夜道雪「自分にはエンタメの世界しかないのかなって思った」【声優図鑑】

アニメ

公開日:2022/1/24

夜道雪

 キャラクターの裏に隠された自分自身をありのままに語る、ダ・ヴィンチニュースの恒例企画『声優図鑑』。第279回目に登場するのは、TVアニメ『スーパーカブ』小熊役、TVアニメ『女神寮の寮母くん。』で八月朔日せれね役を演じる夜道雪(よみち ゆき)さん。

声優・コスプレイヤーなどマルチに活動する夜道さんですが、学生時代は特にジャンルを定めず、漠然とエンタメの世界を目指していたとか。8歳にして動画デビュー、10代のフリーランス時代など、紆余曲折の日々を振り返り、語ってくれました。

中学生の時に描いた絵を今でも見返します

——マルチに活躍する夜道さんですが、小さい頃はどんな子どもでしたか?

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夜道:家族に言われるのは、ずっとボケ〜ッとしてて、ご飯も食べなさいって言われるまでぼけっとしてるような子どもだったらしいです。保育園でも「自分の世界がある」と言われて。だから今ではかなり喋るようになったと思います。

——考え事でもしていたんでしょうか。

夜道:1日中、絵を描いていたみたいです。たぶん、それ以外は何もしてなかった(笑)。父親がよく外に連れ出してくれたので、スケッチブックに鉛筆で風景画を描いたりしてましたね。

——その後も絵を描いているんですか?

夜道:今も時々。いちばん描いていたのは中学生の頃ですね。小学生の時に喘息持ちであまり体を動かせなかったから、体力をつけようと思ったのと、ユニフォームがかわいいって理由でソフトテニス部に入ったんですよ。でも、多感な時期に、悩みがあってもそれを親に話せないし、友だちもいないし、不登校になってしまって。その不安感を絵にぶつけていたのかもしれません。その頃はデッサンというより、頭の中で考えたことを絵に描くようになって、夜な夜な描いては、1ヶ月くらいかけて1枚の絵を完成させていました。

——絵を見返すようなことは?

夜道:よく見返しています。実家に残っているし、いつでも見られるように、自分でも写真にしてスマホに残しているので。SNSに出したことがあって、ファンの方も、長く応援してくださってる方なら知ってるかも。

——高校で夢中になっていたことはありますか?

夜道:高校で所属していた生物部は楽しかったです。動物は好きで、実家で猫を3匹飼っていたのと、今の自分の家にも2匹います。

自分にはエンタメの世界しかないのかなと

——芸能や声優の仕事に興味を持ったのはいつ頃?

夜道:10歳くらい離れている兄の影響でアニメや漫画が大好きで、小学生の頃に『涼宮ハルヒの憂鬱』『エヴァンゲリオン』『咲-Saki-』あたりを観てたんですけど、声優という仕事に目を向けたことはなかったんです。当時はニコニコ動画が流行っていて、8歳の時に兄と一緒に「踊ってみた」の動画を出したのが、ネット活動の始まりでした。

——じゃあ、現在のYouTubeも自然な流れだったんですね。芸能の世界に入る直接のきっかけになった出来事は?

夜道:中学を卒業した頃、地元の事務所にスカウトされて、ローカルの番組やラジオ、地域のイベントのMCなどを3年間していたのがきっかけです。でも全国区になりたいと思い高校生くらいからフリーランスで色々な仕事を受けるようになって。自分でYouTubeを始めたのもその頃ですね。

——その頃は、どんな仕事に憧れていたんですか?

夜道:中学で不登校になったから、高校は行かなくてもいいと思ったんですけど、でも親からは高校だけでも出て欲しいって言われて。社会勉強をしているうちに、私は一般社会になじめないんだろうなと思えてきちゃって。エンタメの世界が向いているかも、むしろそれ以外の仕事はできないかも、って思い始めて、いろいろ活動し始めた感じです。

——自分の居場所を求める、というのもあったんでしょうか。

夜道:それも、もちろんあったと思います。友だちが全然いなかったし、でも人には認められたいっていう承認欲求みたいなものが、中学生の頃に生まれていたかもしれないです。

——声優という仕事に出会ったのは?

夜道:もっと知名度をあげたいって考えていた頃に、ある音楽スタジオの方に声をかけていただいて、『ユバの徽』っていうゲームに出させていただいたんです。まったく知識のない状態でしたけど、こんな楽しいお仕事があるんだって感動して。それからはどうしても声優になりたい、と思って上京して、1年間養成所に通い、声優事務所にスカウトしていただきました。

——どうしても声優になりたいと思うに至った衝撃とは、どんなことでしたか?

夜道:まずキャラクターがみんなすっごくかわいくて、その子に自分がなれるんだということに喜びがあったし、もっといろんな可愛い子を演じたいって思いました。その時に私が演じたシュマリ役は、幼女ですけど中身は何百年も生きているというおばあちゃん。「○○なのじゃー!」っていうセリフが可愛い“のじゃロリ狐”でした(笑)。

バイクは…わがままな彼女に振り回される彼氏の気分(笑)

——夜道さんといえば、TVアニメ『スーパーカブ』の主人公・小熊役。バイク乗りでもある夜道さんにぴったりの役ですが、演じてみての感想は?

