雨風嵐/前島亜美「まごころコトバ」⑲
公開日:2022/1/7
どんなに忙しくても、多少の無理をしても、体調を崩すことが滅多にない。
「たまには休みたい」と思うときですら、風邪をひかないため、小さい頃はもっとか弱くなりたいと思っていたくらいだ。
幼少期は食べ物の好き嫌いも多く、空手や部活で運動はしていたものの、健康に対してしっかりと気を使ってきたわけではなかったため時折、自分の体の丈夫さを不思議に思うことがあったが、ある時ふと気がついた。
「あぁ、雨風嵐の中をとてもよく歩いていたからか」
私の地元は埼玉県の田舎で、田んぼや畑、林に空き地、星もよく見える空気のいい所だ。
実家も田んぼに囲まれていて、庭には畑があり、料理をする際には畑から野菜を採ってくるというのが決まりだった。
駅やコンビニまでも簡単には行けず、車や自転車が生活に必須だった。
では通学はというと、家の場所によっては、まだ体の小さい小学生でも往復1時間弱かけて毎日歩くことになる。半袖半ズボンに重たいランドセルを背負っての登校、自然と体力はついていった。
小学校の登校には、苦い思い出がある。
トラックの通りが激しい道では、雨の日になると決まって車から水しぶきが大きく上がり、私はびしょ濡れになっては半泣きで帰宅していた。
なかでも忘れられないのが、“田んぼ落下事件”だ。
風の強いある日、自転車に乗って田んぼの横の小道を走っていた。強風に負けないように進んでいたが、ついに耐えられない強風が吹き、自転車に乗ったまま田んぼに落ちてしまい、動けなくなってしまった。
重たい自転車を持ち上げることもできず泣いていたところを、近所に住む友人のお母さんが発見し、泥だらけになった私を助けだしてくれた。
泥だらけのまま家まで送ってもらい、庭のホースで全身水を浴び、震えながら泥を落としたのをよく覚えている。
そこから強風の日に自転車に乗ることはなくなり、後日助けてくれた近所の友人のお母さんにお礼のお菓子を届けにいった。
当時は毎日毎日長い時間歩くことや、徒歩圏内に必要なお店がないことなど、不便だと思うことが多かったが、そんな毎日があったから体も強くなり、自然を大切に思う今の私の感性や感覚が備わったのかもしれないと思う。
田舎だからか近所とのつながりも深く、お裾分けなどもよくしてもらっていた。そういった関係の深さも、田舎の良い点だったと思う。
今でもたまに地元へ帰ると、空気の良さや視界の広さ、青々とした緑に驚くことがある。
心にとって自然は大切な栄養なんだと、大人になるたびに強く感じている。
今は東京で慌ただしく暮らしているが、いつか実家のような自然が多い田舎に住みたいと思う。
田舎で鍛えられた丈夫な体を大切にしながら、これからも健康に、健やかに生きていきたい。
まえしま・あみ
1997年11月22日生まれ、埼玉県出身。2010年にアイドルグループのメンバーとしてデビュー。2017年にグループを卒業し、舞台やバラエティ番組などで活躍。またアプリゲーム『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』(2017年)でメインキャストの声を演じ、以後声優としても活動中。
Twitter:@_maeshima_ami
オフィシャルファンクラブ:https://maeshima-ami.jp/