在宅介護の初心者に向けた親切で網羅的な1冊――自分も家族も大切にしながらする「家族介護」のきほん
更新日:2021/12/27
ある程度の年齢になってくると、「親の介護はいつか来るもの」との思いが頭によぎるようになる。そしてある日、それはいきなりやってくる。わかっていたはずなのに、その時になって「一体どうしていいのかわからない」と途方にくれ、無自覚のまま介護にふりまわされてしまう……しんどい話だが、こういうケースは少なくない。「自分はそうならない!」また「なりたくない!」と思うなら、少しでも事前に介護について知識を得ておくのは大事なことだ。このほど翔泳社から登場した「はじめての在宅介護シリーズ」は、在宅介護の初心者をやさしく&わかりやすくフォローしてくれる実用書シリーズ。いざ介護に直面した時に在宅介護を選択するご家庭も多いため、こうしたシリーズは心強い味方になってくれそうだ。
中でも11月に発売された『「家族介護」のきほん 経験者の声に学ぶ、介護の「困り事」「不安」への対処法』(NPO法人介護者サポートネットワークセンター・アラジン/翔泳社)は、在宅介護の大前提である「家族介護」にスポットを当て、ベーシックな知識を幅広く教えてくれる入門的な一冊。著者の「アラジン」は20年以上にわたって家族介護当事者をサポートしてきたNPO法人であり、本書では長年の経験から蓄積された豊富な事例をもとに、在宅介護初心者の不安を取り除いてくれる。
取り扱う内容は「自分を犠牲にしない、けれど、後悔しないための在宅介護の考え方」「在宅介護・遠距離介護を始めるまでの流れとポイント」「『介護の困った』の乗り切り方」などの視点で、要介護認定のコツ、ケアマネージャーとの付き合い方、介護ストレスの発散法……など基本から応用まで具体的にポイントを網羅。見開き完結でコンパクトにまとめられているので、「困った!」というときに知りたい情報が探しやすいのも便利だ。さらに先輩介護者のアドバイスや、現役介護福祉士で人気介護ブログ「ヘルパーおかん。」の著者・ゆらりゆうらさんのマンガも多数収録されており、不安な気持ちにやさしく寄り添ってくれる。
ちなみに本書でも「介護を乗り切るためには『知識』と『情報』が武器になる」とメッセージする。たとえば「介護が大変で自分の時間がなくなってしまう」のをなんとかしたいと思ったら、ケアマネージャーなど介護のプロに相談にのってもらったり、介護サービスを使って家族介護者が休息したりするといいが、そうしたサービスに行き着くためには、そもそも「どんな介護サービスがあるのか、どうすれば使えるのか」など具体的なことがわかっていなければ難しい。現在、日本には多くの介護サービスがあるが、知らなければ当然利用できないわけだ。実は「知ろうとしなければわからない」のが介護サービスであり、そのままでいたらマイナスになりかねないことは覚えておこう。
こうした本が現状困っているという人に大いに参考になるのは間違いないが、まだ介護に直面していない人にも大きなヒントになるだろう。転ばぬ先の杖ではないが、自分を大切にするためにも読んでおきたい一冊だ。
文=荒井理恵