犬山紙子さん×山崎ナオコーラさん対談! “価値観の相違”を描く『魔法使いの約束』の魅力とは?
PR 更新日:2022/2/4
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賢者となり、魔法使いたちを導くゲームから見えてくるのは、“違い”を乗り越える力!――異世界に召喚された主人公となり、世界のピンチを救うため奔走する―。という王道のストーリーからは想像できないほど、実に奥深い世界観を持つ『魔法使いの約束』。作家の犬山紙子さん、山崎ナオコーラさんは本作の魅力をどう読み解くのか?
(取材・文=五十嵐 大 写真=山口宏之)
――犬山さんは『魔法使いの約束』(以下、『まほやく』)の大ファンだとお聞きしました。
犬山 私、ツイッターで趣味のアカウントを持っているんですけど、そこのタイムラインで趣味仲間たちが『まほやく』で盛り上がっていたんです。それで一度プレイしてみようと思ったが最後、ハマっちゃいました。ゲームが始まると、最初に、カインとヒースクリフというふたりのキャラクターから「仲間を助けてほしい」「自分たちについてきてほしい」と頼まれるんですけど、そのとき、主人公の意思をめちゃくちゃ尊重してくれるんです。その入り方からして、「おやおや! これは好きだな!」と感じました。
――一方で山崎さんは今回初めて『まほやく』に触れてみて、いかがでしたか?
山崎 プレイヤーに応じて性別が選択できるシステムだったので、試しに男性として遊んでみたんです。するとイケメンキャラが複数出てきたので、「これは女性主人公にしておいた方がよかったのかな?」と思ったんですが、男性主人公でも成立するストーリーなんですよね。そもそも主人公は「賢者様」と呼ばれる。これは性別を問わずに使える呼び方ですし、個人を尊重してくれている感じがして、すごくありがたいと思いました。
犬山 私の場合、ゲームや二次元コンテンツにハマるときって、製作者側の倫理観も一つ大切な要素で。たとえば、どんなに面白いコンテンツでも、差別的な表現やジェンダーギャップを感じる言葉とぶつかると、「うっ……!」とやられてしまうことがあって……それでも好きだったりするんですが。その点、『まほやく』はそういったストレスをあまり感じない。倫理観のないキャラクターも、倫理観のある人が描いているから楽しめる。
山崎 そもそも最初は、登場するイケメンたちに翻弄される感じを楽しむゲームなのかなと思っていたんです。彼らに好かれるように頑張ったり、誰かひとりを選んだりするような。でもそうではなくて、キャラクター一人ひとりの生い立ちを理解しながら、新しい関係を楽しむゲームですよね。
犬山 そうなんです。私の感じる『まほやく』の好きなところは、恋愛至上主義じゃないところ。もちろん解釈によっては「あれ? この魔法使いは私のことが好きなのかな?」と思う瞬間もあります。でも前提として描かれているのは、心と心をつないでいく過程。強引に恋愛にもっていこうとしないので、プレイしていて心地いいんです。キャラクターとの恋愛を想像して楽しみたい人も、そうでない人のことも取り残さないような配慮を感じます。
良い、悪いでは分けられない「価値観の相違」を描く
――『まほやく』に出てくる魔法使いたちは、ときに怖がられ、差別もされてしまうマイノリティとして描かれています。これまで文藝賞や島清恋愛文学賞を受賞したひとりの作家として、山崎さんは『まほやく』のシナリオをどのように受け止めましたか?
山崎 魔法使いは強い力を持っているから、人間たちから恐れられてしまう。でも、そうやって差別されている側の魔法使いたちの中にも、「北の国の魔法使いは怖い」という意識があったりする。そういう小さなエピソードがたくさん出てきて、段々と魔法使いたちの人間味が見えてきます。これって、現実世界を生きる私たちにも言えることだと思うんです。
犬山 『まほやく』は決して人間側の価値観も否定しないんです。『まほやく』の最大の魅力は「価値観の相違」を描いているところだと私は思っていて、どちらが良い・悪いと言い切らずに、相違や歩みよりを描き切っている。これは本当にすごいことだと思います。
山崎 面白いと感じたのは、ゲーム内で育成をしていくと“内気”や“孤独”という特性を獲得していきますよね。普段ならマイナスに捉えられそうな要素を、シナリオを通してプラスのものとして描いていることで、内気や孤独も大事なんだなと感じられる。マイナスな部分さえ肯定してもらえるような気持ちになるんです。
犬山 確かに! そうそう、『まほやく』は孤独の描かれ方も好きなんです。東の魔法使いは孤独を好むという設定なんですけど、ひとりのキャラクターが「みな、孤独を毒のように扱う。だが、毒ならば薬だ」って言うんです。孤独は決して悪いことではないという価値観を見せてくれるのが、好き! もう好きとしか言えません(笑)。
――ちなみに推しの登場人物は?
