高橋留美子と椎名高志がコラボ! 『犬夜叉』スピンオフアニメの新解釈コミカライズ『~異伝・絵本草子~ 半妖の夜叉姫』
公開日:2022/2/8
大ヒットマンガ『犬夜叉』(小学館)の未来を描くオリジナルTVアニメ『半妖の夜叉姫』。そのコミカライズ『~異伝・絵本草子~ 半妖の夜叉姫』(椎名高志:漫画、高橋留美子:メインキャラクターデザイン、隅沢克之:脚本協力/小学館)の1巻が発売された。
『半妖の夜叉姫』のマンガを椎名高志が描く……Web記事でこれを知ったときは、思わず二度見した。「コミカライズは若手漫画家がする」という勝手なイメージがあったからだ。椎名氏は画業30年超えのベテラン、しかも『GS美神 極楽大作戦!!』や『絶対可憐チルドレン』(どちらも小学館)というヒット作を描いてきた。そんな彼が高橋留美子氏(こちらは画業40年以上)とタッグを組む……! 「週刊少年サンデー」の大御所漫画家同士による豪華すぎるコラボに、私は興奮を抑えられず、期待しまくった。
なおこの1巻には高橋氏と椎名氏の対談が収録されており、椎名氏の熱烈なアプローチから本作が生まれた経緯を読むことができる。
では実際、期待をはるかに超える出来だった本作を紹介していく。
『犬夜叉』のその後を描くオリジナルスピンオフアニメ『半妖の夜叉姫』
まず『半妖の夜叉姫』について。『週刊少年サンデー』で1996年から2008年まで連載され、アニメ化もされたマンガ『犬夜叉』のその後を描いたオリジナルTVアニメだ。原作者の高橋氏はメインキャラクターデザインで参加している。犬夜叉の娘・もろはと、犬夜叉の兄である殺生丸の娘・とわとせつな、彼女たち三人の“夜叉姫”の物語だ。
「半妖の夜叉姫 壱の章」(1話~24話)が2020年10月3日から2021年3月20日まで放送され、2021年10月2日から「弐の章」が開始(25話~)。これに合わせて『~異伝・絵本草子~ 半妖の夜叉姫』の連載がスタートしたのだ。
なぜ殺生丸の娘が令和の時代に?
舞台は令和の現代から約500年前、戦国時代の日本。日暮かごめ(ひぐらしかごめ)と妖怪の父と人の母を持つ「半妖」の犬夜叉、そして彼の兄・殺生丸は、どんな願いもかなえる力があるといわれる“四魂の玉”をめぐる戦いを終わらせていた。ようやく訪れた穏やかな日々のなかで、兄弟はそれぞれ子を成す。
それから十数年が過ぎた。殺生丸の娘・とわは、かごめの弟である草太の養子として暮らしている。そこは令和の日本だ。彼女は幼い頃、一人でいるところを彼に保護されたのだ。
とわは身体能力が常人離れしており、さらに怪異(もののけ)を倒す不思議な力を身につけていた。彼女は普通の中学生ではいられず、生きづらさを抱えて生活している。ただ怪異に立ち向かうときにだけ、生き生きと目を輝かせるのだった。
街も学校も、
自分の世界じゃないって感じる。
いつも少しずつズレてる。
そして、こうやって怪異と向きあってるときだけ、
私と世界のズレは消えてなくなる…!!
ある日、日暮神社(かごめと草太の実家)にある、ご神木の中から怪異が現れた。さらに二人の少女が遅れてやってくる。一人は妖怪・犬夜叉とかごめの娘・もろは。もう一人は殺生丸と人間・りんの娘で、とわの双子の妹・せつな。彼女たちは犬夜叉と同じ「半妖」である。10年ぶりの再会だが、とわは何も覚えていなかった。
半妖の娘たち三人は戦国時代に戻り、犬夜叉やかごめが暮らした家で、もろはとせつなを育てた老女・楓(かえで)に彼女たちの過去を聞く。三人は生まれてすぐ親とともに姿を消し、もろはとせつなだけが3年後に帰ってきていたのだ。だが、とわ以外の二人も幼い頃の記憶があやふやで、何が起きたのか思い出せない。そんな彼女たちを謎の妖怪が襲い、「虹色真珠を渡せ」と告げる。
こうして“半妖の夜叉姫”たちの戦いの幕が開いた。彼女たちは記憶を取り戻すことと、行方知れずの父母を探すことを誓い、波乱に満ちた旅に出る――。
椎名高志が描くコミカライズ版の魅力
アニメとこのコミカライズ版は、一部設定が異なっている。犬夜叉たちが子どもを連れて出ていく場面や、とわとせつなが離れ離れになる描写などが違い、アニメを見ている人にもきっと新鮮味があるだろう。
そして何よりキャラクターだ。ときには悩み、気持ちを高め、激しく戦う三人娘は生き生きとしている。クールキャラのせつなでさえ感情豊かに描かれていると感じた。彼女たちは、元気でテンション高めなキャラクターを描いたら天下一品の椎名氏にぴったりハマったと思う。巻末に収録されている高橋氏との対談でも、「(他人のキャラクターである)三人娘を楽しく自分の娘として描けている」と語っている。
最後に単行本の帯に書いてある高橋氏の言葉を借りる。
さすがは椎名先生。
さいっこうに面白いので、
ぜひ読んでください!
高橋氏のお墨付きとなれば、ファンであれば読まないわけにはいかないだろう。アニメと合わせて二度美味しい本作をぜひとも楽しんでいただきたい。
文=古林恭