「なかなか取れない疲れ」や「なんとなくの不調」その原因は自律神経の乱れにあった!?

健康・美容

公開日:2021/12/7

自律神経を整える1日の過ごし方
『「なんとなく…」の不安や疲れがスーッと消える 「自律神経を整える1日の過ごし方」を聞いてきました』(小林弘幸/日本実業出版社)

「しっかり寝ているつもりなのに、なぜか疲れが取れない」「検査では問題ないけれど、なんとなく体調が優れない」。コロナ禍によるリモートワークや季節の変わりめなどの要因によって、そんな悩みを抱えている人が増えているという。しかし、「なんとなく」の悩みの真の原因は、自律神経の乱れかもしれない。

『「なんとなく…」の不安や疲れがスーッと消える 「自律神経を整える1日の過ごし方」を聞いてきました』(小林弘幸/日本実業出版社)は、そんな「なんとなく」の不調を解消するための簡単な方法を、働く人の1日の流れにそって教えてくれる1冊。

 著者の小林弘幸氏は、順天堂大学医学部教授で、日本スポーツ協会公認スポーツドクター。自律神経研究の第一人者として、プロスポーツ選手やアーティスト、文化人へのコンディショニング、パフォーマンス向上の指導にあたり、『世界一受けたい授業』や『中居正広の金曜日のスマイルたちへ』などメディアへも数多く出演している人物だ。

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 働きながら1日を過ごすなかで、どうすれば自律神経の乱れを防ぐことができるのか? ここでは、その一部を紹介していこう。

自律神経の乱れは、心と体の不調を招く!

 自律神経というのは、人の内臓器官のすべて、特に血管をコントロールしている神経。特に意識しなくても、心臓が自律的に動いたり、呼吸がつねに繰り返される。あるいは、食事をすれば、自然に胃腸が消化・吸収したり、暑ければ汗をかき、寒ければ血管を収縮させて体温調節をしてくれるなど、人が生命活動を維持するために必要な働きを、24時間休むことなくコントロールしているのが自律神経なのだという。

 この自律神経は交感神経と副交感神経の2つからなり、互いに対照的な役割をしながら体内環境を一定に保つように働いている。

 ところが、自律神経は日常のちょっとした出来事で乱れてしまうという。仕事や対人関係によるストレス、昼夜逆転や睡眠不足といった生活サイクルの乱れ、不規則な食事などのほか、怒りや不安、天気や気温、気圧の変化など、自律神経が乱れる要因は我々の生活のなかにあふれている。

 自律神経の乱れは、心と体の不調を招く。なんとなく調子が出なかったり、やる気が起きない、疲れやすい、だるいなどは、その第一歩。そして、血流の悪化による頭痛や肩こり、内臓機能の低下による便秘や下痢、肌荒れも起きるという。さらに自律神経の乱れは仕事のパフォーマンスの低下にもつながり、職場の人間関係のトラブルが生まれ、心が折れる原因にもなってしまうという。

 では、自律神経の乱れをなくすには、どうしたらいいのだろうか?

 著者の小林氏はいう。

「残念ながら、ストレスはどうしようとも消えてなくなることはありません。
大切なことは、自律神経が乱れたときに、その状態を認め、見極めたうえで、どうやって改善していくかを考えることなのです」と。

「なんとなく…」の不安や疲れがスーッと消える 「自律神経を整える1日の過ごし方」を聞いてきました
▲「交感神経」と「副交感神経」の理想的なバランスと働きの図(本書より)

 自律神経が乱れると、心と体は、わずかなSOSのサインを出す。大切なのは、そのサインに耳を傾けてしっかりと受け取り、自分を惑わす環境や要素をつぶしたり、避けたりできる習慣をもつことなのだという。

天気が悪いときは、明るい色のものを身につけよう!

 本書では、働き始めて数年という若い人たちが直面しやすい「自律神経が乱される状況」を挙げ、小林氏の長年の研究から見えてきた医学的なメソッドと、小林氏自身が実践している自律神経を整えるための考え方や人との接し方を紹介している。

 例えば「朝の過ごし方」は、こんな具合だ。

「天気が悪くてやる気が出ない……」。こんな気持ちは誰もが一度はもったことがあるものだろう。

 この体調の悪さの原因は、気圧の変化。自律神経と天気は密接な関係にあり、気圧が低下すると、自律神経のなかでアクセルの働きをする交感神経の働きが低下し、血管が弛緩して、いつもよりも血圧が低下。その結果、気分が沈みがちになり、「なんとなくやる気が出ない」状態になるのだという。人によっては血管が拡張した結果、頭の神経が圧迫され、偏頭痛が起きるケースもあるという。

 こうした不調を解消する第一歩は、自律神経と気候が密接な関係にあることをしっかりと認識すること。そのうえで「明るい色のものを身につける」ことで、不調に対処することができるという。

 その理由は、明るい色には交感神経を優位にし、やる気をアップさせる効果があるから。朝の「なんとなくやる気が出ない」という気持ちのまま1日をスタートすると、仕事にも身が入らないままその日が終わってしまうなんてことも。そんなことがないよう、明るい色の服や小物を身につけて交感神経を優位にし、自分のやる気をアップさせることが効果的なのだという。

昼休みは、しっかり休んで、ゆっくり食事をとる

「昼休みになったけれど、食欲もないし、周りの人も働いているし、仕事もキリのいいところまで進めたいから休憩せずに働こう」。こんな状況もよくありがちなもの。だが、これも自律神経のリズムを崩す原因になってしまうのだという。

 自律神経の1日のリズムのなかで、交感神経の働きのピークを迎えるのが12時頃。その時間帯に食事をとって副交感神経の働きも高めておくことで、交感神経と副交感神経のバランスが整い、午後もしっかりと働ける心と体を作ることができるのだという。腸をしっかりと動かすことで、全身の血流がよくなり、脳にも新鮮な酸素や栄養が運ばれる。その結果、午後もスッキリとした気分で働くことが可能になるという関係だ。

 ひとつ注意が必要なのは、交感神経が一気に高まる食べ方を避けること。ときどき時間がないのか、一気にご飯をかきこむように食べる人を見かけるが、この食べ方はNG。昼食は、ゆっくり、よく噛んで、食べたい。また食べすぎると、消化・吸収に大量の血液が使われ、脳への血流量が減ってしまうので、腹6~8分目を心がけよう。仲間とおしゃべりしながら、あるいはスマホを見ながらなどの「ながら食べ」をやめると、ゆっくり食事をとれるのでおすすめだそうだ。

 このように「すぐ疲れる」「やる気が出ない」といった「なんとなくの不調」は、自律神経の乱れが原因かもしれない。その原因を知り、それを生む環境や原因そのものを避けることで防ぐことができる可能性がある。

 本書では働き出して数年の若い人たちが直面しやすい自律神経が乱される状況を31個取り上げ、その対処法を解説している。一つひとつは簡単で、普段の生活のなかでも実践しやすいものばかり。毎日の仕事のなかでなんとなくの不調を抱えている人はもちろん、いつも漠然とした不安を感じている人にも参考にしてもらいたい。

文=井上淳