【今年注目の作家・マンガ家さん】2022年目が離せない! 編集部おすすめの推し本

文芸・カルチャー

更新日:2022/2/7

ダ・ヴィンチニュース編集部推し本バナー

ダ・ヴィンチWeb編集部メンバーが、月ごとのテーマでオススメの書籍をセレクトする、推し本“+”。2月のテーマは、これからさらに話題になりそう、新作が楽しみ! な「今年注目の作家・マンガ家さん」です。

鈍器本『奇奇怪怪明解事典』(TaiTan、玉置周啓/国書刊行会)

『奇奇怪怪明解事典』(TaiTan、玉置周啓/国書刊行会)
『奇奇怪怪明解事典』(TaiTan、玉置周啓/国書刊行会)

 注目の作家は大前粟生さん、マンガ家は、昨年推し本にも挙げた『しあわせは食べて寝て待て』の水凪トリさん、和山やまさん(もはや好きの最上級)なのですが…。変化球で『奇奇怪怪明解事典』(国書刊行会)のTaiTan(Dos Monos)さんと玉置周啓(MONO NO AWARE)さんを挙げたいと思います。本書は、日常の違和感や社会現象、本や映画などのエンタメ作品をフックに、言葉の感度が高く事象に敏感な2人が対話するSpotifyの人気番組を書籍化したもの。小説やエッセイを音楽活動のアウトプット(LPの冊子など)にのせて発表することが多い玉置さんに、ラッパーとして言葉を自在に操り、コラム寄稿なども行うTaiTanさんと、本業はミュージシャンだけれど、彼らから発露される時に鋭利な言葉や文章に注目です。
(中川寛子/ダ・ヴィンチWeb副編集長)


近未来SFロボ好きの琴線に触れる新たな才能!『スノウボールアース』(辻次夕日郎/小学館)

『スノウボールアース』(辻次夕日郎/小学館)
『スノウボールアース』(辻次夕日郎/小学館)

 巨大ロボットに乗り、謎の怪獣と戦いながら凍結した地球の謎を明らかにしていく物語。主人公・鉄男は友達がいない内気な少年だが、いざロボットのコックピットに座った時に見せる姿がカッコよく、読んでいて気持ちがいい。鉄男は某新世紀アニメの主人公と内側も外側も似ているし、設定や世界観にも既視感がある。でもそれらの要素が絶妙なさじ加減で使われているので、最近あまり思わなくなった「続きが気になる!」という興奮をくれた。作者・辻次夕日郎さんのデビュー作とのことで、ぜひこの勢いのまま楽しませてください!
(坂西宣輝)


この鳥肌は、何の鳥肌だろう……『タコピーの原罪』(タイザン5/集英社)

「これは、ぼくときみの最高にハッピーな物語」というキャッチコピーから始まる『タコピーの原罪』は、タコ型異星人(?)タコピーと小学生の女の子の交流譚(?)だ。地球の倫理観が分からないタコピーと、虐待といじめの被害者だったはずなのに、事態を後戻りできない方向へ転がしていくしずかちゃん。登場人物がみな少しズレていて、異常なのにそれもアリに思えてきたり、恐ろしいのにほっこりしてしまったり、展開と感情が連動しない、不思議な乖離にゾワッとした興奮を覚える。著者のタイザン5氏が描く世界は、きらきらしていて残酷で、ファンタスティックなのに身の毛がよだつほどリアルで目が離せない。このあと、タコピーはどんな体験をして、みんなはどうなってしまうのか。「短期連載」らしいが、氏が描く結末をドキドキして待ちたい。
(遠藤摩利江)



2人の「すごい」高校生がお笑い界のてっぺんを目指す『ショーハショーテン!』(浅倉秋成:原作、小畑健:漫画/集英社)

『ショーハショーテン!』(浅倉秋成:原作、小畑健:漫画/集英社)
『ショーハショーテン!』(浅倉秋成:原作、小畑健:漫画/集英社)

 本屋大賞2022ノミネートの『六人の嘘つきな大学生』を読んで以来、浅倉秋成さんの作品をコンプリートすべく、少しずつ読んでいる。『教室が、ひとりになるまで』で高校時代の思い出をかみしめ、『九度目の十八歳を迎えた君と』ではアラサーに戻って高校時代を思い返す切なさを追体験した。そんな浅倉さんがマンガ原作を手がけている本作。「日本一面白い高校生」と元天才子役がお笑いコンビを結成してお笑い界のてっぺんを目指す、王道の少年マンガ。この王道さ加減が素晴らしい。そして、作中に登場するお笑いのネタも面白い!(とはいえ私が1巻で一番大笑いしたのは、畦道のお父さんのリアクションでした)これからの展開が楽しみすぎる作品。
(宗田昌子)


「元アイドル」ではない視点で読んでほしい秀作『シナプス』(大木亜希子/講談社)

 AKBグループの一員として、NHK紅白歌合戦への出場経験もあるという、大木亜希子さん。前著の『人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした』も注目を集めた。4話のエピソードを収録した新作小説『シナプス』は、「元アイドル」という視点を一切抜きにして読んでほしい秀作だ。芸能活動と並行してコラムサイトの編集・営業をしていた、という経歴を見て納得。転機をとらえ、自身に変化を課しながら突き進む人なんだろうな、と感じる。大木さんが鮮やかに描く人間の心のありようを、もっと読みたい。
(清水大輔/ダ・ヴィンチWeb編集長)