「ほらあの人…名前なんだったっけ?」固有名詞が出てこなくなったら認知症の始まり? 40歳からの“ど忘れ”防止法
公開日:2022/1/11
40歳を超えた人の中には、会話で相手に伝えたい固有名詞を思い出せないことが増えてきて、不安や焦りを感じている人もいるかもしれない。「あれだよ…」「名前を忘れた…」は、認知症の初期症状なのだろうか。
高齢者専門の精神科医として30年以上高齢者医療の現場に携わっている和田秀樹氏の新著『固有名詞が出てこなくなったら認知症の始まりですか? 脳寿命を延ばす10の方法(かや書房ワイド新書)』(かや書房)によると、「固有名詞が出てこない状態」は、認知症とは無関係の場合がほとんど。会話の中で「あれ、何て名前だったっけ?」が増えたからといって認知症というわけではないので、そこまで心配をしなくて良さそうだ。
和田氏によると、認知症は新しい記憶がインプットできない「入力障害」と呼ばれる「病気」であり、固有名詞が出てこない状態は脳には情報が書き込まれているものの出力できない「想起障害」と呼ばれる「前頭葉の老化現象」。だからといって、そのまま放っておいてよいわけでもなさそうだ。老化が進行して“ど忘れ”が増えていき、生活が不便になっていくからだ。本書では脳細胞の寿命は140年と紹介されている。脳の老化を抑える努力をすれば、楽しい老後を過ごすことができそうだ。
著者は、「ど忘れしない脳をつくるポイント」として、次の5つを挙げている。
(1)前頭葉を鍛えるためにアウトプットのトレーニングをする
(2)良質の睡眠をしっかりとる
(3)脳にしっかりと栄養が行き渡るように食べる
(4)運動をする
(5)ストレスが少ない生活をする
本書には、それぞれの項目で具体的な取り組みが紹介されている。例えば、(1)であれば、会話の中で相手の名前を意識して何度も呼ぶ、日記をつけるなど書くことを習慣化する、など。大人は子ども時代に比べて丸暗記などに効果を示す「単純記憶力」は落ちるものの、体験をともなうような「エピソード記憶力」は上がるというから、日記に関しては具体的な出来事を綴ると良さそうだ。
また、(3)については、例えば脳と記憶力に影響するブドウ糖の摂り方を意識すると良いという。ずばり、朝はある程度炭水化物を摂り、意外に思われるかもしれないが、夜もある程度は摂取すると良いのだそう。「日本人は、お酒を飲むと、つまみだけで炭水化物をとらない人が多い」という状況を著者も理解しつつ、しかし、記憶は寝ている間に整理されるため炭水化物不足は記憶整理の働きを鈍化させるとデメリットを述べている。
本書で特に注意していることは、「固有名詞が出てこない状態」を過度に心配し、「歳をとって記憶力が悪くなった」と思い込むこと。それが自己暗示となったりストレスや不安が増したりすることで、より「固有名詞が出てこない状態」の程度が増大するという。
たとえ固有名詞が出づらくなっても「単なる老化現象だ」と気にせず、老化を抑える方向へと労力を前向きに切り替えることを著者は勧めている。私たちにポジティブなメッセージを送ってくれる本書。「あれだよ…」「名前を忘れた…」が気になる人は、むしろ脳を鍛えるチャンスだとポジティブに捉えると良さそうだ。
文=ルートつつみ
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