モーニング娘。元リーダーの高橋愛が、つんく ♂、中澤裕子、夫・あべこうじにもらった言葉。2月11日(金)から新連載がスタート!
公開日:2022/2/10
紺野あさ美さん、小川麻琴さん、新垣里沙さんとともに5期生としてモーニング娘。に加入し、後にリーダーとしても“プラチナ期”を支えた高橋愛さん。最近では、コスメブランドをプロデュースしたり、芸人あべこうじさんとの仲睦まじい共演が話題になったり。2021年には芸能生活20周年を迎え、『高橋 愛20周年メモリアルブック 『AI VERSARY』(宝島社)を上梓。宝塚やK-POP好きとしても知られている高橋さんは、昨年、ダ・ヴィンチニュースの連載「私たちのK-POP偏愛プレイリスト」にも登場。そして、2022年2月11日(金)からは、高橋さんが読者のお悩みに答える新連載「高橋愛のあまくてにがい。」がスタート! もともとネガティブだったという高橋さんが、なぜ「お悩み相談」なのでしょうか?
(取材・文=立花もも 撮影=干川修)
自分らしい一歩を踏み出すきっかけになったら
――お悩み相談という企画は、高橋さんからの提案だったと聞きました。
高橋愛(以下、高橋さん) そうなんです。もともと、人の話を聞くのが好きなんですよ。その人が今悩んでいることに対して、何を言ってあげられるだろうと考えるのは、私自身が自分と向き合うことでもあって。「私ならこうするなあ」とか「こうしたほうがいいんじゃない?」と答えることで、今の自分が何を大事にしているかがわかって、おもしろいんです。「私、そんなこと考えてたんだ!」って、気づいていなかった自分を引き出されることもありますし。だから、みなさんのお悩みを解決したいというとおこがましいですが、みなさんのお悩みを通じて私はどんなことを感じるのかも知りたいなと思っています。その結果、私なりの答えが、みなさんの悩みにほんの少しでも光を照らすものになれば、もっといいな、って。
――おもしろいですね。お悩み相談に答えることが、自分を再発見することにつながる。
高橋さん あと、インスタのストーリーとかで、ファンの方からの相談に答えることがあるんですけど、あとから見返したときに「もっと違う言い方があったんじゃないか」「このときはこう思っていたけど、もっと考えてみたら別の選択肢があったな」と考えが変わっていることがよくあって。そういう蓄積を生かしたいと思いますし、そのときどきで考えが変わるからこそ、私の答えを鵜呑みにしてほしくないという気持ちもあります。私の意見はあくまで参考に、自分らしい一歩を踏み出すきっかけくらいにしてほしい。私が誰かの相談を通じて、自分を見直すきっかけにしているみたいに、私の答えを聞くことで「そういう意見もあるかあ」と視野を広げて、自分を客観視するきっかけになったらいいなと思います。なんで自分がその道を選びたいのか、理由をちゃんと知ることは、その後の選択にも大きく関わってくるはずだから。
思い込みは重いゴミ!? 夫婦喧嘩はする?
――高橋さんは、自分を客観視するために、ふだんから気を付けていることはありますか?
高橋さん 旦那さんが哲学を学んでいて、いろんな話をしてくれるんですけど、知識だけ身に着けても意味がないなと思っていて。教えてもらったことを、自分に照らしあわせて、それがどういうことなのかは考えるようにしています。あとさっきも言ったみたいに、なんで自分がその選択をしようと思ったのか、考える。なんとなく、で終わらせずに、理由をちゃんと自覚しておくと、次にまた選択しなきゃいけなくなったときにも役立つと思うんです。
――「思い込みは重いゴミ」と夫のあべこうじさんに言われてはっとした、というお話を以前されていましたが、やはりあべさんから学ぶものも多いですか?
