『カムカムエヴリバディ』ジョーは三代目主人公・ひなたの父になるのか? るいとジョーが惹かれ合う過程を振り返る
公開日:2022/1/21
現在放送中の、朝の連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』。朝ドラ史上初めて、祖母・母・娘、三世代の女性たちを主人公にしたファミリーストーリーです。先週、ついに気持ちを確かめ合った二人目の主人公・るい(深津絵里)とジョー(オダギリジョー)。ふたりはなぜ惹かれ合ったのか? そしてジョーはこのままるいと結婚し、三人目の主人公・ひなたの父となるのか? について考えたいと思います。
“On the sunny side of the street“が紡いだ、ふたりの赤い糸
ジョーこと大月錠一郎は、るいの言葉のなまりから、彼女が岡山県出身であることをすぐに見抜きます。なぜなら、ジョーも同じく岡山県出身だから。そしてジョーは、30話でるいの母・安子(上白石萌音)が進駐軍クラブを訪れたとき、舞台袖にいた少年だったのです。この時、定一(世良公則)が歌った”On the sunny side of the street”に安子は涙しましたが、その感動はジョーの心にも。”On the sunny side of the street”は自分にとって特別な曲であることを、ジョーはるいに打ち明けます。そしてこの曲は、るいにとっても母・安子との思い出が詰まった、忘れたくても忘れられない曲。”On the sunny side of the street”をきっかけに、お互いのことが気になっていくふたりの過程は、運命に引き寄せられるかのようでした。
また、ジョーは戦災孤児であることも判明。るいも戦災孤児ではないけれども、戦争に家族を奪われ、人生を狂わされたひとりです。ジョーがトランペッターとしてのチャンスであるコンテストに出場する勇気が出ない時、後押ししたのはるいの存在でした。そしてるいが過去の象徴でもある額の傷をついに見せると、ジョーは何も言わずるいを抱きしめました。
どちらも決定的なセリフはなかったこのシーン。むしろ決定的なセリフがないからこそ、孤独な過去を持つ者同士、心の深い部分で共鳴し合っていることが伝わってくるシーンでした。本編では触れられていませんが、32話では定一の喫茶店「Dippermouth Blues」で同じ店内にいたこともあるふたり。同じ土地に生まれ、似た心の傷を持ち、同じ曲に思い入れを持つ。そんなふたりが惹かれ合うのは、必然だったと言えます。
ミステリアスで甘え下手、過去からくる態度が魅力のるい
岡山を捨てて大阪に来たるいは、自分の過去を話したがりません。ジョーが住むジャズ喫茶「Night and Day」のメンバーに出自を詮索されて、すぐに帰ってしまいました。ジョーが初めて“On the sunny side of the street”をるいに吹いて聴かせたときも、過去を思い出して涙を浮かべつつも、何も言わずその場を立ち去ります。そんなるいをトミー(早乙女太一)は「ミステリアス」と評しますが、ジョーもどんどんるいのことが気になっていった様子。るいにそのつもりはなくても、「何を考えているのかわからないから気になる」、そんな男心を刺激していたようです。また、ベリー(市川実日子)に「私は興味ありません、欲しい思てません、そんな顔した女に限って、気ぃ付いたら何もかも手に入れてんねん」「控えめの皮をかぶった強欲の塊や」と言われる、るいの一歩引いた控えめな態度。これも計算ではなく、頼る相手がいなかった幼少期を過ごしたるいの、甘え下手な性格からくるものと想像できます。同じ女性である筆者としては、ストレートに好意を表明する割に健気なベリーも応援したくなります。しかしるいのミステリアスかつ控えめで、いわゆる「追いかけたくなる」風情が、ジョーの気持ちを高ぶらせたのでした。
押し引きも絶妙、母性本能をくすぐる系男子・ジョー
初めて会話したとき、るいが座るテーブルの向かいの席に突然腰かけ、ホットドッグを食べ始めたジョー。道端で出会ったときも、るいがレコードを買うのだと思い込み、レコード屋の店内へ連れていきます。そしてるいが「お金を使いたい」と言えば、「コーヒー代にしたら?」と、さくっと「Night and Day」へ誘う。ジョーはマイペースにぐいぐい距離を詰めてきます。るいも「この人とおったら、自分が何(なに)ゅうしょんか見失うてしまう」と完全にペースに巻き込まれ、次第にジョーのことが気になるように。そんな、ちょっと強引なジョーですが、先に述べた、るいが「Night and Day」のメンバーに出自を詮索されるシーンでは、出身が岡山であることを言い当てて以降、終始無言。るいが困っている空気を感じ取り、余計な詮索をしない。同じく苦い過去を持つジョーだからこその無言に、グッときました。また、ホットドッグを食べたら必ずケチャップをこぼす、インスタントコーヒーを淹れられない、たこ焼きもこぼす。そんな母性本能をくすぐる一面も、ジョーの魅力。ジョーをたしなめながらお世話するるいの、彼といるときにだけ見せるお姉さんな一面にも、かわいらしさが溢れています。ふたりの普段の何気ないやり取りからも、やっぱりお互いに唯一無二の相手なのだな、と感じられるのです。
こうして結ばれた二人。しかし公式HPにある、るいの娘である三代目主人公・ひなたの紹介には「父親の影響で、時代劇が大好きで、侍に憧れている」との記述があります。しかもひなたは、京都の下町商店街育ちとのこと。一方ジョーは、将来はアメリカで演奏したいという夢を持っています。ジャズマンのジョーが、子どもに影響があるほど時代劇好きになるかは未知数です。ジョーは夢破れ、るいと関西で暮らすことになるのか。それともるいとジョーは破局し、別の誰かがひなたの父親になるのか。はたまたもっと別の展開が待ち受けているのか? 新たな恋敵になりそうな、佐々木希演じる笹川奈々も登場し、今後の展開からますます目が離せません。
文=原智香
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