現役アイドル糸原沙也加が語る! アイドルとファンの「あるある」を詰め込んだ一冊

エンタメ

公開日:2022/1/29

#アイドルあるある推しごと図鑑
『#アイドルあるある推しごと図鑑』(糸原沙也加:著、岡本りん:イラスト/宝島社)

 現実世界のみならず、アニメやゲームの世界においてもメインコンテンツと呼べる存在、それが「アイドル」だ。アイドルは人々に夢を与え、人々は「推し」と定めたアイドルに熱狂的な声援を送る。夢中になりすぎて「沼」と呼ばれる深淵に足を踏み入れかねないが、キチンと節度を守っていれば、アイドルを応援することで我々は明日を生きる活力を得ることもできるのだ。『#アイドルあるある推しごと図鑑』(糸原沙也加:著、岡本りん:イラスト/宝島社)は、そんなアイドルたちと、「推し」に声援を送るファンたちの「あるある」をギッシリと詰め込んだ一冊だ。

 面白いのは、著者である糸原沙也加は現役のアイドルであるということ。彼女は吉本興業の9人組新感覚コミックアイドル「つぼみ大革命」のメンバーで、アイドルになる前は大のアイドルファンだったという。つまり本書は、アイドルのリアル体験とファンのリアル体験を両方持ち合わせた人物によって書かれているということなのである。ゆえにアイドルが読んでも、ファンが読んでも共感の得られるネタが満載なのだ。本稿では、そんな「あるある」ネタの中から特に気になったものを、アイドル視点、ファン視点それぞれで紹介していこう。

アイドルあるある編

「MC中、今日はどんな人が来てくれているかなとめちゃくちゃ客席を見渡す」

「あの人、また来てくれてる」「今日は自分のペンライト少ないなあ」など、アイドルはMCの最中に客席のさまざまな情報をチェックしている模様。曰く「みなさん、どこにいても意外とステージから見られていますよ!」なのだとか。よくいわれる「後ろのほうも、見えてるからねー!」のフレーズは、割と本当だったということか。

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「ファンサをバッチリ決めたぜ!と思ったら、お客さんが全くこっちを見ていない」

 会場がよく見えているということは、自分のファンサ(ファンサービス)に対する客の反応も見えているということ。投げたウインクに狂喜乱舞してくれればやりがいもあろうが、悲しいのは空振りした場合。そんなときアイドルは「誰に向けたとかじゃないし……!」みたいに心の中で強がるのだ。もしも自分の推しにこんな悲しい思いをさせたくないなら、推しから1秒たりとも目を離してはいけないのである。

ファンあるある編

「すぐメモする」

 ライブではアクティブに声援を送る人々がいる一方で、「メモラー」なる存在もいる。メモラーとはその日のライブを細かくメモする人のこと。SNSにアップするためだったり、記録用だったりと目的はそれぞれだが、アイドルから見ると「何かの審査員がいるような気になる」らしい。私も仕事柄、ライブの取材でメモを取りながらステージを観ることもあるのだが、ナルホドそんなふうに思われているのか。

「めちゃくちゃ親しいヲタ友達でもよく考えたらプライベートなことは何も知らない」

 最近はSNSでのやり取りで知り合うヲタ友達も多く、ずっと後になってから初めて顔を合わせるというケースもあるだろう。相手の呼び名はハンドルネームで、本名はもちろん年齢や職業も知らない。それでも長く友人関係が続くのだから、人間関係とは不思議なものである。……そういえば私にも10年以上の付き合いになる友人がいるが、今でもお互いハンドルネームで呼び合っているなぁ。

 本書には実に「わかりみ」のあるネタが楽屋からプライベートに至るまで、さまざまに語られている。特に現役アイドルの視点ということで、「アイドルからファンはこう見えているのか」と参考になる点も多い。「つぼみ大革命」のファンはもちろん、それ以外のアイドルファンでも楽しめる一冊なので、ぜひ手に取っていただきたい。

文=木谷誠