天才肌のタクトと、道半ばで挫折したシントラー。ふたりの激闘を振り返る──『takt op.Destiny』内山昂輝×浪川大輔対談
公開日:2021/12/14
『takt op.(タクトオーパス)』は、DeNAとバンダイナムコアーツによる新規メディアミックスプロジェクト。クラシック楽曲をモチーフに、その力を宿して戦う少女「ムジカート」と彼女たちを率いる指揮者「コンダクター」の物語が描かれていく。現在、TVアニメ『takt op.Destiny』が放送中で、今後はスマートフォンゲーム化も予定されている。
原作は、「サクラ大戦」シリーズで知られる広井王子氏。キャラクターデザインにLAM氏を起用するなど、豪華クリエイターの参加も話題を呼んでいる。アニメは、MAPPAとMADHOUSEの共同制作だ。
そんな一大プロジェクトを、クリエイターやキャストへのインタビューを通して深掘りしていく特集企画。今回は、主人公・朝雛タクトを演じる内山昂輝さんと、彼の前に立ちはだかるシントラー役の浪川大輔さんの対談が実現。対D2戦略拠点「ニューヨーク・シンフォニカ」の首席指揮官でありながら、シントラーはなぜ上官に背いてまでタクトとの戦いに身を投じたのか。中盤の山場である第7話・第8話の激闘を、ふたりに振り返っていただいた。
シントラーは、タクトに対する嫉妬の塊。恨みつらみのキャラクターでした(浪川)
──内山さん演じるタクトと浪川さん演じるシントラーは、対立関係にあります。ふたりの関係をどう捉えていましたか?
浪川:シントラーも、最初はザーガン(対D2戦略拠点「ニューヨーク・シンフォニカ」最高責任者)と同じ志を持ち、彼についていたんです。でも、タクト君の言動がいちいち癇に障るんですよ。
内山:タクトも性格に難ありですからね。
浪川:癖が強いんだよ、このアニメのキャラクターは(笑)。それで、タクトに対してイライラがつのり、闇に落ちていくんですけど。結果的に良いバトルができたと思います。
──第7話からはふたりの直接対決が描かれます。信念の違うふたりのぶつかり合いを、どう演じていったのでしょうか。
内山:シントラーって結局何がしたかったんだろう? タクト視点だとわかりにくくて。
浪川:そんなこと言わないでよ(笑)。
内山:上司のザーガンさんから「タクトには手を出すな」って言われていたのに、その組織命令に背いてタクトに向かっていって。
浪川:確かに、最初は「なぜなんだ?」と思った。
内山:ザーガンに対して忠誠心はあるんだろうけど、タクトが憎くて「ぐぬぬ」となって。
浪川:シントラーも人間なので、タクトにイラついちゃうんです。それで「この野郎!」となってバトルが始まるんですよ。
内山:かなり感情的になってましたね。
浪川:裏設定として、シントラーはもともと演奏家だったけれど志半ばで挫折したことがあるらしくて。一方タクトは純粋に音楽が好きで、しかも天才的な人じゃないですか。そりゃ音楽を諦めた者からすれば……憎らしいよね。シントラーは嫉妬の塊。恨みつらみのキャラクターでした(笑)。
内山:なるほど。
浪川:それに、シントラーはザーガンに対しても薄い壁がありましたよね。でも、組織にハマらなきゃいけないと思っている。そんな中、ふとタクトを見ると自分の思いや目標のために自由に頑張っている。そこに対するうらやましさもあったと思う。で、怒ったらシントラーの性格上、ドンといっちゃうので。やっぱり金髪の真ん中分けはダメですね。
内山:ダメですか(笑)。
浪川:金髪の真ん中分けは、すぐキレるから。
内山:言われてみれば、以前にもそういうキャラをやっていらっしゃいましたね。最初は上品に登場して、感情的な脆さを垣間見せつつ、中盤で闇落ち。で、主人公と対立する。
浪川:そう。金髪の真ん中分け役は慣れてるので、お任せください(笑)。
内山:ハマるよなあ、浪川さん。
浪川:ほら、すぐそうやってイジってくる(笑)。
──タクトからは、シントラーってどう見えていましたか?
