【すぐわかるお金の話】「株価が上がりそうな会社」は9割わかる!?『決算書「3分速読」からの“10倍株”の探し方』

ビジネス

更新日:2022/2/17

ロングセラーや話題の1冊の「読みどころ」は? ダ・ヴィンチWeb編集部がセレクトした『決算書「3分速読」からの“10倍株”の探し方』(はっしゃん/KADOKAWA)の書籍要約をお届けします。

決算書「3分速読」からの〝10倍株〟の探し方
『決算書「3分速読」からの“10倍株”の探し方』(はっしゃん/KADOKAWA)

こんな人にオススメ

・成長株投資をやってみたいと考えている人

・決算書の簡単な読み方を知りたい人

・いつか自分をテンバガーを……夢見ている人

3つのポイント

①投資ビギナーから中~上級者まですべての人の役立つ成長株投資のための決算分析ポイントを全紹介

②成長株を見つけるために決算短信の売上と経常利益を見て5年前からの時系列の伸び、株価と業績の連動性をチェック

③小難しい財務三表・PER・ROEなどの重要な指標も無料ツールを活用してビジュアル表示すれば理解できる

④テンバガー(株価10倍株)をゲットするために未来の成長シナリオ、理論株価を分析しよう

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(著者プロフィール)
はっしゃん/投資家VTuber、個人投資家。サラリーマン時代に従業員持株会から投資を始め、現在までに投資歴は25年。決算分析・理論株価・四季報・月次情報などを武器に30代で資産1億円を達成。2019年、資産3億円達成を機にサラリーマンを辞めて独立起業。「株ブログ はっしゃんのスロートレード」をはじめ、「成長株Watch」「月次Web」「理論株価Web」といった監修サイトは数多くの個人投資家から愛用されており、累計PVは1億以上を誇る。「投資学習Web」では、ITエンジニアの経験を生かして個人投資家向けの分析・学習ツールを無料公開している。近年ではTwitterやYouTubeでも投資に役立つ情報を積極的に発信中。

要約

 株式投資というと、株価を常にチェックして「安く買って、高く売るもの」だと想像する人も多いかもしれない。しかし、「はっしゃん式投資」である成長株投資の特徴は、「現在価値と未来価値の高い企業を探し、その企業になが~く投資をする」こと。株価が成長を続けることを前提にしているため、「いつ買う」「いつ売る」というのは枝葉の話。基本的には「今買う」。そして成長する限り保有も続ける。買ったり売ったりは最低限でOK。実際、著者はっしゃんは最長で3年間も売買をすることがなく、証券口座のログインパスワードを忘れてしまったこともあったという。しかし、その投資の実績はというと、すでに金融資産にして3億6146万円(2021年8月5日時点)に到達。その資産状況は2011年からすべてブログにアップされている。

 では、はっしゃん式投資をするために「業績もよく、成長性もバツグンの会社」を探すにはどうすればいいのか。その答えが「決算書を分析すること」。本書は決算書をもとにいわゆるテンバガー(株価10倍株)候補を見つけるための方法について解説する決算入門書だ。

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基本の成長株候補探しは決算短信をチェックするだけでOK

 最初の解説は「レーザーテック」「神戸物産」「ワークマン」「エムスリー」など、実際にテンバガーを達成した“スター成長株”を事例に3分間で成長株候補をチェックする方法を紹介。具体的には次の3つということになる。

①決算書1ページ目先頭の売上・経常利益を見る
②5年前からの時系列の伸びを3分で見る
③株価と業績の連動性を5秒でチェック

 まず見るべきは年4回、四半期ごとに発表される決算短信だ。これは多くの企業が自社HPで公開している。決算短信の冒頭1~2ページ目の「サマリー(要約)」だけで決算書は9割わかるのだ。まずは、この5年分の決算短信をチェックして、それぞれ1ページ目先頭に掲載されている経営成績欄の「売上と利益」、中でも「前年同期比の伸び率」に注目する。成長株候補の条件は、売上が5年連続で増収になっていること、経常利益が5年連続で増益になっていること。要するに右肩上がりの連続増収増益企業を選ぶということだ。

