三世代100年の歴史を紡ぐ朝ドラ『カムカムエヴリバディ』。稔のパパ姿も登場、シングルマザー安子編の第5週を振り返る
更新日:2021/12/11
現在放送中の、朝の連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』。朝ドラ史上初めて、祖母・母・娘、三世代の女性たちを主人公にしたファミリーストーリーです。現在は昭和を生きるひとりめの主人公・安子(上白石萌音)の物語が進行中。第4週は、夫・稔(松村北斗)の戦死が判明し、雉真家に衝撃が走ったところで終了。今回はその後に続き、第5週のあらすじと見どころを紹介します。
稔の死後、調子を崩し、安子に「あんたが稔をそそのかして稔の人生を狂わせたんじゃ」「あんたは疫病神じゃ」と辛くあたる美都里(YOU)。その上、千吉(段田安則)に「るいを養女にし、安子をこの家から追い出して」と言い出します。「嫁いびりのスタート……?」と思いかけたところで、その直後、玄関で音がしたと走り出し、庭先で稔の名前を呼びながら泣き崩れる美都里。その姿を見ると、大切に育てた我が子に先立たれ、怒りや悲しみを誰かに向けずにはいられない美都里の気持ちも否定はできず、複雑な気持ちになります。そしてその場では美都里の提案をたしなめる千吉でしたが、結局は千吉も安子に単身での再婚を提案。しかし千吉の場合は、「ここに縛り付けておくよりも新しい人生を生きてほしい。きっと稔もそう望んどるじゃろう」と、千吉なりに安子のこれからを思っての提案だったようです。それでも「私は稔さんだけの妻です」と断る安子でしたが、千吉は引き下がりません。
この様子を見ていた勇(村上虹郎)は、安子にお金を渡し、るいと二人で岡山を出るように助言。安子とるいは朝一番の汽車で大阪に向かいます。大阪に着いた安子は、かつての稔の下宿先を頼り、物置に住まわせてもらえることに。生計を立てるため、芋飴を売り始めます。しかしなかなか売れない上、焦りと疲労でるいにつらくあたってしまうことも。敗戦直後の時代に、幼い子とふたりきりで暮らすことの厳しさに直面します。
そんなある日、芋飴を売っていた安子は男たちに絡まれ、るいを背負って知らない場所へ。すると、とある家庭のラジオから「英語会話」という講座の音が聴こえてきました。その日から毎日、そこで漏れ聞こえる「英語会話」に耳を傾ける安子。するとその家に住む女性が、安子に声をかけてきました。盗み聞きを咎められると思い、安子は謝りながら芋飴を渡して立ち去ります。その後も安子が家々をはしごして「英語会話」を聴いていると、またあの女性に遭遇。再び謝罪を繰り返しながらその場を立ち去ろうとしますが、その女性は「子どもたちが、安子が作った芋飴をもう一度食べたいとせがんでいる」と話します。安心したせいか、日々の過労が押し寄せてその場で倒れてしまう安子。女性は安子を家の中に招き身の上話を聞くと、「あんたのためやない。この子のためや」と、毎日家の中でラジオ英会話を聴いていいと告げます。またお礼に、とつくろい物をした安子の腕に感心し、ご近所さんから裁縫の仕事ももらってきてくれるように。大家さんの「だ~れも助けてくれへんで?」という言葉通り、過酷な状況でスタートした大阪生活でしたが、安子の努力と人との縁で、ふたりはなんとか生活していけるようになりました。
しかしそこへ、雉真家の父・千吉が現れます。「もう再婚の話はしないから、岡山にふたりで帰ってくるように」と伝える千吉。安子は頑なに断ります。その後も大口注文が増えるなど生活は順調。半面、安子の疲労は再びピークに達してしまいます。そんな中、安子は疲れでぼうっとしたままるいを乗せて自転車を漕ぎ、往来で大きなバイクのような乗り物と衝突。気を失った安子が目覚めると、そこにはなんと勇がいました。倒れたふたりを偶然千吉と勇が発見したこと、左腕が折れていることを伝える勇。そして勇も安子に岡山の家に帰ってくるようにと説得します。それでも「お菓子くれえ右腕一本で作れるわ!」と拒否する安子。けれどその時千吉とるいが病院から帰ってきて、安子はるいの頭に消えない傷ができてしまったことを知ります。自分のせいでるいに傷を残してしまったことで自信を失い、ついに安子は岡山へ帰ることを決めたのでした。
第5週は、立つようになり、話せるようになり、しまいにはお母さんを守る立派な少女へ……と、るいの成長が描かれた週でした。このるいこそが、深津絵里演じるふたりめの主人公。そう考えると、るいを守るために大阪で厳しい暮らしに耐え、るいのために岡山に帰ることを決意した安子は、彼女の目にどう映っているのか。そして自分で考え、行動できるようになったるいが、次週以降雉真の家でどう生きていくのかが気になります。
また、今週は勇の株が急上昇する週でもありました。稔の死後、ふたりきりの時でも「義姉さん」呼びを変えず一定の距離を保ったまま安子とるいを見守り続けた勇。しかし別れの朝には「あんこ」と呼び、「どねえしても困ったら帰ってくりゃあええ。そんときゃあ、わしがおめえをもろうてやらあ」と見送ります。そこに描かれた、冗談めかして身内のほぼいない安子の最後の砦を作ろうとする優しさと、もう冗談でしか自分の気持ちを伝えられなくなってしまった勇の切なさに、ときめきつつも胸がつまりました。
しかしやっぱり特筆すべきは、安子の想像の中ではあるけれども、稔がるいと過ごす姿が見られたこと。るいを起こし、一緒にラジオ体操をする稔。その姿が愛にあふれていたのはもちろん、一瞬振り向いたときの、おそらく画面に映っていない安子に向けられているだろうまなざしの甘さに、グッときます。と同時に、この日常の何気ない一コマが安子の想像の中でしか叶わなくなってしまったことへの悲しみに、改めて苦しくなるシーンでもありました。
美都里の待つ雉真家で再び暮らすことになる、安子とるいの人生はどうなってしまうのか。次週以降も目が離せません。
文=原智香
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