のどかな海街の暮らしと大人のピュアな恋模様に癒される! 韓国ドラマ『海街チャチャチャ』
公開日:2021/12/4
いくつになっても、恋する気持ちは私たちの気持ちを瑞々しいものにしてくれる、そう感じさせてくれた韓国ドラマ『海街チャチャチャ』が先日最終回を迎えた。
主人公のユン・へジンはソウルで人気の歯科医だったが、ある日歯科医院の院長と方向性の違いで衝突し、退職してしまう。おまけに、酔った勢いで勤めていた歯科医院の悪口を掲示板に書いてしまったことで、自分自身の悪評につながり、再就職しようにもどこも門前払いされてしまう始末。
そんな彼女がある日車で向かったのが、ソウルから車で数時間かかる小さな海辺の町だった。幼い頃に母親を亡くした彼女は、父と母と家族3人で来たこの町が特別な思い出の場所になっていた。父はすでに再婚しており、母の誕生日も忘れてしまっている。孤独な彼女は海をただ眺めていた。
そこで彼女は、この町に住む青年ホン・ドゥシクに出会う。波に靴を奪われてしまった彼女は、たまたま近くを通りかかったドゥシクに取ってきてくれるように頼むが、初対面なのにあまりの図々しさに引かれてしまう。おまけに、その後ひとりで入った喫茶店で現金を持ち合わせていないことに気づき、再びたまたま居合わせたドゥシクに借りようとして怒られるなど、ふたりの第一印象は最悪のスタートだった。
しかし、彼女がその町で歯科医院を開業することになり、ふたりの関係性は少しずつ変わっていく。
ドゥシクは、ソウル大学を卒業したあと、空白の期間を過ごした後、故郷であるこの町に帰ってきた。カフェの店番から家のコーディネートまで何でもこなす、万能な“ニート”である。手伝いに対する報酬は、時給で常に最低賃金のみ。なぜ高学歴の彼がそのような働き方をしているのかは誰も知らない。
作中では、都会育ちで潔癖なへジンが田舎暮らしで悪戦苦闘する姿も描かれる。ときには住民の悪口を言っているのがスピーカーで流れてしまい、村八分状態になってしまうなど、取り返しのつかないような失敗もしてしまう。そんなときいつも助けてくれるのは、ドゥシクだ。彼女が慣れない土地で1から生活を始めるのを常に後ろから見守り、危険なことがあればどんなときでも駆けつけてくれる。最初は犬猿の仲だったふたりも、お互いに少しずつ惹かれていく。
へジンもドゥシクも30代半ばだが、ふたりの恋愛模様は思春期の男女のやりとりのようでほほえましい。ちょっとしたことで喧嘩をし、ふてくされながらも謝り、ときに同じ目標に向かって手を組み距離を縮めていく。のどかな町で、一切の駆け引きがない、ストレートなふたりのやりとりは見ていてすがすがしい。
加えて、この作品は他の登場人物たちも大変魅力的だ。魚料理店をやっているヨ・ファジョンと洞長のチャン・ヨングクはずっと前に離婚をしているが、ふたりが離婚をした原因は誰も知らず、ファジョンは何かとヨングクを気遣うシーンがあり、謎に包まれている。噂好きでたびたび人間関係をひっかきまわすナムスクも憎めないし、スーパーと金物屋を営むハム・ユンギョンとチェ・グムチョル夫婦も愛嬌があってほほえましい。
一見田舎町のあたたかな暮らしに見えるが、それぞれの人物が心の中に抱く孤独や解消しきれていない想いもあり、物語はそれも優しくひもといていく。恋愛だけではない、仕事や友情や地域の人たちとの家族のようなつながりが丁寧に描かれる。物語の中にはたくさん心に刻みたくなる言葉が存在している。
笑って、泣けて、キュンとくる。いくつになっても恋愛は楽しいし、人とのつながりは心を元気にしてくれる。そんなことを思い出させてくれる作品だ。
文=園田もなか