佳原萌枝「変身願望から声優に。私にもできることがあると気づきました」【声優図鑑】
公開日:2022/2/7
キャラクターの裏に隠された自分自身をありのままに語る、ダ・ヴィンチニュースの恒例企画『声優図鑑』。第280回目に登場するのは、TVアニメ「現実主義勇者の王国再建記」トモエ・イヌイ役、「処刑少女の生きる道(バージンロード)」の時任灯里役などを演じる佳原萌枝さんです。
子どもの頃は自信のなさから変身願望が生まれ、声優を志すようになったとか。学生時代はできないことばかりだったけれど、声優の専門学校でがむしゃらに頑張るようになってから、「自分にもできることがある」と実感したそうです。
自分とは真逆の戦う女の子に憧れていました
——今日は私服でお越しいただいているのですが、ファッションのポイントは?
佳原:せっかくいい写真を撮ってもらえるなら、気に入った服を着ようと思って、試着をして一目惚れで買ったジャンパースカートを着てきました。ベレー帽もお気に入りで、ヘアアクセとどちらを合わせようか迷ったんですけど、メイクさんに相談してベレー帽に決めました。ピアスは、普段の収録だとぶら下がるタイプは音がしてしまうので控えてるんですけど、今日はせっかくの撮影なのでつけてみました。
——いつもは一目惚れしないほうですか?
佳原:そうですね。本当に必要かなってよく考えるほうですが、今回は「絶対にほしい!」と即決でした。悔いはないです(笑)。
——小さい頃から戦う女の子に憧れていたそうですが、ご自身はどんなタイプの子どもでしたか?
佳原:たくさんのお友だちとワーっと遊ぶのは得意ではなかったので、おばあちゃんから教わった編み物をしたり、折り紙や本をひとりでじっくり楽しんだり、室内で過ごすことが多い子どもでした。
——憧れつつも、実際に戦って遊んでいたわけではないんですね。
佳原:人見知りが激しくて、自分では周りの子たちに混ざっていけないタイプだったからこそ憧れていました。ひとりで遊ぶのが好きだったということもあります。自分とは真逆のタイプに憧れて、変身願望が強くなった結果、声優のお仕事につけているのかなと思います。
——どんな変身願望でしたか?
佳原:自分じゃない何者かになりたい、と思っていました。劣等感や自己評価の低さからきていたのかなと思います。自分の見た目に関係なく演じられる声優ほど魅力的な仕事はないな、と感じていました。
——高校1年の時に声優の専門学校に入学していますね。どんな高校時代でしたか?
佳原:中学の頃に体が丈夫じゃなくて、出席日数が足りなくて普通科の高校に進めなかったんです。それで、せっかくならやりたいことを学ぶために進学したいと思って、高等専修学校に進みました。生活のことや家事が全然できなくて、やりたい気持ちはあるのに両親の足を引っ張っていたので、私は将来、普通のお仕事につくのが難しいのかもなってずっと悩んでいたのもあります。だから学べるものは全部学ぶぞ!っていう気持ちで、当時は今よりとがっていたなって思います(笑)。
——教科と専門技術2つ同時に学ぶのは大変そうですね。
佳原:大変でしたが、気持ちは充実してました。学校で最初にミュージカルを教わったんですが、「下を向かないで」と先生から注意されることがすごく多くて、人前に立つのが苦手だったのが、ミュージカルの経験で鍛えられました。自分には何もできないと思っていたけど、やりたいことを見つけて「誰にも負けないぞ!」って頑張っているうちに、私にもできることがあるかもしれない、と思えるようになりました。それからは、怖がらずにいろんなことにチャレンジできるようになったと思います。
——どんなことにチャレンジしていたんですか?
佳原:やってみないとわからないから、声優の勉強以外に、音楽や歌、ダンスといろいろ試しました。高校1年の時、オーディションをきっかけに初めて作詞作曲をして、曲作りに興味を持ちました。楽器の経験がなかったのでアコースティックギターを買って、友だちにコード進行を聞いたりしながら独学をして。この前、『ラジオどっとあい』で自分で作った曲を公開する機会があったんですが、高校時代の経験が思わぬ形で生かされたんだなあと感慨深かったです。
苦手意識のある歌ものびのびと歌えました
——『サクラ革命 〜華咲く乙女たち〜』咲良しの役では、初めてのキャラソンに挑戦していかがでしたか?
佳原:歌は好きですけど、苦手意識があったんです。メロディがすごく細かくて難しかったんですが、「今の声は良かったから、さらにこうしてみよう」とスムーズに誘導していただいたおかげで、いい仕上がりになったと思います。
——歌に苦手意識があったんですね。
佳原:カラオケではのびのびと歌えるんですけど、人前で歌うと緊張してしまって、レッスンやオーディションでも、周りに聞かれていると思うと緊張で喉がしまって思うように声が出ないんです。だからこの時、不思議なくらいのびのびと歌えたのは周りのみなさんのおかげだと思ってます。人前で生で歌を披露する機会もいただいて、やっぱり緊張はしますけど、歌うって楽しいことだし、楽しむことでのびのび歌えることに気づけたのが、なによりの収穫でした。
——『現実主義勇者の王国再建記』では初のテレビアニメのレギュラーとして、トモエ・イヌイ役を演じています。
佳原:コロナ禍でスタジオオーディションがないまま、提出した音声で決めていただいた役だったので、最初の現場に行くまで実感がないほど驚きが大きかったです。現場で初めて先輩方にお会いして、今まで憧れていた人たちだ!と(笑)。オーディションで考えていったイメージそのままで演じさせていただいていることも、うれしいことだなと感じています。
——ラジオではパーソナリティを担当されていますね。
佳原:人生初のラジオです。初めてのレギュラーでラジオまでやらせていただくのは、ほんとに恵まれてるなあと思います。このご時世なので、収録でお会いできないキャストの方もいたので、ゲストとしてお呼びしてお話できるのは貴重だなと思います。
——初めてのラジオでのおしゃべりはどうでしたか?
