人生の主人公は、いつだって自分。 立花さんがやりたいことをやる理由/やりたいこと、全部やりたい。 自分の人生を自分で決めるための方法①

ビジネス

公開日:2021/12/25

半径1メートルのSDGsがちょうどいい

 兵庫県神戸市の三宮の高架下にあった、広さ1坪程度のパンスト店の長女として生まれたわたしには、コネもお金もありませんでした。ビジネスのアイデアが次々と湧き出てくるような、優秀な頭脳も持ち合わせていません。いわゆる、エリート街道とはあまりにかけ離れた世界です。

 大学を卒業して23歳で結婚。娘をひとり授かるも、労働意欲に乏しい夫に嫌気がさして、27歳のときには離婚を経験しました。シングルマザーになり、やむなく実家に出戻ったわたしは、家業を立て直す手伝いをはじめます。

 そしてわずかなお金が貯まったタイミングで一念発起し、自分で事業をはじめたのが25年前のことでした。

 そんなわたしは、自分でもあきれるほど「怖がり」で、情けなくなるくらいに悲観的でヨワヨワな人間です。

 でも、怖がりだからこそ、勝機のまるでないギャンブルのようなビジネスをして大失敗することもなく、ここまで無事にやってこられたような気もします。

 子どものことを思えば離婚もしたくなかったけれど、あのまま結婚生活を送っていたら自分にも娘にもいいことは起きなかったでしょう。

 あらためてこれまでを振り返れば、ただ自分が「やりたい」と信じたことを、愚直にやり続けてきた半生でした。

 自分の「思い」だけで生きてきた――。だからこそ、「誰だって『思い』さえあれば、やりたいことは全部できる」。そう、わたしは確信しています。

 

 また、自分の工場があるインドの村で健康診断を実施したり、雇用を守るために新しい商品を開発したり、環境に配慮してリサイクルのアクセサリーをつくったりと、世間から見ると社会貢献と呼ばれるようなこともしていますが、わたしは社会貢献活動家でも慈善事業家でもありません。

 重要なのは、あくまでもビジネスがベースにあるということです。

 自己犠牲とか、マザーテレサ的な愛と献身的な精神とはかけ離れていて、だからこそ結果として、インドのスタッフたちとウィンウィンの関係を築くことができたのでしょう。

 

 そもそもインドの小さな村でビジネスを展開しはじめたのは、「インドの伝統的な刺繍の技術を活かした商品を開発する」「いままでにないオリジナリティあふれるアクセサリーをつくる」というプロジェクトの基本コンセプトが頭に浮かび、その対価として現地スタッフには仕事とお金をちゃんと与えるという思いがあったからです。

 ただ不思議なのは、「やりたいこと、全部やりたい」という気持ちで生きていると、必ずまわりにはたくさんの人が集まってきます。

 まわりの人が楽しそうでなかったら、自分だって楽しくありません。すると、「どうにかみんなが笑顔で、できるだけ楽しい生活が送ることができたらいいな」という気持ちになっていきます。

 その笑顔を増やしたいからこそ、いろいろな企業とコラボレートしたり、新しいことをはじめたりしているのが実情なのだと思います。

 

 正直、いまのわたしが、インドの貧困問題を解決しようと立ち上がったところで、なにもできません。

 でも、「やりたい」という気持ちは、「できるかも」という可能性を持った気持ちから生まれることも知っています。「やれたらいいな」では、なにも変わりません。「できるかも」がいつしか、「やりたい」となる。そして、前に進むために行動して、はじめてなにかが変わりはじめるのです。

「半径1メートルのSDGs(エスディージーズ:持続可能な開発目標)」

 そんな思いを持ちながら、自分のできることでまわりのみんなを「なんとかしたい」「ポジティブに変えていきたい」と行動することが大切なのだと思います。

人生の主人公は、いつだって自分

 人に与えられた環境は、それこそ世界中の一人ひとりが異なります。

 たとえ生まれた環境が恵まれていなくても、(わたしのように)シングルマザーになったとしても……人生の主人公は、いつだって自分です。

 生きていれば、誰だって悩みの種はつきません。特にパンデミックのような予期せぬことが起きたら、不安にもなるし絶望だってします。もちろんわたしも、そのひとりです。

 でも、だからといって自分の運命を呪うのではなく、やれない理由を探して言い訳するのでもなく、「やりたいこと」を全部やって、たった一度の自分の人生を後悔なくまっとうしたい。

 たとえ心が折れそうになっても、しばらく沈んだらまた立ち上がって、自分なりに一歩ずつ前進していきたい。

 過去を悔やみ、未来ばかりを心配して生きたくない。

 インドをはじめとした世界の貧困問題を解決できなくても、せめて、自分の目に映る人たちはできる限り笑顔にしたい。

 だから、いまを懸命に生きる─。

 

 本書は、わたしのこれまでの歩みを軸に、いま仕事や人生について悩む人たちに向けて、「やりたいことを全部やる」という生き方のヒントになればという思いで書きました。

 失敗もたくさんしたし、すべてを投げ出したくなったこともたくさんあります。そんなわたしの人生だからこそ、なにかしら役に立つことができるかもしれません。

 わたしは自他ともに認める、とても不器用な人間です。

 でも、わたしにだってできるのだから、誰だって「やりたいことは全部やれるよ!」としっかり伝えたい。

「やりたいこと、全部やりたい」と思い続けることが、あなたと、そのまわりの人たちを幸せにしてくれます。

 わたしは55歳になったいまでも、毎日のように失敗と成功を繰り返し、笑いながら泣き言をいいながら生きています。そして、そんな日々にある幸せを噛みしめながら生きている、真っ最中にあるのです。

<第2回に続く>