犬山 私はミスラです。まるで獣のようで、幼い頃から身寄りがなく、死体を運ぶ仕事をしていたキャラクターなんですよ。それゆえにインナーチャイルドを持て余しているというか、時々、すごく幼く見える瞬間があって。チレッタというお師匠さんのような魔女との関係性で泣いたり、彼自身も気がついていない、彼の孤独に触れたときも泣けて……シナリオライターの都志見文太先生の描写も本当に最高で……。ただ、『まほやく』はプレイしていくうちにどんどん推しが増えちゃって、収拾がつかなくなるんです。結局、どのキャラクターのことも好きになってしまうという初めての経験をしました。
山崎 礼儀正しく敬語を使うんだけど、時々タメ語も交ざってしまうカインが好きです。でも犬山さんが仰るように、どのキャラクターも魅力的。「◯◯が一番!」というのがなく、平等さを感じるのはすごく良いですよね。
犬山 それはきっと、一人ひとりのキャラクターの設定がしっかり練られているからでしょうし、「物語を動かす記号として消費させないぞ」という気概も感じます。
若い世代の感性が活きる倫理観が確立されたゲーム
山崎 『まほやく』に出てくる魔法使いたちって、はっきりと何歳とは描かれていないですよね。なんとなく「この人は年上かな」とか「何千年も生きているんだろうな」というのはわかるんですけど、その程度。
犬山 ミスラは1500歳以上なんですけど、それを知ったのはゲームを始めて1年くらい経ってからでした。「え、そうだったんだ!」という情報の出し方をしてくるんですよ。
山崎 そこに現代の年齢差別を少なくしたいという思いが感じられました。
犬山 それでいて、子どもは子どもとして描かれているのもとても良いポイントだと思っていて。リケ、ミチル、シノ、ヒースクリフ、アーサーも子どもなんですが、彼らをちゃんと未成年として大事にしている大人たちの姿を見ると、もう泣けてきます。「子どもは守られるべき」という倫理観が確立されているんです。
――現代の価値観に合わせて作り込まれている『まほやく』から、作家として影響を受けることはありましたか?
山崎 私自身、アップデートしたいと思う部分はたくさんあるんです。容姿にまつわる言葉もそうですし、それこそ年齢についても。『まほやく』をプレイしていると、現代を生きる若者に向けて一生懸命作っているのが伝わってきて、すごく頼もしさを感じます。良い時代が来ているんでしょうね。私も勉強させてもらわなければいけないな、と思います。
犬山 『まほやく』の主人公は、突然異世界に召喚されたものの、魔法使いたちのことを知ろうとしますよね。同時に魔法使いたちも主人公を知ろうとしてくれる。だからこそ、互いに寄り添うことができているんだと思うんです。そんな彼らの姿を見て、今後なにかを書くときは、まず対象のことをフェアに知りたいと思うようになりました。
――ゲームの世界観を楽しみながらも、さまざまな学びがあったんですね。では最後に、『まほやく』未プレイの読者にメッセージをお願いします。
山崎 グッと感動したのは、魔法使いたちが毎年、〈大いなる厄災〉と戦っているという点です。一度倒せばそれでハッピーエンドです、にはならない。仮に物語が終わったとしても、キャラクターたちが抱える問題が解決されるわけでもない。ずっと続いていくんです。まさに人生にも通ずるところがありますし、それを体験させてくれる面白いゲームだと思います。
犬山 じゃあ私は賢者の立場から(笑)。『まほやく』をプレイしていると、自分が尊重されていると感じることが多々あります。そして、魔法使いたちが私たちのなかで生きているとも感じられる。彼らとともに人生を過ごしていくような実感が得られるので、一度プレイしてみてもらいたいです!
あらすじ
魔法使いと人間が共存する世界。その中心となる大陸には5つの国が存在し、その土地柄や人柄は国によって様々。この世界では、空には大きな月が浮かび、人々はそれを〈大いなる厄災〉と呼び、畏怖している。年に一度、その強大な力をふるって世界を襲う〈大いなる厄災〉に対抗し、 “賢者の魔法使い”と呼ばれる選ばれし魔法使い達の戦う日々が、今も続いている。
『魔法使いの約束』(iOS / Android) ジャンル:魔法使いと心を繋ぐ育成ゲーム 料金:基本プレイ無料(ゲーム内課金あり) 公式HP:https://mahoyaku.com 公式Twitter:@mahoyaku_info シナリオライター:都志見文太 キャラクターデザイン原案:ダンミル 世界観監修:かずまこを (c)coly