰かが伝えてくださった言葉の意味に、3年後、5年後に気づくことが多くて。声優って一人で考えて進まないといけないお仕事だと思っていたけど、そうでもないなと最近は思うようになりました。デビュー当時は、人からどう思われているのか不安になることや、人前に出ることが怖い時もありましたけど、いろんな人がいていいんだなと思えるようになったし、自分のこともちょっと好きになってきたように思います。

——これからのお仕事で挑戦したいことを教えてください。

飯塚:もともと熱しやすく冷めやすい性格で、唯一10年近く続いているのが声優のお仕事。自分が夢中になっている理由をこれからも探していけたらと思います。新しいことにもどんどん挑戦したいし、おしゃべりがもっと上手になりたい。私のことを知らない人からも「面白い」「このラジオ聴いてみよう」と思ってもらえるようになれたらいいなと。

——最後に、読者のみなさんにメッセージをお願いします。

飯塚:声優って本当に奥が深い仕事だなと思います。声優に興味がある方は、私以外の記事も含めてたくさん読んで声優のことを知っていただきたいですし、いろんな人がいることを知って、自分にも同じくらい愛情を注げるような人が増えるといいなと思います。

——飯塚さん、ありがとうございました!

【声優図鑑】飯塚麻結さんのコメント動画【ダ・ヴィンチニュース】

次回の「声優図鑑」をお楽しみに!

飯塚麻結

飯塚麻結(いいづか・まゆ) サンミュージック所属

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飯塚麻結(いいづか・まゆ)Instagram

◆撮影協力

撮影=山本哲也、取材・文=吉田あき、制作・キャスティング=吉村尚紀「オブジェクト