 続いて、より細かく決算短信を速読する方法を「決算書速読10か条」として、売上と利益、純資産、自己資本率、今期予想、進捗率と四半期特性、四季報予想、市場コンセンサス、決算状況・差異事由、3年後の企業価値予測、株価の動き、以上の10項目について成長株投資ならでは視点から注目。そのうえで月足チャートから成長株が満たすべき条件として次の3つの項目を紹介する。

①右肩上がりのチャート
②白い(陽線が多い)チャート
③半年以内に高値を更新しているチャート

 成長株の基本となる考え方は「売上が2倍になれば利益は2倍になり株価も2倍になる」という、ごくシンプルなもの。なので「過去5年分の決算書」の売上・利益の伸びと連動して株価も右肩上がりになっていればOK。たったこれだけなので、1年1秒として5秒で株価と業績の連動性がチェックできるというわけだ。

 

Web上で公開しているツールを使って財務三表を“見える化”

 ここまでが基本となる成長株候補の探し方だが、続いてより本格的な決算書分析として「財務三表」の見方を解説。実際のテンバガーを達成したスター株や成長株といえる大手企業、成長倒れとなった企業などの決算書をセレクトして見ていく。

 成長株投資にとってもっとも重要なのは前述の決算短信だが、一般的に決算書といえば、貸借対照表(BS)、損益計算書(PL)、キャッシュフロー決算書(CF)の財務三表のことだ。これらは数字が並んで小難しいイメージがあるが、はっしゃんがWeb上で公開しているツールを利用することで「見える化」し、わかりやすく理解できるようになっている。

 財務三表の中で成長株投資に重要なのはCF。CFを見ることで、企業の収益力や成長力を判断することができるからだ。ここでは営業キャッシュフローでどのくらいの現金を稼いでいるかを確認。収益力の目安となる営業キャッシュフローマージンは10パーセント以上が望ましい。投資キャッシュフローは成長株ではマイナスになるのが期待値で、それは成長のために投資を行っているということだ。

 成長株投資でBSを確認するときは純資産や自己資本比率の増減を中心に成長鈍化の兆候を見る。簡単な評価基準は次の通り。

自己資本比率:高いほどよい
流動比率:高いほどよい
当座比率:高いほどよい
固定長期適合率:低いほどよい
固定比率:低いほどよい
純資産や自己資本比率が大きく悪化したら成長株投資の対象から外す。

 PLは売上に対する「売上原価率」「販管比率」「経常利益率」をチェック。これらの変化を時系列で確認し、利益率の向上を時系列と同業他社比較で見ていく。

 

期待EPSとROEの視点から業績変化を予測しよう

 PER(株価収益率)やROE(株主資本利益率・自己資本利益率))も株式投資ではポピュラーな指標。これらも著者はっしゃんがWeb上で公開しているツール「株価診断チャート」でビジュアル化してチャート表示することができる。このツールではPERとROEのほか、PBR(株価純資産倍率)とROA(総資産利益率)もチャート化される。ただの数字の羅列ではなく、ビジュアルで見ることによって注目株の特徴がよくわかるようになっている。

 PERは株価をEPS(1株純利益)で割った数値だ。

PER=株価÷EPS

 一般的に株価が割高か割安かを測る指標として知られていて、「PERが低いほど割安でお買い得」と考えられがち。しかし、「PERはEPSの成長期待を示したもの」と考えることが大切だ。成長株投資のキーワードは「売上が2倍になれば利益は2倍になり株価も2倍になる」。これは「売上が2倍になればEPSは2倍になり株価も2倍になる」とも言いかえることができる。今後EPSが増加するだろうという期待感から株価は上昇するのだ。将来の期待EPSの根拠や実現生に注目しよう。

 成長株にとってはROE(株主資本利益率)も重要。ROEは純利益を純資産で割った数値で、純資産が生み出す利益の割合のことだ。

ROE=純利益÷純資産(%)

 これが重要になる理由は、ROEの高い企業ほど成長力が高いから。業績が黒字で成長段階の場合、ROEが高いほど成長スピードが速くなる。そして、高ROE企業であるほど将来の成長期待が高くなり、株価も高くなる傾向がある。時系列でROEが増加し続けていることは成長株候補の有力基準のひとつになるのだ。日本人投資家は自己資本比率が高くてリスクの低い経営スタイルを好む傾向があるが、日本株の売買高の6~7割を占める外国人投資家は高ROEでリスクをとった資本効率の高い経営スタイルを好む。

