「だらけかわいい」柴犬と家族の毎日。「なんか見たことある」幸せがそこに。
公開日:2021/12/15
バッキンガム宮殿ではエリザベス女王の足元でウェルシュ・コーギーが駆け回り、ホワイトハウスではバイデン大統領にジャーマン・シェパードが寄り添う。そして日本の一般家庭では、柴犬がだらけている。
『柴犬麦くんの毎日』(麦ぬし/KADOKAWA)は、柴犬「麦」の生後2カ月~1歳になる直前までを追った写真集だ。
麦が家族に仲間入りした直後から始めたSNSへの投稿は、そもそも「柴犬と暮らす先輩飼い主さんたちのお知恵を拝借」するためのもの。写真集になることなど想定外で、著者は「人生、何が起こるかわかりませんね」としみじみコメントしている。
芸をするわけでもなく、おしゃれな服を着せられるわけでもなく、麦はただ、そこにいる。
ソファで腹を出してゴロゴロしたり、家族の靴下を噛んだり、こたつにもぐって昼寝をしたり……。
あまりにも自然体な、いや自然体すぎる姿に、「写真集なのに、これでいいのか?」と突っ込みたくなるかもしれない。
でも、これでいいのだ。だって、柴犬なんだから。
だれもが見覚えのあるような普通の家で、普段着の家族と。こんな背景でこそ、柴犬が輝くのだ。
思わずさわりたくなるあったかそうな茶色い毛に、ムッチリと肉のつまった体つき。丸いしっぽに三角の耳、白足袋をはいたような足。素朴な姿は、まさに「日本の犬」だ。
コーギーがフィッシュ&チップスでシェパードがステーキなら、柴犬は味噌汁。日本で生まれ育った者を無条件で降参させる魅力をもっている。
お父さんにじゃれつき、おかあさんに抱かれ、おねえちゃんにすり寄り、おにいちゃんになでられる。いい顔も、ちょっといい顔も、悪い顔も、全部たまらない。
それはたぶん麦の目が、カメラではなく家族に向けられているから。「いいポーズ」でも「キメ顔」でもない瞬間を捉えているからこそ、家族との会話が聞こえてくる。そして見るものの胸をムズムズさせ、ほんの少しあったかくするのだ。
おねえちゃん、ごはんまだ?
おとうさん、ちょっとボール投げてよ。
こんなどうでもいい会話が、似合うんだなあ。柴犬には。
【著者プロフィール】
麦ぬし
柴犬・麦くんの飼い主。2020年10月に初めて柴犬を迎え、同時にTwitterをスタート。日々の愛犬の様子をツイートしている。
Twitter:@sss_inu