高橋さん 多いですねえ。もともと、考えていることを客観的に言葉にしようとする方なので、その影響は受けています。「思い込みは重いゴミ」というのは、それこそ、私が「なんとなく」で行動しがちだったころに言われたことで。たとえばあるとき、待ち合わせの時間に3分遅れたことがあるんですよ。家を出るときから間に合わないってわかっていたから、絶対怒られるだろうなってイライラしていて。駅であべさんの姿を見つけたときも「あーもうすみませんでした!」ってふてくされた態度で近づいて。
――遅れたのに(笑)。
高橋さん 相手からすれば、意味わかんないですよね。なんで怒りながら来るの?って(笑)。ようするに「遅刻するに違いない→怒られるに違いない→怒られるのはいやだ→不機嫌」って思考回路なんですけど、どのくらい遅刻するかは到着しなきゃわかんないし、怒られるかどうかも会ってみなきゃわからないじゃないですか。なのに勝手な思い込みを重ねて、先回りして不機嫌になっている。些細なことですけど、めっちゃ無駄だし、自分にとっても相手にとってもマイナスだな、って思いました。だから今は、そういう無駄な思い込みをしないようにしています。
――「あ、これは思い込みだ」と気づくこともまた、客観視する訓練になりますよね。
高橋さん そう。それで客観視する習慣がつくと、いろんなことがラクになるんですよ。このあいだ、後輩が旦那さんと喧嘩した話をしていて「こういう壁をみんな乗り越えて夫婦になっていくんですね……」みたいなことを言うから「えっ、どこに壁があるの?」って聞いたんですよ。相手と、習慣や常識が食い違うことを「壁」だと思い込んでいたら、それはつらいと思います。乗り越えなきゃいけないし、解決しなきゃいけないし。でも、別の人間なんだから、ベストだと思う形がそれぞれ違うのはあたりまえ。ただ意見が違うというだけのことを「壁」なんて呼んで自分でハードルあげる必要はないんじゃない? ってことを話しました。
モーニング娘。のリーダー時代に学んだこと
――高橋さんは、あべさんとあまり大きな喧嘩はされないんですよね。
高橋さん 喧嘩にならないんですよね。思ったことはその場で言うようにしているし……。後輩は、言いたいことが言えない状態が続いて爆発したみたいなことを言っていたので、「本当はこう思っていたのに」みたいなストレスはあんまり溜めないほうがいいなと思いました。「壁」は、意見が違うから生まれるんじゃなくて、我慢が一つずつ積み重なってできるものなのかもしれないな、って。
――それは人間関係すべてにおいて言えることかもしれませんね。
高橋さん そうですね。マネージャーさんとか、仕事相手の方にもよく「私にとってではなく、あなたにとってのベストを選んでね」って話します。以前は、仕事をするとき、みんなにとってのベストを選ぼうとしていたんですよ。でも、全員が相手のためを思って譲りあっていたら、いつまでたっても決まらないし、何も完成しないじゃないですか。私がその場所にいる必要も、なくなっちゃう。だから今は、私にとってのベストが何かを考えるようにしています。だからといって、私一人の意見を押し通すんじゃなくて「私はこれがいいと思う。あなたはどう思いますか?」と必ず、聞く。そうして、自分にはなかった意見でも、いいと思ったものは拾いあげて吸収していく。結果、関わった全員が、自分にとってのベストだと思えるものがつくれたらいいな、って。そういう感覚は、モーニング娘。でリーダーをつとめた経験で学んだような気がします。今も、学んでいる最中ですけどね。
――でもそのすりあわせって、すごく難しくないですか?
高橋さん そんなに難しいと思ってないかなあ。それこそリーダーになったときは、どうすればみんなを引っ張っていけるだろうって悩みましたけど、中澤裕子さんに「愛ちゃんらしくしていればいいんだよ」って言われたり、いろんな人から声をかけられたことで、自分が思い上がっていたことに気づいたんですよね。モーニング娘。のリーダーになったからって、モーニング娘。が私のものになるわけじゃないし、みんなでつくりあげているということには変わりはない。今はコスメのプロデュースをしていて、確かに私が中心ではあるんだけれど、「みんなでつくる」という気持ちが根底にあるから、私一人の意見でどうにかしようなんて思っていない。だから、すりあわせる作業も、全然ストレスにならないです。わかんないことがあったらすぐ「なんで?」って聞くし。最近の私、なんでなんで病にかかった小さい子どもみたいなんですよ(笑)。
――好奇心が旺盛になっている?