 PERとROEを基本とする成長株投資において原点となる考え方は、「EPSの向上が未来につながる」「ROEの視点で業績変化を予測する」というもの。はっしゃん式PER×ROE投資法のポイントをまとめると次のようになる。

①PERが○○倍だから割安、割高という考えを捨てる
②現在の株価、PERになっている理由を受け入れる
③市場評価でなく、EPS(1株純利益)の向上で企業価値を考える
④ROEの増加が続くことが成長エンジンになる
⑤時系列で業績と株価の連動性を検証し3年先5年先に投資する

 

「はっしゃん式理論株価バリューモデル」を活用してテンバガーを狙おう

 本書刊行にあたって2種類の決算書分析テンプレートを新たに公開。本格的な決算分析に挑戦できる「決算分析シート」、中期経営計画などで長期的な株価・業績予測をするための「中期計画分析シート」だ。「決算分析シート」を使うことで、その企業の過去5年間にわたる財務内容、成長性、その企業の業績・財務から見た適正株価である「理論株価」を分析することができる。

 そして過去ではなく5年先の未来を分析するツールが「中期計画分析シート」だ。これは企業が発表している「中期経営計画」から数字を入力・分析するのに適したツールだが、それ以外にも『会社四季報』の二期予想や過去5年間の実績なども参考にして投資家自身の手で中期計画を策定することもできる。このこの中期計画分析シートで作成した成長シナリオと実際に企業から発表される決算の結果を比較することで、単に決算の結果が良いか悪いかだけでなく、「企業が策定した中期計画に沿っているか」「成長シナリオを比較してどうか」という中長期視点からの投資判断が可能になる。

 そして、テンバガーを獲得するためのマイルストーンとなるのが理論株価だ。「はっしゃん式理論株価バリューモデル」の計算式は次のようになる。

資産価値=BPS(1株純資産)×割引評価率
事業価値=EPS(1株純利益)×[ROA(総資産利益率)×150×財務レバレッジ補正]
理論株価=(資産価値+事業価値)×リスク評価率

 この計算式で導き出した理論株価と実際の株価が連動して右肩上がりの銘柄に限定して投資をすることが、成長株でテンバガーを狙う有力な方法のひとつだ。著者はっしゃんが監修しているサイト「理論株価Web」ではすべての上場銘柄の理論株価を算出して公開している。また同じくWeb上で公開しているツール「理論株価電卓」では決算書から数字を入力することで理論株価を自動計算してくれるようになっている。さらに「5年後株価計算ツール」では、5年後までの理論株価が描画される。これらを組み合わせて活用、分析することでテンバガーを狙える「よい成長株」が探し出せるのだ。

 ここまで紹介してきた「はっしゃん式投資」の集大成となるのが「テンバガー実現フローチャート」だ。このフローチャートの第一段階は「成長株候補」を集めること。四季報、決算発表、ニュース&SNSで注目した銘柄をこれまでに紹介した分析方法やツールを使って分析し、50~100銘柄ほどストックしよう。続いて、この成長株候補ストックから実際に新規購入したり、買い増しを行ったりする。この際、本当の成長株であるなら右肩上がりしていくので買うタイミングはいつでもOK(早いほうが安く買える)。ただし、決算前や決算直後は業績変化のサプライズが生じる可能性があり、理論株価が急上昇するので、このタイミングを狙うのもアリだ。そして、最後は長期保有フローとなる。このルールは次の通りシンプルなものだ。

①成長が続く限りは売らない(最低3年は保有)
②成長株の含み損は一切持たない(例外なく損切りする)

成長株投資では含み損の発生はありえない。銘柄選択か売買タイミングのどちらかが誤っているということなので、必ず損切りするようにしよう。そして成長株を売るタイミングのポイントは株価と業績の2種類がある。

①株価が右肩上がりでなくなる
②業績が右肩上がりでなくなる

 以上のフローで、3年で2倍、10年で10倍のテンバガー獲得を目指したい。

 最後は本書執筆のタイミングでセレクトした業績&株価が右肩上がりの成長株候補ストック30銘柄を紹介。これを参考にして成長株への長期投資を行って資産形成に役立てよう。

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