『カムカムエヴリバディ』今後のキーパーソンはジョー? それとも安子? 深津絵里演じる“るい編”は、居場所探しの物語

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公開日:2022/1/8

連続テレビ小説 カムカムエヴリバディ Part1 NHKドラマ・ガイド
『連続テレビ小説 カムカムエヴリバディ Part1 NHKドラマ・ガイド』(NHK出版)

 現在放送中の、朝の連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』。朝ドラ史上初めて、祖母・母・娘、三世代の女性たちを主人公にしたファミリーストーリーです。昨年末から、ついに深津絵里が演じる二人目の主人公・るい編がスタート。深津絵里の初登場回が、番組史上最高視聴率を記録するほど期待の高い“るい編”。その見どころを紹介したいと思います。

るいが安子と再び笑い合う日は訪れるのか?

 小学校入学の時、「母・安子(上白石萌音)は自分を捨ててロバート(村雨辰剛)と生きる選択をした」と勘違いしたるい。るいは「I hate you」と安子に告げ、ふたりは離れ離れになってしまいました。その後、るいは18歳になるまでを雉真の家で暮らしますが、祖父・千吉(段田安則)の死をきっかけに大阪へ。「もう雉真の家には戻らない」という固い決意で家を出たところから、雉真家での生活は、決して幸せなことばかりではなかったのだろうと想像できます。45話では、ベリー(市川実日子)に名前の由来を聞かれ、足早にその場を立ち去ったるい。安子との楽しい記憶が残っているからこそ、安子が自分を置いて出ていったことを消化しきれず、思い出すべてを否定してしまう。このシーンでは、そんなるいの心境が見て取れました。

 しかしジャズと出会い、図らずも稔(松村北斗)がるいの名前に込めた願いでもある“どこの国の音楽でも自由に聴ける。自由に演奏できる”世界に足を踏み入れたるい。そしてその大阪での暮らしには、ジョー(オダギリジョー)が吹く“On the sunny side of the street“がなぜか気になったりと、思い出をとらえ直す機会がたくさんある予感。安子のるいへの思いを知る視聴者としては、いつかるいが安子と和解する日が来ることを願ってしまいます。そしてその可能性がゼロではないと思う理由が、三人目の主人公・るいの娘の名前です。彼女の名前はすでに”ひなた“であることが公式に発表されています。その”ひなた“は、先にも述べた、稔がるいの名前に込めた願いに関するセリフの中にある”ひなたの道を歩いてほしい“が由来なのでは……? だとすれば、るいが両親のことを肯定的にとらえる日が来るはず。そんな期待を込めて、今後の展開を楽しみにしたいと思います。

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るい編は、るいが自分の居場所を作る物語

 NHKの公式noteで公開されている本作の初期資料には、るいについて「居場所のない世界の中で、家族を作り自分の居場所を見つけた」との書き込みが。安子編を、「自分の居場所を、戦争や古いしきたりに奪われながらも必死に守ろうとした物語」とするならば、対してるい編は、「居場所のない状態から、るいが自分の手で人生を切り開いていく物語」と言えそうです。そしてそのきっかけになると思われるのが、ジャズ喫茶「Night and Day」と、そこに住むトランペッター・ジョー。るいは住み込み先の主人・平助(村田雄浩)に「わしはあの子のわろた顔が悲しそうにしか見えへんのや」とこれまでの生い立ちを心配されますが、そのるいが初めて明るい顔で笑ったのが、「Nigh and Day」を訪れ、ジャズとジョーに出会った後なのです。るいが家族を作るパートナーがジョーなのかは、まだ確定していません。しかしジョーとジャズは、安子にとって稔と英語がそうであったように、るいの世界を広げてくれる存在になりそうです。

観れば観るほどハマっていく、脚本家・藤本有紀作品の魅力

 ここまで本作への期待が高まっているのは、藤本有紀さんによる脚本が大きいのではないでしょうか。実際、彼女の作品は多くのドラマファンに愛されています。その理由は、ひとつのセリフが印象的に何度も出てきたり、序盤や中盤のエピソードがラストに登場したりと、ずっと作品を追い続けるからこそ得られる感動があるから。たとえば現時点でも、稔の「どこの国とも自由に行き来できる。どこの国の音楽でも自由に聴ける。自由に演奏できる。僕らの子供にゃあ…そんな世界を生きてほしい。ひなたの道を歩いてほしい」というセリフは、30話で稔たちが通った喫茶店のマスター・定一が、戦後ジャズに対して複雑な思いを抱えながらも“On the sunny side of the street”を歌う感動のシーンのきっかけになるなど、要所要所で登場しています。るい編ではどのセリフやエピソードが鍵になるのか。じっくりと観るからこそわかる藤本作品の魅力を、これからも堪能していきたいところです。

 そろそろ主要な登場人物も出そろい、佳境に向かっていくるい編。るいに明るい未来が待っていることを願うばかりです。

文=原智香

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