「若いのにやるなぁ」「頑張って早く治してね」その言葉、NGです。ハラスメント言いかえ辞典

ビジネス

公開日:2021/12/31

トラブル回避のために知っておきたい ハラスメント言いかえ事典
『トラブル回避のために知っておきたい ハラスメント言いかえ事典』(山藤祐子/朝日新聞出版)

 あらゆる業界で人手不足が叫ばれる昨今、企業は働きやすい環境作りをしなければ優秀な人材から去っていってしまいます。転職の理由で一番多く挙がるのが、人間関係の『ハラスメント』なのだとか。ここ数年、企業内におけるハラスメントは増加傾向にあるそうで、2022年4月からはパワハラ防止法が中小企業に適用されます。「自分は気をつけているから関係ない」、そう思っていませんか? そうした無自覚にこそハラスメントの原因が隠れています。

 『トラブル回避のために知っておきたい ハラスメント言いかえ事典』(山藤祐子/朝日新聞出版)では、ハラスメントの原因となる上司と部下の間で起こりやすい意識のギャップを解説して、さまざまなパターンでの言いかえの例を紹介しています。現代の働き方の変化に合わせたリモートワークや時短勤務のケースや、さらにLGBTなどのジェンダー問題など、ビジネスシーン以外の日常生活でも活用できる語句が満載。

 NGとされている言葉の中には、誰もが日常的に言ってしまいがちな言葉も多く挙げられています。「この言葉もハラスメントになるんだ…!」という事例をいくつか紹介してみましょう。

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「誰にでもできる」はNG

 部下にちょっとした仕事を頼むとき、「これやっといてよ」「あれよろしく」など、ケアのない丸投げがNGなのは明白。それでは「誰にでもできる仕事だから」「難しくないから」といった言葉はどうでしょうか?

 相手に過度な重圧をかけないやさしい言葉づかいにも思えますが、聞き手によっては「自分はこんな仕事が相応だと思われている」とモチベーションを下げることもあるのだとか。重要な仕事を与えない、ひたすら単純作業をさせるというのもパワハラに繋がります。

 「これも大事な仕事だから君に頼むんだよ」「簡単だけど覚えておけば役に立つから」と部下を認めるひと言が肝心なのだとか。

「若いのにやるなぁ」はNG

 若手社員が成果を上げたとき、言ってしまいそうなこちらの言葉。一見、ほめ言葉ですが、言葉の裏には「若いから期待していなかったけど……」と経験の浅い若者への差別や偏見が感じられてしまうのだとか。仮にこれが「女性なのにやるなぁ」であったら女性蔑視になってしまうのはおわかりですよね。

 「君を信じていたよ」「これからも頼りにしているよ」などと、相手の年齢や性別に関係ない称賛を送るべき、とのことです。

「頑張って早く治してね」はNG

 同僚が体調不良を理由に休暇を取るときに、「頑張って早く治してね」「みんな待っているよ」という励ましの言葉はOKでしょうか?

 出産や難しい病、うつ病などは適切な治療や静養を必要とするものであり、本人の努力で早く治せるというものではありません。仕事に責任感の強い日本人は休暇を後ろめたく思う傾向にあり、こうした励ましが重荷になってしまうのだとか。

 「ゆっくり休んでね」「何かできることがあれば言ってね」と、仕事の都合よりも相手の健康を第一に願いましょう。

 今まで見聞きしたことがあったり、自分基準でハラスメントと思えなかったりする言葉でも、その場の状況によって相手が誤解してトラブルになる事例もあります。ハラスメントが起きる背景には、さまざまな価値観が一斉に社会に現れたことにあるといいます。本書はそうした多様性の時代を乗り越えるヒントになるかもしれません。

文=愛咲優詩