押し入れにしまったはずの「人形」が……。フォロワーさんから寄せられた、本当にあった怖い話
更新日:2021/12/28
SNSを眺めていると、想像を絶するような体験をしている人の姿をしばしば目にする。当たり前だが、世界は広い。みんな、実にさまざまな出来事に遭遇しているのだ。同時に、そういった世界の広さに気軽に触れることができるSNSはとても便利で、面白いツールだとも思う。
そんなSNSを活用して、“怖い話”を集めたマンガが『フォロワーさんの本当にあった怖い話』(しろやぎ秋吾/双葉社)だ。作者のしろやぎ秋吾さんは10万人を超えるフォロワーを抱えるインフルエンサーで、DMで体験談を募集し、本作を描き上げた。収録されているストーリーは、たとえばホラー映画のように派手でドラマティックなものばかりではない。むしろ静かで、なかには地味な印象のものもある。でもそれが、却ってリアルさを醸し出しており、怖いのだ。
たとえば「着信」というタイトルのこちら。
レストランの調理場で働くフォロワーさんは、休憩中に誰かのケータイに着信があることに気づく。どうやらそれは青木さんのものらしい。けれど、彼はかけ直す素振りも見せない。そんな彼に対して、フォロワーさんは不信感を抱いていく。
あるとき、またしても青木さんのケータイに着信が。ディスプレイを見てみると「自宅」の文字。毎日同じ時間にかかってくる電話は、青木さんの自宅からのものだった。でも実は――。
青木さんのパートナーは亡くなっていた。つまり、「自宅」から青木さんに電話がかかってくることはないはずなのだ。じゃあ、連日の着信は一体誰が……?
「バザーで買った人形」という一編も不気味だ。この体験談を寄せたフォロワーさんには4歳の娘さんがいて、それはお寺のバザーを見て回っていたときのことだった。
娘さんは和装の人形に興味を持った。とても欲しがったので、根負けして買ってあげるフォロワーさん。しかし時間が経つと、人形で遊ぶことをやめてしまった。その理由は「怖いから」。娘さんは人形を異常に怖がったのだ。結局、フォロワーさんは人形を押し入れにしまうことにした。
ところがある夜、目を覚ますと、一緒に寝ている娘さんに黒い影が覆いかぶさっていた。慌ててそれを手に取ると、なんとそれは、例の人形だったそうだ。押し入れにしまったはずなのに、どうして。怖くなったフォロワーさんはそれを供養に出したという。
このように本作には、とても短い、かつ生々しさのある怖い話がたくさん収録されている。しかもそれらはすべて、実体験。それを思うと、一つひとつの読後感もまた違ったものになるだろう。
ただし、そこまで恐れなくても大丈夫。しろやぎさんの絵柄は非常にシンプルで、キャラクターがデフォルメされて描かれているのが特徴的なので、恐怖がオブラートに包まれている。怖い話に耐性がない人でも読み進めることができるはずだ。
文=五十嵐 大