自分のペースでゆっくりと! 「好きなこと」や「夢」に縛られずに生きる/やりたいこと、全部やりたい。 自分の人生を自分で決めるための方法⑥
公開日:2021/12/30
立花佳代著の書籍『やりたいこと、全部やりたい。 自分の人生を自分で決めるための方法』から厳選して全7回連載でお届けします。今回は第6回です。シングルマザーとなり貯金ゼロからの起業。インドの小さな村発のアクセサリーブランドの立ち上げなど、やりたいことを全部やって人生を切り開いてきた、アクセサリーメーカー「スプリング」代表の立花佳代さん初の著書です。自分も周りも幸せにするエシカルな生き方のヒントが満載の『やりたいこと、全部やりたい。 自分の人生を自分で決めるための方法』をお楽しみください! 2019年新型コロナウイルスが発生し、アパレル業態は最大のピンチに…。マイナス思考になっていくなか、立花さんはふと、事業を始めたころの原点を振り返る――。
「やりたいこと」が「やるべきこと」にならないように、初心に戻る
わたしはこれまで、仕事に打ち込み必死に走り続ける人生を送ってきたので、過去を振り返る時間も余裕もほとんどありませんでした。
しかし、2019年に発生が報告された新型コロナウイルス感染症によるパンデミックとそれにともなうアパレル不況という事業上の最大のピンチを迎えているなか、皮肉にも時間ができ、これまでのことを立ち返ることが増えました。
「わたしはなんのためにこの仕事をやろうとしていたのだろう」
「なんのために会社を興してスタッフを雇っているのだろう」
「なんでこの事業をやっているのだろう」
そんなことを、行きつ戻りつしながら考えていたのです。
振り返るといっても、「あのときどうして失敗したのだろう?」「なぜあのときあんな判断をしたのか?」などと、悶々と悩むわけではありません。わたしは、「過ぎ去ったことは振り返っても仕方がない」と、さっさと切り替えるタイプです。
そうではなく、自分が仕事や事業をやりはじめた頃の原点に返ることがとても増えたのです。
過去を振り返り、原点に戻ることで、やりたいことが明確になり、また新しい道が見えてきました。
日々の業務に追われていると、やるべきことで、やりたいことがいつの間にか塗りつぶされてしまっていることがあります。
コロナ禍になる前、わたしは、インドでつくったアクセサリーをどうやって広げていくか、もっともっと知ってもらわなくちゃ。そればかりを考えていました。
確かにそれも大切なことですが、そもそもは、心を奪われたインドの伝統的な刺繍技術をつかって、いままでにないものをつくることが目的だったはずです。
そのことを思い出し、アクセサリー以外でも、この技術をつかったなにかをつくれるかもしれないと、いろいろと新しい商品を企画することになったのです。
自分のやってきたことを振り返り、そもそもなんでこの仕事をはじめたのかという原点に戻ることで、いろいろなことが見えてくるし、また同じようなことができるかもしれないというワクワク感が戻ってくるはずです。
一生懸命にやることで、人生の最高のノウハウが手に入る
また、自分の人生を振りかえってつくづく思うのは、一生懸命ってやっぱり大事だなと思うこと。
書店に行くと、「どうすれば楽して儲けられるか」「いかに働かずに不労所得を得られるか」といった内容の書籍がたくさん並んでいる光景を見て、ゾッとすることがあります。
あたかも、それが「いまの時代の賢い働き方」だといわんばかりではないですか。
もしそんなノウハウに心を奪われると、例えば不労所得で10万円も稼げれば、本業は15万円程度でいいという発想になるかもしれません。
すると、仕事に対しても、「15万円程度の取り組み方でいい」というスタンスになるのではないでしょうか。
「そんなの人の自由でしょう?」「楽しく生きられればいいのだから」という人もいると思います。
でも、わたしがなぜ誤解を招きかねない、こんな〝昭和っぽい〟言い方をするのかには確固とした理由があります。
それは一生懸命に働くという行為は、幸せで豊かな人生を送るうえで欠かせない姿勢だからです。
自分が本当に「やりたいこと」をして生きていきたいと思うなら、懸命に仕事に打ち込む時期は絶対に必要です。
なぜなら、なりふり構わず無我夢中で働いている時間は、同時に「自分と真剣に向き合っている時間」だからです。
自分はどんなことに怒りを感じるのか? どんなことに喜びを感じるのか? なにが許せなくて、どのように大切な人たちと幸せを求めていくのか?
そうしたことは、汗水垂らして仕事に向き合うことではじめて実感が生まれるもので、テクノロジーでショートカットできない性質のものだからです。
例えば、インターネットやSNSをはじめ様々なノウハウを駆使し、できるだけ楽をして効率的に稼いだり、資金を移動させて利ざやを取っていたりして、自分のなかに「振り返るもの」はどれだけ残るでしょうか? ショートカットした自分で、この先何十年も老人になるまで生きていくつもりですか?
そうではなく、一生懸命に働いて「根拠のある我慢」をし続けるからこそ、あなたの未来を輝かせる宝石が、一つひとつかたちづくられていくのです。
そうした経験をしているか、していないかで、のちの人生を幸せに生きられるかどうかの大きな分かれ目になるでしょう。
なにごとも懸命にやり続けなければ、のちに「振り返ることすら」できません。
だからこそ、わたしはもっと多くの若い人たちから、「過去を懐かしんでいるだけだ」という単純な批判ではなく、いまを懸命に生きる姿を感じたいと願っています。
あなたの未来を輝かせる宝石は、あなたが懸命に磨き続けなければ、けっして輝くことはないのです。