【2月22日は猫の日!】孤独な「かい猫」と優しい少女との交流で描かれる驚きと感動。Twitter発のショートホラー短編集『かい猫ミーに出会ったら』
更新日:2022/2/22
数年前から続く猫ブーム。その勢いは今も衰えることなくさまざまな猫コンテンツが生まれており、猫を題材にしたコミックも数多く販売されている。
そんななか、一風変わった猫作品に触れたいと思っている人もいるのではないだろうか。『かい猫ミーに出会ったら』(誰でもない/KADOKAWA)は、そう感じている人にぜひとも推したい、衝撃が詰まった猫漫画だ。
本作は、Twitter発のショートホラー短編集。作者が描く物語には予想できない衝撃と感動がいたるところにちりばめられており、ページをめくる手が止まらなくなる。また、短いストーリーの中に詰め込まれた伏線も見事。気づいた時には、この不思議な世界観にすっかり魅了されているのだ。ちなみに怖い描写があるので、苦手な人は注意してほしい。
周囲から忌み嫌われる「かい猫ミー」と出会ったら…?
本作の中でも猫マニアの心を突くのが、表題作の『かい猫ミーに出会ったら』。
ある日の朝、4年1組は大騒ぎ。なぜなら、クラスメイトの吉岡さよが公園で奇妙な生き物を飼っているとの噂が流れたからだ。
さよが交流を図っていたのは、猫らしきシルエットをした「ミー」。ミーはいわゆる、普通の猫のような顔をしていないため、周囲の人たちは「バケモノ」「気持ち悪い」という言葉を投げつけ、避けていた。
やがて、人目を避けて生きるようになったミーは思う。ただ存在するだけで、怖がられ、忌み嫌われる自分は、この世に生まれてきてよかったのだろうか――と。
そんな時に出会ったのが、さよだった。さよは、ケガをしていたミーを手厚く看病。おいしいご飯も与えてくれた。
これまで罵声を浴びせられることが当たり前だったミーは、名前を呼び、頭を撫でてくれるさよの優しさに涙。彼女の温かい想いは、ずっと蔑まれ、自分を責め続けてきたミーの心に染み入った。
それからというもの、ふたりは交流を図るように。ミーは公園に留まるようになり、さよはミーのケガが治るまで、雨の日も風の日も毎日、看病を続けた。
だが、ある日、教頭先生にミーといるところを目撃されてしまう。さよは必死に、ミーは自分から誰かを傷つけることなど絶対にしない優しい子であると訴えたが、教頭先生は信じてくれず……。それどころか、口答えされたと不快になった教頭先生はミーを捕まえ、保健所に連れて行こうとした。
私がミーちゃんを守らなきゃ。そう強く思ったさよは、なりふり構わず教頭先生に立ち向かい、ピンチに! すると、その姿を見たミーに、ある変化が起きて……?
本作の良さは禍々しさの中に、胸を締め付ける感涙ポイントが詰め込まれているところにある。
強いコンプレックスを抱え、生まれてきたことを後悔するミーの姿に自分自身が抱いてきた孤独感を重ね合わせたり、後半で明らかになるさよの衝撃的な過去に心打たれたりする人はきっと多いはずだ。この物語は、誰かを愛することの意味や今ここに生きていることの重みを訴えかける作品でもあるように思えた。
読者にとって、かい猫ミーは“怪猫”ではなく、これまでの自分を見つめ直すきっかけを授けてくれる“改猫”となるかもしれない。
なお、本作にはTwitterで人気を博した、超短編の4ページコミックも収録。これだけの短さで、こんなにも感情が動くなんて……という驚きを味わってみてほしい。
文=古川諭香