30代以降の男性に起こり得るという「男性更年期障害(LOH症候群)」を知る

健康・美容

公開日:2022/1/17

LOH症候群(角川新書)
『LOH症候群(角川新書)』(堀江重郎/KADOKAWA)

 年を取れば、体の不調が気になり始める。女性の場合は「更年期障害」の症状は認知されているが、男性にも更年期障害があるという。男性の更年期障害の原因、そして予防法を探っていきたい。

 世間であまり知られていない「男性更年期障害(LOH症候群)」を紹介するのは、医学博士でありメンズヘルス外来を日本で初めて開設した著者・堀江重郎氏による『LOH症候群(角川新書)』(KADOKAWA)。本書によると、LOH症候群(LOH=Late Onset Hypogonadism)は日本人成人男性だけで数百万人の患者がいるという。

 堀江氏は、LOH症候群の原因に、男性ホルモン…とりわけそのメインとなるテストステロンの減退を挙げる。

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 テストステロンは、いわゆる“男らしい”肉体をつくることだけに留まらず、「ハツラツさ」に深く関わるという。テストステロンが満ちていると、元気、エネルギッシュ、自分の意見をしっかり出せる、公平公正である、他の人を思いやる、実行力がある、常に積極的に行動する、というハツラツさを生み出せるといわれる。

 しかし、LOH症候群になり、テストステロンが急激に減退すると、やる気がない、不誠実、ずるい、不親切、内向き、疲れやすい、昼間に眠い、他人の目が気になったり他人の評価に心が折れてしまいやすい、といった「ハツラツさがない」状態となる。

 女性の更年期障害は閉経を迎える50代前後に起こりやすいが、男性の更年期障害はテストステロンが年齢を重ねても意外と減らないこともあり、誰でも起こるわけではない。また、30代以上の男性ならテストステロンが急激に減退しLOH症候群になる可能性があるため、本書はLOH症候群を「病気である」と表現している。

 さて、本書によるとLOH症候群の最も大きな原因はストレス。過労、人間関係、退職による社会からの隔離などが引き金になる。部下と上司からの板挟みになりやすい中間管理職、あるいは定年退職が視野に入り始めた男性が抱える問題と重なる。男性の更年期障害は社会的な要因によって起こるといっても過言ではない、と著者は考えている。

 自分はLOH症候群に罹っているのか、そうではないのか。本書は、いくつかの診断法を示している。例えば、健康診断の結果から、自分がLOH症候群であるか否かがわかる可能性があるそうだ。肝臓に脂肪がたまった肝脂肪は、食生活によって引き起こされるが、実はテストステロンの低下によっても起こることが近年、知られてきたそうだ。ちなみに、ダイエット法として注目されている糖質制限は、過度に行うとやはりテストステロンの低下を招きやすいという。

 本書は、LOH症候群になりにくい方法も紹介している。例えば、テストステロンを増やしてくれる食生活や食事の工夫としては、次のような内容を挙げている。

・たんぱく質をしっかりと、糖質もある程度とる
・羊肉はテストステロンを増やす効果が高い
・たんぱく質とニンニクを一緒にとる
・スイカや冬瓜などウリ類、タマネギも良い効果がある
ほか

 フィットネスの世界で注目されている高強度インターバルトレーニング(High-Intensity Interval Training=HIIT)、ストレス低減法として知られるマインドフルネス、ヨガなどの効果も認めている。

 本書は、世の男性がLOH症候群を予防・克服して、人生の後半戦をますます有意義なものにすることを願っている。私たちは、人生の後半戦をどう愉しむかを想像しつつ、本書を読んでLOH症候群への備えを進めたいものだ。

文=ルートつつみ
@root223