思わず本が読みたくなる! 「読書にまつわるマンガ」5選

マンガ

更新日:2022/2/4

バーナード嬢曰く。
『バーナード嬢曰く。』(施川ユウキ/一迅社)

 2021年12月20日に、施川ユウキ『バーナード嬢曰く。』(一迅社)の最新6巻が発売された。読書家に憧れるミーハーな女子、バーナード嬢こと町田さわ子を主人公に、本にまつわる話が展開されていく。SFマニアの神林しおり、図書委員でミステリ好きの長谷川スミカ、そして一昔前に流行った本を読むことが趣味で理屈っぽい遠藤くんなど、個性豊かなキャラクターが魅力的だ。本作は2016年にアニメ化もされており、広いファン層を獲得している。SNSではさわ子と神林の友情に注目が集まっている。

 本作のように、読書にまつわるマンガは他にもある。本記事では、『バーナード嬢曰く。』最新6巻の見どころのほか、読書にまつわるマンガを4作品紹介する。

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読書家ではない主人公だからこそ語れるもの

 本にまつわるマンガは数あれど、その主人公が読書家でない設定は珍しいのではないだろうか。『バーナード嬢曰く。』は主人公のさわ子が怠惰な本読みであるという点で、他の作品と差別化が図られている。『読んでいない本について堂々と語る方法』(ピエール・バイヤール:著、大浦康介:訳/筑摩書房)というタイトルずばり、な本もあるが、まさにさわ子は、堂々と読んでいない本について語る。しかも、その切り口は、かなり斜め上の発想からである。この点が、本好きであってもなくても本作が楽しめる要因になっている。

 最新6巻でも、さわ子は堂々と本を読まずに神林に本を貸している。

バーナード嬢曰く。
©︎施川ユウキ/一迅社

バーナード嬢曰く。
©︎施川ユウキ/一迅社

 律儀に本を受け取り、それをポケットに忍ばせる神林だが、あいにく本を読むタイミングがなく、いささか空回りした一日になってしまったようだ。しかし、そんな情景もなんだか味わい深く映る。

バーナード嬢曰く。
©︎施川ユウキ/一迅社

バーナード嬢曰く。
©︎施川ユウキ/一迅社

さわ子と神林の友情にも注目

 最新6巻では4人の関係が濃密に描かれている。特にさわ子と神林の友情に百合的な関係性を見出す読者も少なくない。例えば、神林がル=グウィンの『影との戦い: ゲド戦記 1』(岩波書店)を読んでいるときに、手で影遊びをして邪魔するさわ子の様子が描かれるシーンがある。

バーナード嬢曰く。
©︎施川ユウキ/一迅社

 その時は無視する神林。しかし、別の日にさわ子が読書をしているときに神林は、影遊びで邪魔をする。

バーナード嬢曰く。
©︎施川ユウキ/一迅社

 そして、さわ子の予想外の反応に動揺する神林。

バーナード嬢曰く。
©︎施川ユウキ/一迅社

 この一連のたわむれにほっこりする読者も多かったのではないだろうか。

本好きあるあるネタから文学をテーマにしたマンガまで

今日の早川さん
『今日の早川さん』(coco/早川書房)

 読書にまつわるマンガ作品は他にもある。SF好きであれば『今日の早川さん』(coco/早川書房)は外せないだろう。SFマニアの早川量子をはじめとした本好き女子たちが繰り広げる、「本好きあるある」の4コママンガだ。レア本好きの女の子は、出版社である国書刊行会をもじった「国生(こくしょう)さん」という名前になっていたりと、小ネタが面白い。

児玉まりあ文学集成
『児玉まりあ文学集成』(三島芳治/リイド社)

 2作品目は、『児玉まりあ文学集成』(三島芳治/リイド社)だ。まるで詩のように改行の多い話し方をする文学部部長の児玉まりあと、入部希望者の主人公・笛田くんの間で繰り広げられる文学の構成要素をテーマにした物語。まるで幻想小説を読んだかのような読後感があるマンガだ。

黄色い本
『黄色い本』(高野文子/講談社)

 3作品目に紹介するのは、高野文子『黄色い本』(講談社)だ。名作『チボー家の人々』をただひたすらに読んでいく田舎に住む少女・田家実地子の生活を描いた作品。革命運動を題材とした『チボー家の人々』と、革命とは程遠い実地子の暮らしとの対比で淡々と物語が構成され、強い切実さを感じさせる作品だ。

吉野朔実は本が大好き 吉野朔実劇場 ALL IN ONE
『吉野朔実は本が大好き 吉野朔実劇場 ALL IN ONE』(吉野朔実/本の雑誌社)

 最後に吉野朔実『吉野朔実は本が大好き 吉野朔実劇場 ALL IN ONE』(本の雑誌社)を紹介する。マンガ家・吉野朔実さんの、本との生活を描いたエッセイ漫画。定番の本好きあるあるネタから、本友達である穂村弘氏や春日武彦氏などとの会話も描かれている。単行本として別々に出版されていた読書エッセイ漫画を一冊にまとめた分厚い本であるが、ずっと読んでいたくなるほど魅力的な作品だ。

 本にまつわるマンガには、笑えるものから物語形式のもの、エッセイまで色々なものがある。余談だが、読書にまつわるマンガ作品には必ずと言っていいほど、就寝時に本を読むときの姿勢の話題が出てくる。この問題についての最適解はまだ出ていない。

文=村治けい