【5分でわかる!】幸福度が高い暮らしの秘訣は、仕事の効率と上手な休み方『フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか』

ビジネス

更新日:2022/2/17

ロングセラーや話題の1冊の「読みどころ」は? ダ・ヴィンチWeb編集部がセレクトした『フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか』(堀内都喜子/ポプラ社)の書籍要約をお届けします。

フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか
『フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか』(堀内都喜子/ポプラ社)

▼この本を読んで欲しいのはこんな人!

毎日仕事に追われて残業ばかりで疲弊している人
ライフワークバランスを充実させたい人
フィンランドの文化や価値観に興味がある人

▼3つのポイント

要点1:フィンランド人は仕事以外の時間も大切にしているので、効率的に働く。国全体でも「ウェルビーイング」な環境作りに力を入れている。

要点2:よく働くためにはよく休む。夏休みは1年のうち1か月。しっかりと仕事から離れることでリフレッシュし、驚くほどのパフォーマンスを発揮するのだ。

要点3:シンプルを好み、心地いいという意味の「ムカヴァ(mukava)」という価値観が、フィンランド人の思考と日常を作っている。

▼著者プロフィール
堀内都喜子(ほりうちときこ)
長野県生まれ。大東文化大学国際関係学部を卒業後、フィンランドへ留学。フィンランド・ユヴァスキュラ大学大学院ではコミュニケーションを専攻し、修士号を取得。日本に帰国後はフィンランド系の企業で勤務しながら、ライターや翻訳者としても活動。現在はフィンランド大使館で広報業務に従事。
本書は「幸福度ランキングで世界1位」のフィンランドで、自身が経験した日々の生活や気づきを読者と共有し、読者の思考の変化や生活の見直し、新たな発見になることを願って執筆した。本書で、読者が選ぶビジネス書グランプリ2021イノベーション部門賞を受賞。
著書に『フィンランド 豊かさのメソッド』(集英社)。翻訳作品に『チャーム・オブ・アイス~フィギュアスケートの魅力』(サンマーク出版)。

幸福度ランキング世界一の国フィンランドは「ゆとり」と「自由」がある

 2018年から4年連続で幸福度ランキング世界一になったフィンランド。一方私たちが暮らす日本は、2018年に54位、2021年には56位……50位台にある。一人当たりのGDPでみると、フィンランドは日本のおよそ1.25倍もある。

 幸福度ランキングの中で上位にある国は、手厚い社会保障、質の高い教育に、ジェンダーギャップや経済格差が少ないと言われている。もちろん日本もこれらの水準は比較的高い。それでもフィンランドと日本でランキング差が生まれる違いはどこにあるのだろうか。

 大きな違いの一つは「選択肢の自由度」である。フィンランドでは勉強や就職、結婚、出産など人生の場面において本人の事情や希望、ニーズに応える選択肢があり、年齢、性別、家庭の経済状況などの格差がない。2016年のユニセフのレポートによるとフィンランドは世界で2番目に格差が少ないことがわかる。とはいえ、ここまでの道のりが順調だったわけではなく、国が変革を成し遂げたのは、第二次世界大戦での敗戦や1990年代の経済低迷を迎えて大量の失業者を出した事など困難がきっかけだったのだ。

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心地よいゆとりを作るには、効率よく働くこと

「幸福度」を高く感じるフィンランド。その暮らしぶりにはどこか「ゆとり」がある。「心地よい働き方」を大切にしているからだ。朝8時には働き始め、16時には帰り、残業はほとんどしない。そして仕事以上にしっかりと休む時間を大切にしている。これは国全体の常識、「人は人、自分は自分。規定の時間を働いたら帰るのは当然」と考えているのだ。

 早く帰宅するためには効率の良い働き方も重要で、柔軟な働き方も積極的に取り入れている。国が1996年に就労時間に関する法律を施行したことが影響して、働く場所や時間がより柔軟になったのだ。そのため時短勤務を認めている企業も多い。また働く場所については最近フリーアドレススタイルを導入する企業が増えた。さらには積極的に休憩を取り入れることも促し、コミュニケーションや環境など、各々が静かにマイペースで仕事ができる環境を作ることで、仕事の効率を上げ、結果的に早く帰宅することができる。「ウェルビーイング」な環境はこうしてフィンランド全体で作り上げられている。