内山:最初は突然現れたシンフォニカ(異形の怪物「D2」襲来に対抗する戦略拠点)側の人物で。でも、彼のやってきたことが徐々にあらわになっていき、タクトとの対立関係が生まれていきました。『takt op.Destiny』では、タクトたちの周りの状況がどんどん変化していき、それに彼らが適応したり立ち向かったりする中で次々と大きな障壁が立ちはだかります。シントラーは最大の敵のひとりで、戦わざるを得ない、立ち向かわざるを得ない相手だったんだろうなと思います。
浪川:タクトからすると、ちょっと事故に近いところがあるよね。突然恨みを買って、いきなりつっかかってこられて。自分はまっすぐ目的地に向かおうとしているのに、何か来やがった、みたいな。
内山:実際、車が止まっちゃって遭遇したわけだし、事故のようなものですよね。それも「運命」でしょうね。
浪川:うまい(笑)。
運命と協力してシントラーと戦い、壁を乗り越えたことがふたりの成長につながりました(内山)
──第8話ではバトルが本格化し、この戦いを経てタクトと運命の絆もより深まっていきます。その辺りはどうご覧になっていましたか?
内山:ここでもまた難題に直面しましたよね。バトルではレニーさんから教わったことを活かしつつ、運命とともに困難なミッションを乗り越えていく。その経験が、彼らの関係を深めていったのではないかと思います。もちろん、彼らとしては望んで戦闘を繰り返いしているわけではなく、やむを得ず戦ったという事情はありますが。それでも一緒に協力してシントラーと戦い、危機を乗り越えたことで、お互いへの気持ちが変化したのではないでしょうか。
──シントラーは、ムジカート・地獄を率いて戦います。
浪川:地獄はとにかく戦いたくてうずうずしているので、制御するのが難しいんです。コンダクターなんだけど、ムジカートに振り回されるようなところもありました。基本的にはコンダクターとして指揮しつつ、シントラーも感情的になっていましたし、地獄の意思も強めに出ていて。ドラマ的には面白いシーンになったんじゃないかなと思います。
──作中には、タクトと運命、シントラーと地獄のほかにも、さまざまなコンダクターとムジカートが登場します。「このコンビは楽しそう」「このムジカートを指揮してみたかった」と思うのは、どのコンビでしょう。
浪川:見ていて面白かったのは、レニーと巨人です。シントラーとレニーの接点は少なかったんですけど、現場で初めて見て驚きがありました。全体的に静かな物語という印象でしたが、こんなに弾んだ楽しそうなふたりだったんだ、と。かと言って異質な感じもしないんですよね。こういうふたりがこの世界にいるのが面白いなと思いました。
内山:僕は地獄を推したいですね。動きがダイナミックでカッコよくて、特にバトルシーンで魅力的になるキャラクターだなと思ったので。上田(麗奈)さんのセリフやキャラクターの表情変化も含めて、動いているのを見るのが面白いキャラクターでした。タクトと組んだらどうなるのか見てみたいです。
浪川:組んだことがないから、そう言えるんだよ(笑)。
内山:もめる可能性はあるけど、意外といいコンビになるかもしれない。
浪川:でも、うれしいですね、そう言ってもらえて。タクトと運命も良かった。未完成だけど一生懸命だし、若さで乗り切る部分もあって。運命ちゃんは背伸びしているようなところもあるし、タクトはタクトでマイペースだけど、運命のことをしっかり考えている。そういう関係性が見えるコンビだったので、すごく応援したくなるようなふたりだなって。で、ふとシントラーの傍を見ると、「あ、地獄ちゃんは木の上にいらっしゃるんですね。隣にはいないんですね」と(笑)。タクトと運命は、「一緒に戦ってる感」があっていいなと思いました。
──このアニメはクラシック音楽を題材にしていますが、浪川さんはクラシックを聴くことはありますか?
浪川:こういう仕事をしているのでまったく聴かないということはないし、音楽の授業でもちょっと触れましたけど……すみません、あまり……。
──『takt op. Destiny』を通じて、クラシック音楽に触れた感想は?
浪川:ムジカートだけでなく、コンダクターにもモデルがいると知って、その背後にあるドラマが垣間見えました。作曲された時代背景、作曲家のドラマを知ると、もっと楽しめそうですよね。ベートーヴェンだって、耳が不自由なのに作曲と演奏をしていたわけでしょう? そうやって作られた曲が、今も多くの人たちを感動させているんだからすごいですよね、冷静に考えると。
内山:『takt op.Destiny』に登場するクラシックのプレイリストがネットで聴けるという企画があったんです。その曲間にナレーションを入れるという形式で。そこでクラシック音楽の作曲家や名曲に隠されたエピソードをご紹介したんですが、波乱万丈な人生や意外な制作秘話ばかりで。それがそのままアニメで描かれているわけではありませんが、クラシックにはドラマがたくさんあることを知りました。ただ音楽を聴くだけでなく、クラシックの歴史や作曲家の人物像をひもとく楽しさもあるんだなって。とても奥深い趣味ですよね。
浪川:きれいに締まりました。
取材・文=野本由起 写真=山口宏之
スタイリング=村田友哉
ヘアメイク=福島加奈子、鈴木和花
『takt op.』公式ポータルサイト
TVアニメ『takt op.Destiny』公式サイト