思い通りにいかない人生。でも、意図しなかった未来にも“幸せ”がある/がんばらないことをがんばるって決めた。
公開日:2022/2/10
ついついがんばりすぎてしまい、自分のことをおろそかにしていませんか? ストレスの多い現代社会を、もっと楽に生きたいと思う人は多いのではないでしょうか。
「今日も会社に行けなかった。まあいいか。生きてるし。」
今回ご紹介するのは、そんな等身大のつぶやきで「いいね」を15万以上獲得した、考えるOLさんの『がんばらないことをがんばるって決めた。』です。
考えるOLさんの共感を呼んだ投稿と、書き下ろしエピソードを満載したエッセイは、優しい言葉とエピソードが詰まった、がんばりすぎてしまうすべての人の心に響く1冊です。疲れている人ほど本書『がんばらないことをがんばるって決めた。』を手に取ってみてください。
※本作品は著:考えるOL、イラスト:おさつの『がんばらないことをがんばるって決めた。』から一部抜粋・編集しました。
意図しなかった未来にも幸せはちゃんとあるよ
〝人生って、こんなにも上手くいかないんだな。〟
初めてそう思ったのは、同級生よりもだいぶ遅く就職活動が終わった大学4年生の冬頃だった。夢を諦めて、別の業界での就職を決めたときのことだ。
私が夢を持ったのは高校1年生のときだった。音楽に携わる仕事がしたいとずっと思っていた。ただそれだけを人生の道しるべにして進んできた。
道しるべを失った瞬間、これまでのすべてが無意味だったように思えて、急に全身の熱が冷めていくのがわかった。応援してくれた人たちへの申し訳なさ、期待外れの自分。ただ絶望の淵をゆっくりゆっくり彷徨うしかなかった。
なんでこんなにも真面目に生きてきたのに、上手く幸せになれないんだろう。
「この大学に入った意味、なかったかも。」
久しぶりに会った大学の親友に、こんな言葉をぽつりとつぶやいてしまった。すると彼女は地面に目線を落とし悲しそうな笑顔で、こう言った。
「……でもさぁ、こうして私たちが出会えたからいいじゃん?」
そのとき、はっとした。
選べなかった人生をいつまでも悔いて、自分勝手な言葉で〝今〟目の前にある幸せを自らの手で傷つけていることに気がついた。
同時に、内定先に入社するか迷い、彼女に相談したときの言葉を思い出した。
「それは私が決めることじゃない。君が決めることだ。」
すこし突き放したように思える言葉だったけど、私をなだめる都合のいい甘い言葉でご機嫌を取るのではなく、私にとって本当に必要なことを、まっすぐな言葉で教えてくれた。そんな誇るべき友人に出会わなくてもよかった、そうとも捉えられる言葉で、彼女の顔を悲しく曇らせてしまった。
そういえば、私は第一志望の大学にも入れなかった。
だからこそ、悔しくてこの学校に入ってよかったと思える努力をしようと思った。内気で臆病な自分を変えようと、誰かの役に立とうと、学生支援をずっと続けていた。その先で、彼女に出会えた。
目の前にいる親友の言葉は、いつも私への想いがこもった淀みのない言葉だった。それだけで、私が歩いてきたこの道の意味が確かに生まれていた。
夢がひとつ叶わなかっただけで自分の人生は失敗だと決めつけ、勝手に不幸に落ちていた。というより、不幸を言い訳にして、これからの人生を怠けたいだけだったのかもしれない。
きっと思い通りに人生が進んでいたとしても、目の前の幸せを素通りしているならば、満ち足りた人生を歩めていた保証なんてなかったんだ。
大人になるにつれて、選べなかった人生がどんどん増えていく。この先は、もっともっとたくさんの選択が待っている。きっと初めから正しい道なんてどこにも存在しない。進んだ道の上に転がっている幸せを見つけては、優しく拾い上げて生きていけばいい。
希望は叶わなかった。それでも、意図しなかった未来にも幸せはちゃんとある。あの日、彼女の言葉で確かな幸福に気がつけたように。