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「よく働くためにはよく休む」余暇を大切にするフィンランド人

 効率よく働き、余暇を楽しむフィンランド人。「仕事が好きだし、責任持って取り組みたいけれど、それ以外の時間も大切にしたい」という考え方があるからだ。仕事の時間以外には、家事をしたり趣味を楽しんだり、スポーツに励んだり、生涯学習に通って勉強したりする。会社も福利厚生の一環として、仕事以外の活動や趣味を金銭的な面で支援している。

 余暇を楽しむためにはしっかり休むことも必要だ。定時で帰宅するほかに、長期休暇もきっちり取る。有給休暇消化率はほぼ100%であり、夏休みは1か月ほど。つまり1年は11か月働くもの、という考え方だ。心身リラックスするためにしっかり休むことで、その後の仕事のモチベーションや、心身の健康、ウェルビーイングを保つことができるのだ。

 そんなに休んでしまったら仕事に戻れなくなるのでは?と思う人もいるかもしれないが、心身共にリフレッシュしたフィンランド人は驚くほどの集中力でバリバリ仕事をこなしていく。こうしたリフレッシュ効果を生む良い休みの取り方は、仕事から頭を切り替えること。フィンランド人が旅行へ行ったり、コテージでのんびり過ごすのはベストな過ごし方なのだろう。

世界も注目する「シス」が根付いたフィンランド人の思考

 フィンランド人に昔から根づいている思考である「シス(SISU)」が近年海外諸国で注目されている。シスはフィンランド語で、困難に耐えうる力、努力してあきらめずにやり遂げる力、不屈の精神、ガッツといった意味合いがある。2018年のBBCの記事内では、「シス」は、日本語の「頑張る」と通ずるものがあると書かれている。一見すると近しいように感じるが、日本人が「頑張る」という言葉を日常的に使用するのに対して、フィンランド人はこの「シス」を使うことは多くない。2004年に当時ノキアのCEOだったヨルマ・オッリラが、会社の精神についてシスを用いて紹介したことがあったが、このように精神論として紹介される場面や、人々が言葉ではなく行動で体現することはあるようだ。

 ただ、自分の人生や日々にシスを感じることはある。それがあるからこそ仕事も、家庭も、勉強も、趣味も貪欲に追い求めて勤しむのだろう。「〜だから、しない」ではなく、「〜をしたいから、する」というポジティブで貪欲に生きる姿を体現するシスは、厳しい時代を過ごし、独立国家としての国力を高めるために長期的に困難に立ち向かう気持ちや、あきらめない気持ちの土台としてあったのだろう。

シンプル思考「ムカヴァ」を取り入れたライフスタイル

 日常の生活にフォーカスしてみると、どちらかというと「シス」よりも、心地いい、というフィンランド語「ムカヴァ(mukava)」が日常で多く感じられる。フィンランド人は、仕事や家庭、勉強に貪欲でもどこかリラックスした空気が流れているのだ。

 そのライフスタイルは、衣食住全てがシンプルだ。必要最低限のものを持ち、余計なものは置かない。もちろん働き方においてもシンプルだ。さっと通勤し、効率よく働き、人付き合いも過度に共感せず、一歩引いた人間関係を作ることで、相手に自由な時間と空間を与えている。こうしたシンプルで心地よさを求めるライフスタイルを持つことが今のフィンランドを育んできたのだ。

働き方改革真っ最中の日本人が考えたいこと

 日本とフィンランドはもちろん人口規模や制度・文化も違うが、人々の日々の営みや幸せ、人生の価値観はそれほど大きく違うものではないだろう。

 ただ、フィンランドはその欲求を正直に他の人とオープンに語ることが許され、その分相手の欲求も許容する寛容さがある。

 日本も現在働き方改革の議論が進んでいて、大きな転換期が来ている。まずは自分の生活を振り返ることや意識を少し変えること、一人ひとりが寛容さを持つことが必要ではないだろうか。

文=永見薫

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