しつけも浮気も、バッサリ解決。サンドウィッチマン流・子育てのお悩み解決術
更新日:2021/12/19
書店でふらっと立ち寄った育児本コーナー。ほっこりしたデザインが多い育児関連書籍の中で、ひときわ目を引く表紙に立ち止まり、二度見した。ビビッドなイエローの表紙に、腕を組んでこちらを睨む二人組。隆々としたボディで男気を増しているものの、見紛うことなく伊達みきおと富澤たけし、サンドウィッチマンのふたりである。
育児月刊誌『赤ちゃんとママ』に4年間掲載されたサンドウィッチマンのふたりの育児相談連載をまとめた『サンドウィッチマンの俺等に聞くの!?』(赤ちゃんとママ社)。自身も子どもを持つ伊達みきおと富澤たけしが、子育て中の読者からの悩みに対して、基本はボケつつも、自分の体験談も交えながら、彼ら流の解決策を伝える。そんな本書を読んで驚くのは、表紙のインパクトどおりのキレキレな内容と、意外な満足度を伴う読後感だ。
相談内容は、「パパが娘に甘すぎる」「夫の借金癖が治らない」といった、ママ側から寄せられる夫婦関係に悩みから、「赤ちゃんの寝つきが悪い」「好き嫌い、どうしたらいいですか?」といった子育てのあるある、さらには「妻に仕事を辞めてほしい」などのパパからの相談や義実家との関係まで幅広い。相談を受けるふたりのスタンスは、ボケたおす富澤とそれにつっこみながら話を前に進めようとする伊達という、彼らの漫才と同じ構図。富澤は何かと夫婦の問題を「嫁を抱く」で解決させたがるし、「黄色い札を義母の額に貼り付ける」などと破滅的な解決法も提案。しかし、育児アドバイスとしての答え=オチにたどり着くからさすがだ。正直なところ、役に立ちそうにないアドバイスに笑って終わるだけのテーマもある。しかし助言にはなっていなくても、問題を別の視点から見ることができたり、次に問題に直面したときに富澤の言葉を思い出して笑えたりするだろうから、確実にパワーをもらえる。ふっと吹き出したその声が、育児に行き詰まった相談者を救うのだろう。
ただ、サンドウィッチマンのふたりは、笑いという彼らのミッションを超える役割を、本書の中で果たしている。妻に仕事を辞めてほしいと言う夫に、1日家で子育てと家事をひとりでしてみるといい、と助言したり、「ほかの子と比べてしまう」という悩みには「子どものいいところに目を向けて」と伝えたりと、彼らのキャラクターさながらの大きな視点から、気付きを与えてくれる。時には、相談者の甘さを指摘することも。現実にある違和感を取り出して、笑いに変換してきた彼らの鋭い視点も垣間見られる1冊なのだ。そして、夫の無駄遣いをやめさせたいという妻に対して「“こんな人”って言い方は良くないね」とさらっと伝えるなど、相手を思うからこその本音が見えるから、やっぱり彼らは信頼できる。
富澤が暴走するのが基本だが、テーマによってはいつの間にか伊達が愚痴りはじめたり、伊達が富澤に官能小説を読み聞かせた同居時代の思い出が飛び出したり、脱線も楽しい。サンドウィッチマンのファンも、新しい切り口のネタ本として読んでほしい。大変な育児も日常も、つらいときは、彼らのように脳内で楽しく暴走してみるのもありかも、なんて思えてラクになる1冊。
文=川辺美希