高橋さん もともとは「なんで自分はこっちがいいと思ったんだろう?」「なんでこういう気持ちになったんだろう?」って自分を客観視するところから始まって、その延長で、ふだんあたりまえだと思っていることも、どうしてあたりまえだと思ってるんだろうって疑うようになりました。あと、後輩の話にも通じるんですけど、相手に対して「なんでそういうことするの?」って思っても聞けないことが、けっきょくストレスになるわけじゃないですか。「なんで?」なんて聞いたら失礼かなとか、無知をさらすみたいで恥ずかしいって思うから黙っちゃうわけだけど、それもやっぱり思い込みで、聞いてみなきゃわからないことってたくさんある。知ることさえできれば、解決の糸口になるかもしれないのに、自分一人で完結しちゃうのはもったいないなと思うので、無邪気に「なんで?」って聞くようにしています。
――たしかに、最初から素直に話しあっていれば揉めることもなかったのに……というケースは世の中、たくさんありますよね。
高橋さん だから今は、できるだけたくさんの人の話を聞きたいんです。最近、小さな子どもたちと仕事する機会があったんですけど、彼らは、なんのてらいもなく疑問をぶつけてきて、返ってきた答えが自分の想像していたものと違っていたとしても「へ~!」って受け止めていく。大人になるにつれて忘れちゃったそういう気持ちを、今は取り戻している最中です。あべさんと出会って、現実は変えられないけど、発想を転換することでどれだけでもハッピーになれるって知れたことも、大きいですね。あべさん、小学生のときに、同級生に靴を隠されていたときも、毎回、宝探しゲームだと思っていたんですって。「今日は僕の靴、どこにあるんだろう?」って。あべさんが一歩ひいて物事を見られるのはいろんな経験をしてきたからだと思っていたんですけど、そうじゃなくて、子どものころから発想を転換するすべを身に着けていた。それってすごくいいな、って思いました。あべさんに限らず、さんまさんの「生きているだけでまるもうけ」って考え方とか、ポジティブに変換していく人たちは素敵だなあと思うから、私も、どんな状況でも、自分なりに楽しむことができるように試行錯誤しています。
ネガティブになった時、つんく♂さんに言われたこと
――体調やバイオリズムによって、どうしてもネガティブに引っ張られてしまうときはどうするんですか?
高橋さん わーネガティブになってるー!って思う(笑)。それに関しては「なんで?」って考えても答えは見つからないものなので。しょうがない、今はそういうときだ、って開き直って、まわりにも伝えますね。「今は、いっぱいいっぱいです!」って。でも、ネガティブになっている自分もそのまま受け止められるようになってからは、前ほど取り乱すこともなくなりました。どんなにしんどいときでも、ごはんがおいしいとか、おしゃべりして楽しいとか、いいこともたくさんあるはずだから、ポジティブな言葉もちゃんと口にするようにしていたら、気分もそっちに引っ張られて浮上することもあります。自分で自分をマインドコントロールしているみたいな感じですね。
――たしかに、高橋さんはいつも楽しそうなイメージがあります。
高橋さん どうすれば自分がいちばん楽になれるかを考えるのがいいと思うんです。楽をするって、だめなことのように考えがちだけど、「楽しい」と同じ漢字じゃないですか。自分が楽しいこと、やりたいことをやって、どんどん楽になっていけば、自分もまわりもハッピーになれるんじゃないかなと思います。そのために何より大事なのが、自分で決めて、選択すること。だから、くりかえしになるんですけど、お悩み相談に対する私の答えを鵜呑みにしてほしくはないんです。あと、誰かと比較して、判断しないでほしい。モー娘。時代、私もまわりのみんなと比べて、どうしても卑屈になったり、ネガティブになったりしていたけれど、つんく♂さんには「この場所にいるだけですごいことなんだよ」っていつも言われていました。ないものねだりをして、やみくもにもがくんじゃなくて、自分が今与えられている居場所と幸運にちゃんと感謝できていたら、もっと違う表現ができたんじゃないかなと思います。今の自分を認めてあげることが、けっきょく、成長の第一歩なんですよね。そういう、私が感じてきたことを、お悩み相談を通じてお話しすることで、ちょっと視点を変えたり、背中を押されたりする、きっかけになったら嬉しいです。