また騙された! 長澤まさみ主演映画『コンフィデンスマンJP 英雄編』はノベライズ版も面白い!

文芸・カルチャー

公開日:2022/1/19

『コンフィデンスマンJP 英雄編
『コンフィデンスマンJP 英雄編』(ポプラ社)

 コンフィデンスマン(=信用詐欺師たち)が、欲望にまみれた人間たちから大金を騙し取る痛快エンターテインメントコメディ『コンフィデンスマンJP』。大人気ドラマの映画化シリーズ第3弾『コンフィデンスマンJP 英雄編』がついに公開された。長澤まさみ演じる、美しきコンフィデンスウーマン・ダー子。東出昌大演じる、ダー子の幼馴染の若きコンフィデンスマン・ボクちゃん。小日向文世演じる百戦錬磨の紳士系コンフィデンスマン・リチャード。彼らは一体どんなコンゲーム(=騙し合い)をみせるのだろうか。この映画をずっと待ち焦がれていたというファンも多いに違いない。

 そんな人にオススメしたいのが、最新映画のノベライズ版『コンフィデンスマンJP 英雄編』(ポプラ社)。「ALWAYS 三丁目の夕日」や「リーガル・ハイ」など数々の人気シリーズを手がけてきた古沢良太氏の脚本をベースとして、人気作家・山本幸久氏が書き上げたこの作品は、とにかく贅沢。映画とあわせてぜひとも読んでみてほしい一冊なのだ。毎回、このシリーズでは、終盤に巻き起こる大どんでん返しに「やられた」と思わされるが、それはノベライズ版でも同様。突然180度変わる世界。「うわー! 騙された…」と悔しく思うのに、何だか気分は爽快。ここまで華麗に騙されると、すっかり騙されていた自分になんだか笑ってしまう。「これってどうやって映像化するの!?」というシーンも多く、ノベライズ版は、想像力をどんどん掻き立てる。映画とノベライズ版を組み合わせれば、コンフィデンスマンの世界を何倍も楽しめるに違いないだろう。

 本作で描かれるのは、ダー子、ボクちゃん、リチャードの腕比べだ。明らかになるのは3人の過去。かつて3人は、“英雄”と謳われた詐欺師「三代目ツチノコ」のもとで、腕比べをしては、その能力を磨いていたのだという。恩人であり、目標だった「三代目」が2年前にこの世を去り、心の火が消えたように感じている3人。そこでダー子は、原点回帰として、真剣勝負の腕比べをしようと提案する。舞台は、イタリアのシチリア島南部にある地中海の小さな島、マルタ共和国。世界中のセレブが集まるタックスヘブンであり、街全体が世界遺産に登録されている首都・ヴァレッタで、彼らは、スペインの元マフィアが隠し持つ、幻の古代ギリシャ彫刻「踊るビーナス」を狙う。勝負の期限は7日間。ルールは無用。誰と手を組むのも裏切るのも自由。そんな熾烈なバトルに勝利するのは誰なのだろうか。

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 最新作は、今までのシリーズとは雰囲気がガラリと違う。いつもは協力してオサカナ(=ターゲット)を狙ってきた3人が火花を散らすというのも新鮮。物語も、「ダー子視点」「ボクちゃん視点」などというように、シーンによって、視点が変わっていくのだ。謀略、協力、裏切り…。さらには、もう二度と会えないと思っていた「コンフィデンスマンJP」シリーズには欠かせないあの人気キャラクターも登場! それぞれの思惑は謎に包まれ、なかなか全体像がみえてこず、続きが気になってうずうずしてしまう。

 そして、それぞれの方法でオサカナに近づく3人には捜査の手が忍び寄ってくる。日本の警察に、インターポール。「警察との対峙」というシリーズ史上最悪の危機に見舞われた彼らはどうなってしまうのか。とにかくドキドキしっぱなし。ジェットコースターのような展開にすっかりのめり込んでしまった。

 元々のファンも、これから『コンフィデンスマンJP』の世界に足を踏み入れる方々も、映画とノベライズ版を組み合わせてお楽しみいただきたい。この作品に触れれば、もうすっかりダー子の虜。骨抜き状態…。『コンフィデンスマンJP』ほど、素晴らしいエンターテインメント作品は稀有かもしれない。このあまりにも痛快なエンターテインメントを、あなたもぜひ体感してみてほしい。

文=アサトーミナミ