世界70カ国で話題! とにかく深く、心穏やかに眠りたいあなたに贈る52のストーリー
公開日:2021/12/21
夜ぐっすり眠って、朝すっきり目覚める。どうしてそんな当たり前のことがこんなにも難しいのだろう。布団に入ってから何時間も眠ることができなかったり、どうにか眠れたとしても前日の疲れがとれなかったり。大人たちにとって心地よく眠ることは至難の業だ。
そんな睡眠に悩みを抱えている人にオススメしたいのが、『読むだけでぐっすり眠れる52の話』(キャスリン・ニコライ:著、桜田直美:訳/かんき出版)だ。著者は「安眠」のスペシャリスト、キャスリン・ニコライ氏。15年間ヨガと瞑想を教えた経験に基づいて生み出されたポッドキャストによるストーリーテリング「Nothing Much Happens(たいしたことは起こらない)」は6000万ダウンロードを記録し、世界70カ国で話題になっている。「数年ぶりに、朝まで眠れた」「すっきり目覚めることができるようになった」などと、大きな反響を呼んでいる。キャスリン氏曰く、物語には人の心を鎮める力がある。そして、寝る前に物語に触れる習慣には、眠りを誘うのに効果があるのだそうだ。
本書に収録された52のストーリーは、どれも数分で楽しく読み終えられるから、一日の終わりに確かに最適かもしれない。舞台は、居心地のいい小さな村「たいしたことは起こらない村」。読者が物語の世界に入り、自分の物語として想像できるように、どの物語の語り手にも名はなく、性別も特定されていない。そんな語り手が紡ぎ出すのは、日常の何気ない1ページ。小さくてやさしい喜びの瞬間を、キャスリンはみずみずしく描き出す。四季折々の物語が収められているのもいい。「冬の散歩はゆっくりと」「春の雨、季節が変わる予感」「夏の夜の蛍」「秋の朝、ファーマーズ・マーケットにて」……。ただ、どの作品も「たいしたことは起こらない」。だが、だからこそ、想像力を掻き立てられるのだ。
たとえば、「家から1ブロック」という物語の主人公は、雨の夜、自宅に向かっている最中だ。途中で店に寄り、洋梨と小さな袋に入ったアーモンドを買う。そして家に着くと、玄関の鍵を開けて中に入り、扉を閉め、外の世界を完全にシャットアウトする。ソファに座ると、猫が膝の上へと飛び乗ってきて……。この主人公が自分だと想像すると、あなたはどんな気分になるだろうか。降り頻る雨。家に帰ってきた安心感。ソファでくつろぐ自分と、猫の温かい重み。そうやって物語の世界を思い描くと、自然とその世界に没入してしまう。すると、頭の中を支配していた考えごとや心配ごとが、いつの間にか消え去っているのだ。
本書の冒頭には「たいしたことは起こらない村」の地図イラストも掲載。大人好みのテイストながら子どものころ寝る前に読んだ絵本を思い出した。物語を読みながら、ときどき地図を眺め、村の通りを歩く自分を想像してみるのもよさそうだ。温かいストーリーとイラストに、気持ちがどんどん穏やかになっていく。
さあ、あなたも「たいしたことは起こらない村」へと旅立とう。世界中の多くの人に効果があったように、この本の力を借りれば、もしかしたらいい夢が見られるかもしれない。睡眠に悩んでいる人必読。癒し効果抜群の一冊を試してみてほしい。
文=アサトーミナミ