夜道:その前にもいろんな役を演じさせていただいて、どんなキャラクターがきても大丈夫っていう自信があったんですけど、小熊みたいな役は初めてでした。監督さんから「声を作らないで」「そのままの声で演じて」と言われて、声を作らずに演じるのは初めてだったし、演じているのに演じていない雰囲気を出すのが難しくて。すごく勉強になりましたけど、そういった意味では、小熊みたいなキャラクターにこの先出会うことはないかもしれません。

——貴重な体験だったんですね。素朴な女の子がバイクに出会って成長していく、という物語について、自分に照らし合わせるようなことは?

夜道:まさに、私も高校生の時にバイク通学していたんです。バイクってスムーズに走っているように見えるかもしれないけど、実際はすっごく大変な乗り物。最初はくじけそうになるくらい難しくて、何度も泣かされました。でも少しずつ体が馴染んできて、バイクと共に成長してきたので、演じていて小熊に感情移入できました。

——バイクは夜道さんにとってどんな存在?

夜道:いや、もう乗り物です。趣味です。かっこいいことを言えればいいんですけど、バイクってそんなに寄り添ってくれる乗り物ではないし、好き勝手な存在なので。自由奔放で、乗っている人のことは何も考えてくれない…わがままな彼女に振り回されている彼氏の気分です(笑)。

——難しさが伝わってきますね(笑)。

夜道:プロのライダーさんに走り方を教えてもらっていたんですけど、プロになってもバイクに乗るのは怖いとおっしゃっていて。怖がるのは悪いことじゃないって思ったし、プロの方でも「もっと速く、うまくなろう」と努力しているんだと思うと、奥が深いなと感じました。私なんて、17歳から乗り始めて、まだ4年。またわからないことだらけだし、これからも一生勉強し続けるんだろうなと思います。

——これからバイクで行ってみたい場所は?

夜道:お休みのたびに乗ってますけど、北海道一周とか日本一周とかに憧れますね。長期のお休みがあったら行ってみたいです。バイクに乗って各地でラーメンを食べるのも好き。特に豚骨ラーメンと鶏白湯。めっちゃ好きです!

とにかくギャグ系のアニメに出てみたい

——小熊役とは打って変わって、TVアニメ『女神寮の寮母くん。』の八月朔日せれね役はミステリアスなキャラクターでしたが、こちらは演じてみてどうでしたか?

夜道:演じやすかったです。役をいただいた時、まずはお手本になるキャラクターを探すほうで、せれね役は『涼宮ハルヒの憂鬱』に出てくる長門有希のイメージ。性格はちょっと違いますけど、ボソボソと喋る感じとか、息遣いを多めにするところを参考にさせていただきました。小熊と声が似てるって言われますけど、私からしたら全然違うと思います。小熊は強い意志を持ちながらそれを口に出さないタイプだけど、せれねは思ったことをすぐに言うし、もっと電波ちゃんのイメージなので。

——これから挑戦したい役を挙げるなら?

夜道:ずっと言ってるんですけど、とにかくギャグ系に出てみたいです! 『女神寮の寮母くん。』みたいな作品にも憧れていて、願いが叶ったので、次はギャグ系に挑戦したいです。『クレヨンしんちゃん』とか、ああいうギャグの感じも好きです。

——最近でいうと、写真集『ひめごと』がAmazon写真集ランキングで1位になったのも素晴らしいことですね。

夜道:ありがとうございます。自分としては、すごいことになってしまったな…と。今までも雑誌の撮影はありましたけど、今回は水着姿とかランジェリー姿とか露出多めだったので、撮影中はすごく楽しかったんですけど、それがたくさんの人に見られていると思うと恥ずかしいです…(笑)。

「たまたま見かけた」って言われるのがうれしい

——コスプレイヤーとしての顔もあって、さまざまなジャンルで実力を発揮していますけど、その中でもやっぱり声優を極めたい気持ちはあるのでしょうか。

夜道:極めたいです。バイク乗りや小熊ちゃんのイメージを持っていただくのもうれしいですけど、他のキャラクターでも思い出してもらえるようになりたいですね。

——SNSでおっしゃっていた「自分の声を聴くのが好き」っていうのも個性のひとつだと思いました。中には自分の声が好きになれない、という方も多いので。

夜道:私は好きです。今こうして話しているような声はそうでもないんですけど、演じてる時の自分の声を聴くのが好き。台本の練習でも録音して聴くんですけど、録音した音声を聴くと落ち着くような気がして、つい何度も聴いちゃいます(笑)。

——学生時代から憧れていたエンタメの業界に入れたと実感することはありますか?

夜道:あります! 最近は自分が出させていただいたWEBサイトをたまたま家族が見ていたりとか、友だちから「コンビニで雑誌を見かけた」「テレビに出てた」って驚かれることが増えて。たまたま見つけた…って言われるのが最近はすごくうれしいですね(笑)。

——では最後に、ここまで読んでくれたみなさんにメッセージをお願いします。

夜道:はじめまして、夜道雪です。まだ声優として修業半ばですが、自分なりに勉強してがんばっていますので、声優好きのみなさん、ぜひ仲良くしてください! バイクで出かけることも多いので、見かけた時は遠慮せずに声をかけてもらえたらうれしいです。頭のどこかに、夜道雪っていうバイクに乗ってる声優がいたな、と覚えていてくださるだけでも、すごく力になります。最後まで読んでくださってすごく感謝しています。ありがとうございました。

——夜道さん、ありがとうございました!

【声優図鑑】夜道雪さんのコメント動画【ダ・ヴィンチニュース】

次回の「声優図鑑」をお楽しみに!

夜道雪

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◆撮影協力

撮影=山本哲也、取材・文=吉田あき、制作・キャスティング=吉村尚紀「オブジェクト