佳原:先輩と小林裕介さんとご一緒できて心強かったです。私はよく笑うほうで、「笑いすぎ」「へらへらするな」って怒られることもあるんですけど、ラジオでは「その笑い声がいい」って言ってもらえて。それもあって、緊張はしますけど楽しくおしゃべりできています。
——2022年放送予定のTVアニメ「処刑少女の生きる道(バージンロード)」ではヒロイン役ということで、収録はいかがですか?
佳原:私が演じさせていただく時任灯里ちゃんは、基本的には天真爛漫で能天気な感じの女の子なので、表情がコロコロ変わるのがかわいいですね。主人公のメノウとの関係性が独特なので、メノウ役の佐伯伊織さんと、収録中もいろいろと相談しながら演じています。
——佐伯さんとの息の揃ったお芝居も見どころですね。
佳原:2人が同時にセリフを言う場面があって、短いシーンなので「うまくできるといいね」って話していたんですけど、実際の収録は別々の部屋だったんです。直接隣で呼吸を合わせたかったんですけど、仕上がりを聞いたらぴったりと合っていたので、すごく気持ちがよかったです。佐伯さんとは普段もゲームの話で意気投合したり、ボイスチャットをしたりして、距離が縮まるたびに掛け合いの距離感も変わっていくのかなと思います。
末長く役者でいたいし、自分磨きを怠りたくない
——お休みの日はどのように過ごしていますか?
佳原:前の日に夜更かしをしてしまうので、夕方まで眠いですね(笑)。前日にゲームをしたり、YouTubeを観たり、思い出したように本を読み返したりして知らないうちに明け方になっているので、もっと有意義に過ごせたんじゃないかと思うこともあります(笑)。夕方に起きてからも、同じように本を読んだりYouTubeを観たり。でも朝早く起きた日は、歩くのが好きなのでよく散歩をします。人がたくさんいる場所は得意じゃないので、ひとりで過ごすことが多いです。
——最近の夜更かしでおもしろかったことは何でしょう。
佳原:最近はゲーム実況を見ることが多いのですが、プレイがカッコ良かったり、ストリーマーさん同士のやりとりも面白くて。よくYouTubeの長時間配信をBGMのように流しています。
——本を読み返す時は、どんなものが多いですか?
佳原:小説が多いのかな。最近だと『銀河鉄道の夜』を。1年に1度は読み返しているかもしれないです。抽象的な表現も多いので、時間が経ってから読み返すと印象が変わるのがおもしろくて。推理小説やミステリーも「これ伏線だったのか」って気づくことがあるので、読み返すのが好きです。
——最近食べておいしかったものを教えてください!
佳原:油そばにはまってます。油っぽいのかと思っていたら、そんなに重たくなくて、たっぷりのお野菜と一緒に食べたりします。途中でラー油やお酢を入れて味を変えたりとか。お店は決まってないけど、ラーメン屋さんとか牛丼屋さんにもひとりで行っちゃいます。
——頑張っているご褒美に何でも買っていいと言われたら、何がほしいですか?
佳原:今、パソコンがほしいんです。ノートパソコンは持ってますけど最近調子が良くないので、新しく買うなら、そこそこスペックが高いゲーミングPCがほしいなと思ってます!
——これから、どんな声優になっていきたいですか?
佳原:自分ではない何者かになりたい変身願望からこのお仕事を目指したこともあって、やっぱり芝居がしたいし、末長く役者でいたいです。今は自分も人前に出ていく機会が増えているので、自分磨きも怠らず、歌もしっかり勉強したいし、これまで学んできたダンスを生かす機会もあったらいいなと思います。いろんなことにチャレンジしたいです。
——演じてみたい役柄はありますか?
佳原:子ども向けのアニメに出演するのが夢なので、子どもたちが目をキラキラさせて観てくれるような、人間的で憧れの的になるようなキャラクターをいつかは演じてみたいですね。
——読者のみなさんにメッセージをお願いします。
佳原:最後まで読んでくださってありがとうございます。これからもっと幅広く活躍できるようにがんばりますので、これまで応援してくださった方、新たに私を見つけてくださった方、佳原萌枝をよろしくお願いします!
——佳原さん、ありがとうございました!
次回の「声優図鑑」をお楽しみに!
佳原萌枝
◆撮影協力
撮影=山本哲也、取材・文=吉田あき、制作・キャスティング=吉村尚紀「オブジェクト」