機械が心を持って動き出したら。映画『メトロポリス』/ReoNa「あにめにっき」

アニメ

更新日:2021/12/28

ReoNa「あにめにっき」

『ソードアート・オンライン』シリーズなど、数々のアニメ作品の主題歌で印象的な楽曲を届けている「絶望系アニソンシンガー」ReoNaさん。彼女の表現の根底には、自身を救い支えてくれた、アニメへの深い感謝と熱意があります。同時に、関わり触れ合った周囲の人に広く愛されるのも、彼女の魅力。クリエイター、アーティスト、メディアーーさまざまなジャンルから「ReoNaに観てほしいアニメ」をレコメンドしてもらい、ReoNaがレビューする「あにめにっき」、スタートです!

ダ・ヴィンチニュースをご覧のみなさん、こんにちは。
絶望系アニソンシンガー・ReoNaです。

これから始まる「ReoNaのあにめにっき」では、作品や楽曲でご一緒させていただいた方、普段お世話になっている方からレコメンドしていただいたアニメ作品を観て、受け取った想いを綴ります。
第1回にお届けするのは、SawanoHiroyuki[nZk]:ReoNa『time』でご一緒させていただいた作曲家・澤野弘之さんがオススメの、映画『メトロポリス』です。

 

レコメンダー澤野弘之 推薦コメント

映画『メトロポリス』
出典:Amazon

映画『メトロポリス』
キャラクターや背景など作品の世界観・映像が凄く魅力的なのと、本多俊之さんの作られる劇中音楽やエンディング主題歌が素晴らしく個人的に大好きな映画です。
手塚治虫さんの世界観というのと、大友克洋さんが脚本を担当されているというのも、当時僕が作品を見ようと思った切っ掛けになりました。

「わたしは誰」だったんだろう。

手塚治虫さん原作の映画『メトロポリス』
思えばここまで何も前もって調べずに作品を観るのは久しぶりでした。

歌のない音楽から幕を開ける。
まず目を奪われるのは圧倒的な映像の美しさ。
薬莢の落ちる音、ロボットの動く音。人々の雑踏…。
駆け寄る消防車のサイレンが音楽と融合して、アニメを観ているのにどこかミュージカルのようで。
場面ごとに流れるジャズ。
スチームパンクやサイバーパンクな中に感じるレトロさ。
SFとは相対するものなはずなのに、どうしてこんなに綺麗に馴染んでいるんだろう。
“音楽の流行は繰り返す”と良く聞くけれど、この世界におけるジャズは一体どうなんだろう。
昔の音楽なのか、はたまた巡り巡って最新の流行なのか…。

そして一度では到底目が追いつかないぐらい丁寧に描かれた世界。
駆け抜ける街並みはどこまでも続く配管と建物でぎっしりと覆われていて、通り過ぎる人達の仕草や表情もひとつひとつが登場人物みたいに細かい。
光が動けば影も動いて、途中、ページをめくり直す仕草には感動すらしました。

あんなに新しいロボットやアンドロイドに塗れた街なのに、赤や緑、黄色や青、色鮮やかな建物ばかりなのに、「幸せ」の匂いがあまり感じられませんでした。
そこら中に当たり前のように使われている最新技術、張り巡らされたパイプ菅、空高く聳える建物たち。
そんな中で唯一、私が暖かみを持って感じたのが“ティマ”が光を浴びるシーン。
機械が心をもって動き出したとき、「それ」と人間は一体どんな違いがあるでしょうか。

赤い血が流れているから

心臓が脈打っているから

選んで生まれることは出来ないのに。

手塚治虫さん作品はいくつか読んだことがあって、その中でもアニメを観たことがあるのは幼い頃に観た「ブラックジャック」
そして最近再度アニメ化されていた「どろろ」。
どちらにも「人造人間」と呼べるものが出てきます。

「すべての時代は続くものを夢見る」

いつか人類が鋼の心臓を手に入れたなら

その身体が朽ちることを知らなくなったなら

続くものを夢見なくなるのでしょうか。

レコメンドして下さった澤野弘之さんへ

私が3歳の頃にこの世に生まれた作品「メトロポリス」
お恥ずかしながら、今回お勧めしていただくまで存じ上げませんでした…。
なので、澤野さんのレコメンドコメント以外には全く前情報を入れずに観ることが出来たのです。
昨今、アニメ作品や映画作品に出会う時は、口コミがSNSで目に触れたり、ティザームービーを見かけたりと、あらすじを知っている上で観ることが多かった中、まず「主人公は誰だろう」「この人は悪役だろうか」「このセリフは後から大事になってくるだろうか」などなど、まっさらな状態だったからこそ耳を側立てて、自分の中で筋道を立てていくのが新鮮でした。
そして、澤野さんのオススメ。いつも以上に劇中音楽にも注目しつつの鑑賞。
場面の移り変わりと共に流れるジャジーな音楽、クライマックスシーンの緊張と解放は私も誰かにオススメしたいぐらいです…。
「ReoNaのあにめにっき」第一作目
素敵な作品との出会いを、ありがとうございました。

<第2回に続く>