相手との関係を壊す“スマホいじり”に注意/ わかる! 伝える!視線の心理術⑤

暮らし

公開日:2022/1/7

ビジネスシーンでもプライベートでも使える、「マスク・画面越し」のコミュニケーション術。コロナ禍によって、大きく変化したコミュニケーションの形。マスクで口元が見えなかったり、テレワークの普及などの影響で、人の気持ちを察するための手掛かりの不足によって生じる悩みや不安を、心理学の面などからアプローチし、新たな状況の中でのコミニュケーションに対応できる対処法をわかりやすく紹介!

相手との関係を壊すスマホいじり

 朝起きたら真っ先にスマホを手にして、寝る直前まで画面を見つめる現代人――片時も携帯を離さず電車やカフェなどいたるところでスマホの画面を見つめる人の姿が、当たり前の光景になりました。ひとりの時間なら問題はありませんが、人と会っているときのスマホいじりをめぐってはさまざまな意見があります。

 たとえ、目の前に話し相手がいてもLINEなどSNSからの通知が届くと、わたしたちはつい反応してしまいますが、なぜ目の前の相手よりもスマホが気になってしまうのでしょうか? 対面中の場合、関係性を悪化させないためには、スマホをどのようにあつかえばよいのでしょうか?

脳からはドーパミンが出ている

 現代人は、平均で1日4時間もスマホにさわっているというデータもあるほど、スマホはわたしたちのライフスタイルに欠かせないものとなりました。

 ビジネスシーンでは、会議中に携帯をさわる相手を見て「話の途中で携帯を見るなんて、失礼な人だな」と思った覚えがある人もいるはずです。

 立場が上の相手が目の前でスマホをさわっていると、「この話に興味がないのだろうか」「退屈だというアピールだろうか」などと頭の中であれこれ考えて不安になってしまいます。

 仲のいい相手と会っているとき「今いっしょにいるのにスマホばっかり見ないで!」と怒ったり、あるいは怒られた経験をした人も多いはずです。仕事中やプライベートに関わらず、わたしたちは目の前の人が携帯を見ていると、疑いや怒りを感じ、関係は悪化してしまいます。

 なぜ、そこまでスマホが手放せないのか『スマホ脳』の著者で精神科医のアンデシュ・ハンセン氏によるとそれには脳内のドーパミンに関係があるとのこと。幸せ物質といわれるドーパミンは、期待の大きさに応じて増えるといわれています。投稿した写真にどれくらい「いいね!」が付いているのか、今スマホを開いたらどんな新しい情報があるのか、そんな期待と同時にドーパミンが出ること、その快感がやめられないわたしたちはいつしかスマホが手放せなくなっています。そして、スマホに夢中になるあまり、相手が怒っていることにも気づかない、そんな悪循環が始まるのです。

 先述した『スマホ脳』によると、友人とのディナーの感想を300人に調査した研究で、スマホが人間関係にどれだけ影響を与えるかがわかりました。

 被験者Aチームは、食事中にメールが届くからとスマホをテーブルに出していてもらい、Bチームはスマホを出さずに食事をしたところ、AチームはBチームにくらべて、ディナーがいまいちだと感じたという結果に。

 つまり、スマホがテーブルにあるだけで気持ちがもっていかれてしまい、目の前の人といるのが少しつまらなくなってしまうのです。

視線の心理術

スマホをいじらずにいると、人間関係が改善される

 SNSを介して不特定多数の人とつながることは刺激的で楽しいことです。ですが、目の前にいる人をないがしろにしてまで没頭していると、人間関係は希薄になります。

 その人との関係を大切にしたいなら、会っているときはスマホを見える場所に置かず、前の前にいる人との時間に集中してください。

 人の行為、とくに好きな人の行為は「ミラーリング(現象)」といって伝染しますが、たとえ相手がスマホをさわっていたとしても、あなたはさわらずにいることが大切です。

 ビジネスシーンにおいても、ひとりが携帯をさわることで全体の集中が失われてしまいます。誰かが携帯をさわる行為にあなたが影響を受けなければ、そのうち、あなたの行為が全体に伝わって、皆が会議に打ち込める環境ができます。

 スマホは楽しさも提供してくれる一方で、「スマホ病」「スマホ疲れ」など、その人の心身を疲弊させるものでもあります。あらゆる電子機器を断つ「デジタルデトックス」は、ストレスが減り、安心が増えて、心の余裕が増すという心理的な効果もあります。普段のインプット過剰な状況から離れると、ビジネスの新しいアイディアが湧くなどのメリットも。家族や友人と、あえて電波の届かない場所に出かけるのもおすすめ。関係性がより強くなるはずです。

<第6回につづく>