豆腐も野菜も取れる「白あえ」。すり鉢を使わず簡単にできる方法って?/その下ごしらえ、ホントに必要?
公開日:2022/2/23
白あえって、とてもいい料理だと思うの。
泡立て器で作れば簡単だからぜひやってみて。
松本 私、白あえってとっても良い料理だと思うんですよ。お豆腐もたっぷり取れるし、野菜も取れるし。でも、とても手間のかかるお料理の一つなんですよね。
野田 僕は白あえって作ったことないです。
松本 私が学生だった頃、先生が「本当の白あえを作りましょう」と仰って作ったことがあるんです。衣に使うゴマを「磨く」ところから始めたんですよ。水の中でゴマを両手ですり合わせていると、ゴミや残っていた薄皮などが取れてくるんです。それを磨くって言うんですね。
そうやってきれいにしたゴマを焙烙で炒るんですね。ゴマは油が多いので、フライパンだと焦げちゃうの。それで焙烙で気長に炒って、すり鉢でするんです。油がにじみ出るまですったゴマを裏ごしして、それにさらしをかけてもう一度裏ごしするんです、お豆腐も。裏ごしだけではまだつぶつぶだから、さらしをかけて裏ごしをするとホントになめらかでふっくらした衣ができるんですね。
野田 美味しそうですけど、ちょっと大変ですね。
松本 「あえもの」というのは、このあえ衣とお野菜などの具を別々に作って、冷ましてから合わせるんです。それが原則なんですね。だから、野菜は煮て冷まし、そのあとでお豆腐の衣と合わせる。それを温かいまま合わせたりすると、よく言えばコクがある、悪く言えばくどい味になります。
野田 温かい段階で混ぜるのは違うということですね。
松本 面白いことに、冷たいもの同士を合わせるとさっぱりした感じになるんです。味の行き来がないからかな、とも思うんですけど。
例えば五目ずしってかなりいろんなものが入ってますでしょ。でもさっぱりしてますよね。なぜか冷たいもの同士を合わせるとくどくないんですよ。だけど、具材をそれぞれ作ってから冷まして合わせて、なんて手間は何倍もかかるけれどお料理としては一品しかできないでしょ。そういう意味で、白あえは最も面倒な料理だと思うの。
野田 それで簡易版の白あえを考えられたんですか。
松本 それは私が考え出したことじゃないんです。まず、どうしてすり鉢ですって裏ごしにかけるかというと、すり鉢ですると空気が入るんですね。それから裏ごしにかけても空気が入る。そうするとふっくらするんですよ。
そこで、新しい料理法をいろいろ提案された滝口操先生が、「空気を入れてふっくらさせるのが目的だったら、泡立て器でお豆腐を混ぜてもいいんじゃないか」って。やってみたら確かにふわっとするんです。ボウルにお豆腐入れて泡立てるだけで簡単なの。そのかわりちゃんと作った白あえのようなねっとりした感触はないんですよ。かなりさっぱりとしてる。ただ若い人なら、こっちの方が好きな人も多いみたいですね。白あえというより豆腐あえという方がいいでしょう。
野田 その場合、ゴマを炒ったりとか、ゴマをすり鉢でするという工程は?
松本 そういう大変なことはせずに、市販のすりゴマを使います。お豆腐にすりゴマを入れて泡立て器でがちゃがちゃっとやって、そして野菜を煮て冷やしておいたのを合わせて。
野田 ちなみに何の野菜で白あえを作られますか。
松本 ニンジン、サヤインゲンやコンニャクが多いですね。人によっては果物、パイナップルとか入れる人もいますしね。バナナやりんごも美味しいし。お豆腐が淡泊だから、結構いろんなものと相性がいいですよ。サツマイモを煮たのでもいいし。
野田 葉物のイメージしかなかったです。
松本 葉物なら、ほうれん草でも小松菜でもいいですしね。なんでも合うと思います。
私は以前から、白あえはいいお料理なので、面倒だからという理由でやめてしまうのは惜しいなあと思ってたんですね。そうしたら先ほどの滝口先生に「泡立て器でやったら意外と美味しい」って教えて頂いて。若い人には「そちらだったら作るけど、すり鉢出してきて作るんだったら作りません」って言われたの(笑)。
野田 すり鉢を持ってない人も多いでしょうしね。味付けは、塩とおしょうゆですか?
松本 「白あえ」というくらいですから、白く作りたいですよね。だからあまりおしょうゆは入れたくないでしょ。だけどお塩だけだともの足りないので、おしょうゆをぽたぽたっと落とします。おすましと一緒ですね。お塩で味を付けておしょうゆで香り付けをするとか。白い料理なので、なるべく色が付かない感じで、あれば薄口しょうゆね。
漫画&イラスト 水谷さるころ