10年ぶりに触れた名作が、改めて教えてくれたこと。映画『天空の城ラピュタ』/ReoNa「あにめにっき」

アニメ

公開日:2022/2/8

『ソードアート・オンライン』シリーズなど、数々のアニメ作品の主題歌で印象的な楽曲を届けている「絶望系アニソンシンガー」ReoNaさん。彼女の表現の根底には、自身を救い支えてくれた、アニメへの深い感謝と熱意があります。同時に、関わり触れ合った周囲の人に広く愛されるのも、彼女の魅力。クリエイター、アーティスト、メディア――さまざまなジャンルから「ReoNaに観てほしいアニメ」をレコメンドしてもらい、ReoNaがレビューする「あにめにっき」、スタートです!

ReoNa「あにめにっき」

ダ・ヴィンチニュースをご覧のみなさん、こんにちは。
絶望系アニソンシンガー・ReoNaです。

これから始まるReoNaの「あにめにっき」では、作品や楽曲でご一緒させていただいた方、普段お世話になっている方からレコメンドしていただいたアニメ作品を観て、受け取った想いを綴ります。
第2回にお届けするのは、『ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン』でご一緒させていただいた小説家・時雨沢恵一先生がオススメの、映画『天空の城ラピュタ』です。

 

レコメンダー時雨沢恵一 推薦コメント

 宮崎駿さん監督作品でマイベストです!

 この作品を14歳の時に劇場で観たから、今の時雨沢がいると言っても、あんまり言い過ぎではありません! このアニメを観て以降、アニメ雑誌を毎月必ず買うようになり、アニメオタクへの修羅の道を、一歩ずつ進んでいったのです。

 私の過去はさておき――、本当に良くできた冒険活劇です。何度見ても、ドキドキワクワクします。今でも時々見直しては、14歳の頃を思い出しています。

 これからもこの作品が、たくさんの少年少女に刺さることを期待して止みません。

土の恵みで生きている私たちは、土から離れては生きていけない。

スタジオジブリ 宮崎駿監督 『天空の城ラピュタ』。
小さい頃、何度も観た長編映画。
いざ振り返ると、こうして全編通して観るのは10年ぶりくらいでした。
「懐かしい」と感じられる部分は沢山あったけれど、昔観た印象とはかなり違っていて。

まず感じたのは、画面いっぱいに広がる世界のきめ細やかさ。
小さい頃は当たり前のように享受していた情報の多さ。
描かれるもの全てに意味が込められていて、小さな仕草ひとつひとつから画面の中に息づく登場人物たちがこの世界の中で「生きている」ことを感じられる。
「目は口ほどにも物を言う」ってこういうことなんだ。
喜び、悲しみ、驚き、怒り、慈しみ、労り、憂い、決意。
目が宿す光の強さや、笑って下がる目尻、睨むようなきつい眼差し。
それだけ沢山の情報が組み込まれているのに、流れるように次のシーンや行動に繋がっていく。
その中でも私が特にドキッとしたのは、シータがおさげを振り払う動作。
瞬間、世界の中に生きている「シータ」という少女を空から覗き見ているような気持ちになりました。

そして観ていくうちにどんどんハッキリしていく科学と自然の対比。
緑の豊かさや咲き誇る花、生き物の愛らしさと、そんな自然たちを一瞬で燃やし尽くしてしまう、人の命すら簡単に毟り取れてしまう兵器の恐ろしさ。
小さい頃には気が付かなかった、ロボット兵たちの切なさと恐ろしさ。
自然と共にある時は鳥の卵を守ろうとしたり、キツネリスと戯れたり、花を手向けたり。
穏やかに暖かく見える。
それとは対照的に、いざ人を傷つけよう、戦おうとした瞬間に一転してとても怖いものに見える。
出来る事なら彼らがもう何とも戦わずに、あの大きな木の幹と一体に朽ちて逝ける事を願わずにはいられませんでした。

主題歌“君をのせて”
作中、何度も音色を変え、形を変えて登場する印象的なメロディ。
幾度となく、色んな所で耳にしてきた楽曲ですが、作品を観た直後の余韻とともに受け取るとやはり聴こえ方も少し違うように感じます。

記憶に強く残る名シーンや名台詞が散りばめられていて、その印象が強い人も多いのかな?と思いますが、そのひとつひとつにそこに至る経緯があって。
まだ観たことがない人は勿論、私自身もそうだったように、断片的に物語を知っている人や遠い過去にこの物語を観たことがある人にこそ、改めて観てほしい作品でした。

【レコメンドして下さった時雨沢恵一先生へ】

時雨沢先生にお勧めしていただいた作品、と言うことで、やはりいつも以上に“銃撃戦”のシーンに注目しての鑑賞になりました。
意識を注いで観てみると、開幕以降ありとあらゆる場所で戦っているんだな……と、驚きでした。
それなのに「戦い」がメインというイメージは観終えても全く無く。
あくまで、少年少女の冒険譚。
巻き起こる争いや諍いにもそれぞれ意味があるからこそ、小さい頃の私も気にならず観れていたんだな、と。
そして、昔はただ「ひどい」「こわい」「がんばれ」「おもしろい」だけだったシーンも、歳を重ねてまったく違う感想が浮かぶんだなぁ、と、新発見の連続でした。
きっと最後の「3分間だけ待ってやる」も、よくよく観ると実は銃に起因したセリフなのではないかな、と今回観て感じました。
素敵な作品にもう一度触れる機会をいただき、ありがとうございました…!

<第3回に続く>